「instax mini 99」はマニュアル制御と楽しいエフェクトを備えた多機能な“チェキ”:製品レビュー

富士フイルムから新しい“チェキ”、「instax mini 99」が登場した。画質はそこまで鮮明ではないものの、マニュアル制御やエフェクトを多数備えており、味わいのある写真を撮影するのに適している。
「instax mini 99」はマニュアル制御と楽しいエフェクトを備えた多機能な“チェキ”:製品レビュー
PHOTOGRAPH: SCOTT GILBERTSON; GETTY IMAGES

富士フイルムの新製品「instax mini 99」は、マニュアル制御とクリエイティブなエフェクトが好きな人向けのカメラだ。これまで試したなかで最も鮮明な撮影ができるカメラではないが(instax mini Evoのほうが鮮明だった)、いちばんアナログでありつつ最も多くのことができるカメラかもしれない。

200ドル(日本では35,700円)という価格は、instaxのエントリーレベルのカメラよりもはるかに高額だ。しかし、露出とシャッターの制御、豊富なカラーエフェクト、さらには自宅の棚の上でほこりを被ったままになっている中古カメラの撮影で起きるような光漏れを再現する機能まで付いている。

マニュアル制御の力

富士フイルムのinstaxシリーズのカメラの本体は、カラフルでポップなエントリーモデルを除くとレトロ風のデザインを採用している。instax mini 99も同じだ。instax mini 90はシルバーと黒をあしらったデザインだったが、instax mini 99は黒一色である。とはいえ、色以外の面は前のモデルとかなり似ている。instax mini 99はinstax mini 90の後継モデルだと富士フイルムが正式に言っているわけではない。とはいえ、今後もinstax mini 90の提供が続くとは思えないくらい、このふたつのモデルは似ている。

PHOTOGRAPH: SCOTT GILBERTSON

instax mini 99はinstax mini 90と同じ、プラスチック製の60mmレンズを搭載している。このレンズの視野角は、35mmのフィルムカメラの35mmレンズとほぼ同じだ(またはiPhoneの1xから2xの間の視野角に相当する)。カメラのF値は12.7で固定されているので、晴れて明るい屋外以外での撮影ではフラッシュが必要になる。ただし、ほかの多くのinstaxシリーズのカメラとは異なり、instax mini 99では明るい場所での撮影時にフラッシュをオフにできる。

instax mini 99のおそらく最も興味深く、instaxシリーズで初めて採用された機能は、マニュアルフォーカスだ。ただし、レンズのダイヤルを回して焦点を正確に合わせる従来のマニュアルフォーカス機能が搭載されたわけではない。その代わり、instax mini 99にはクローズアップ撮影(0.3〜0.6m)、中距離の撮影(0.6〜3m)、遠距離の撮影(3mから無限遠)の3つのフォーカスゾーンを切り替えられる。これは従来のマニュアルフォーカス機能ほど正確ではないが、通常のinstaxカメラと比較するとかなりフォーカスを制御できる。

ただし、マニュアルフォーカスを使ってみて、少し一貫性がないように感じた。期待したほどドラマチックな結果は得られなかったのだ。F値が12.7であることを考えると、フォーカスゾーンを調整できたとしても、被写界深度はそれなりに広い。instax mini 99はボケ(写真のピントが合っていない部分)の効果を得られるが、それはポートレート撮影のような非常に限定された状況においてのみである。その場合でも最短撮影距離を使用する必要があり、いずれにしろ被写体の顔がフレームいっぱいに収まることになる。とはいえ、フォーカスを調整できる機能は、ピントが固定されているほとんどのinstaxのカメラからの進歩だ。instax mini 99のマクロモードでは、マクロ撮影のようなことができる。また、一部のinstaxのカメラとは異なり、ファインダーには視差補正機能があるので、ファインダーで見る情景と写真として撮影されるものは非常に近い。

フィルムカメラの上部にはふたつのダイヤルが付いている

PHOTOGRAPH: SCOTT GILBERTSON

instax mini 99にはふたつのダイヤルがある。ひとつは露出補正ダイヤルのように機能する濃淡調整ダイヤルで、露出値(EV値)を2段階明るく、または2段階暗くできる。特に小さなセンサーを圧倒しがちな雪の撮影の際には、L(明るく)とL+(より明るく)に設定するといい。また、強い逆光がある環境での撮影にも使えるが、これはinstaxの得意とするところではない。D(暗く)とD-(より暗く)の設定は画像を過度に暗くする傾向があり、あまり役に立たなかった。とはいえ、白黒フィルムで撮影する場合は、写真を少しドラマチックにできるだろう。

もうひとつのダイヤルは、写真にさまざまな効果を加えるための カラーエフェクトダイヤルだ。これにはフェーデッドグリーン(FG)、ウォームトーン(WT)、ライトブルー(LB)、ソフトマゼンタ(SM)、セピア(SP)、ライトリーク(LL)がある。LEDで画像に色をつけたり、ライトリークモードの場合はフィルムの光漏れの効果を再現したりする仕組みだ。カラーエフェクトは楽しく、特にウォームトーンが気に入った。とはいえ、機能を試し終えてからは、ノーマル(N)モードで撮影することがほとんどだった。

ダイヤルは使いやすいが、ポケットやバッグに入れておくと誤って動かしてしまいやすい。ポケットのなかでEV値のダイヤルが勝手に動いて、フィルムを何枚か無駄にしてしまった。それからは撮影前にダイヤルの位置を必ず確認するようにした。ダイヤルがもう少ししっかりと固定されているとうれしい。

レトロなエフェクト

カラーエフェクトよりもはるかに楽しいと感じたのは、シャッタースピードの調整機能だ。これには4つの撮影モードがある。「標準モード」、「インドアモード」(低光量での撮影に向いたシャッター速度が遅いモード)、「スポーツモード」(走っている人のアイコンで示され、シャッター速度が速いモード)、そしてバルブモード(B)がある。バルブモードでは好きなだけシャッターを開けたままにできる。理論的にはバルブモードで夜景の撮影ができる。ただし、実際に試したところ、ケーブルレリーズがないので撮影は難しかった。

二重露光機能も楽しい。実を言うと、デジタルカメラの二重露光撮影に慣れていたので、instaxでの最初の何回かの撮影はあまりうまくいかなかった。デジタルカメラでは、1枚目の画像を確認してから、正確なフレーミングで2枚目を撮影できる。しかし、少し練習してからは、興味深い使い方のように感じた。いままで使わずに放置していた古いフィルムを使うきっかけにもなった。二重露光と古いフィルムによる奇妙な効果が組み合わさって、クールな写真を撮れたのだ。

バッテリーなどのパーツを写したカメラの背面

PHOTOGRAPH: SCOTT GILBERTSON

instax mini 99は取り外し可能な充電式のバッテリー(NP-70S)を搭載しており、1回の充電で100枚の写真を撮影できると富士フイルムは主張している。実際それだけ撮れるのかを試すのは難しいが、かなり保守的に見積もっても、この数字は割と正確に思える。フィルムを4セット分(1セット10枚)撮影した後に確認したところ、バッテリーは3分の1ほど減っていた(通常よりバッテリーの性能が低下する、氷点下に近い環境での撮影だったことも書いておくべきだろう)

たいていの場合、同梱されているひとつのバッテリーだけで十分だ。テストしていた1カ月間、カメラを使用していないときにバッテリーが大きく減っていたこともなかった。また、バッテリーを直接充電するのではなく、USB-Cの充電器が同梱されていることも注目に値する。これはバッテリーを何個か使いたい場合に便利だ。

instax mini 99にはほかにもセルフタイマーとフラッシュの制御機能がついている。これにより、instax mini 99は富士フイルムのinstaxシリーズのなかでも、非常に柔軟で機能的なカメラとなっている。instaxシリーズのカメラは複数あるが、マニュアル制御がほしいならinstax mini 99を選ぼう。

今回試して感じたinstax mini 99の唯一の欠点は、instax mini Evoほど写真が鮮明ではないことだ。とはいえ、instax mini 99のマニュアル制御機能、特にフォーカスの制御はinstax mini Evoにはない、創造性の幅が拡がる機能だ。ただし、純粋に画質を求めるならinstax mini Evoは引き続きいちばん適した製品だ。一方で、より多くのマニュアル制御と楽しいカラーエフェクトを求めるなら、instax mini 99を選ぼう。

◎「WIRED」な点
コンパクトでよく設計されたレトロ風の本体。豊富なマニュアル制御。楽しいエフェクトを搭載。バルブモード。二重露光機能。

△「TIRED」な点
instax mini Evoほど撮影画像は鮮明ではない。ポケットやバッグの中でダイヤルが動いてしまうことがある。

(Originally published on wired.com, translated by Nozomi Okuma)

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