Nothingが低価格ブランドでスマートフォンなど投入、「CMF by Nothing」が発表した3つの新製品のすべて

Nothingがサブブランドである「CMF by Nothing」から3つの新製品を発表した。スマートフォン「CMF Phone 1」とスマートウォッチ「Watch Pro 2」、ワイヤレスイヤフォン「Buds Pro 2」は、いずれも低価格ながら洗練されたデザインが特徴だ。
CMF devices by Nothing
Photograph: Julian Chokkattu

価格が手ごろなデバイスというものは、たいていはデザインが退屈で、スペックも精彩に欠けることが多い。こうしたなかNothingのサブブランドである「CMF by Nothing」は、そうした課題に取り組むことを決意した。

2023年にスタートしたCMF by Nothingは、市場における最も低価格なゾーンに注力している。これまでにスマートウォッチやワイヤレスイヤフォン、充電器などを発売してきた。そして初のスマートフォンとなる「CMF Phone 1」が7月8日(米国時間)に発表され、米国ではベータプログラムを通じて入手可能になった。このスマートフォン用の独自のアクセサリーに加えて、「Buds Pro 2」と「Watch Pro 2」も同時に発表されている。

これらのデバイスの最もすばらしい点は価格にある。低価格なスマートフォンの旗艦モデルを10年近くテストしてきたが、CMF Phone 1の設定が完了した後に価格が199ドル(約32,000円)であることを知り、とても驚いた。見た目も感触も性能面も、その倍近くの価格に感じられたからだ。

同じようによくできたスマートウォッチであるWatch Pro 2の価格も69ドル(約11,000円)にすぎず、Buds Pro 2は59ドル(約9,500円)である。さらにすばらしいことに、これらのデバイスはただ安いだけではない。デザインにたくさんの個性が詰まっていて、使いたい気にさせる製品なのだ。

カバーを交換できる「CMF Phone 1」

CMF Phone 1の箱を開封したとき、まるで子どものときのようなうれしさを少し感じた。一見すると完成前の試作品のような趣だが、この工業デザインの雰囲気をとても気に入ったのだ。

製品の知識がまったくない状態で開封したので、本体の右下に奇妙な円形の出っ張りがあることには驚かされた(この部分については追って説明する)。さらに、SIMカードを取り出すピンとマイナスドライバーが一体化したツールが付属することにも、戸惑いを覚えた。

写真を見るとおわかりいただけると思うが、本体の背面には黒いネジが4本ある。このネジをドライバーで回して背面カバーを外すことで、別のカバー(35ドル=約5,600円)と交換できる仕組みだ。

本体のカラーは、ブルーやオレンジ、ライトグリーンといったいくつかの色が用意されている。付属するツールが短すぎるので、ネジを外す作業は少し厄介だ。途中でネジを1本なくしそうになった。ありがたいことにCMFは、アフターサービスとしてスペアのネジを用意するという。

CMF Phone 1の本体の上にあるのがキックスタンド。本体右下のアクセサリーポイントにストラップが取り付けられている。黒いカバーは標準で付属するもの。上にはマイナスドライバーとSIMカード取り出しツールが一体化されたツールが置かれている。右端にあるのが磁石でくっつくウォレット。

Photograph: Julian Chokkattu

黒のカバーを交換している時点で、初期のスマートフォンのようにバッテリーも交換可能なのではないかと期待していた。そのことをNothingの広報担当者に尋ねたところ、悲しいことに以下のような回答が返ってきた。

「わたしたちはユーザーにバッテリーの部品を提供しておらず、ユーザーによるバッテリーの取り外しは推奨していません。フィルム材に警告文を印刷し、バッテリーを取り外さないよう促しています」

デバイスが修理可能ではないことについて企業に対する目がますます厳しくなっているいま、これは残念なことだ。交換可能なバッテリーが用意されていれば、CMFはある程度の称賛を得ていたことだろう。

バッテリーが交換可能ではない理由の一部は防水性能にあると推測される。デバイスの内部に触れられるようにした場合に影響を受けやすい点が、防水性能だからだ。CMF Phone 1はIP52規格の防水・防塵性能(粉じんと水滴に耐える程度)なので想定よりも優れていたが、雨から完全に保護されるわけではない。注意してほしい。

SIM取り出しツールの反対側にあるドライバーを使って裏蓋のネジを外し、カバーを交換できる。

Photograph: Julian Chokkattu

黒のカバーを交換する楽しみが終わり(今回は楽しげで明るい色のオレンジに交換した)、いよいよ本体右下の円形のモジュールに注目すべきときが来た。CMFが「アクセサリーポイント」と呼んでいる部分だ。

最初の状態では、ここに特に機能があるわけではない。だが、この部分を回転させて外すと、指で取り付けできるアクセサリーの“小さな世界”が開かれる(取り外す際にドライバーは不要だ)。

このアクセサリーポイントに取り付け可能な部品として、ストラップ(25ドル=約4,000円)、キックスタンド(25ドル=約4,000円)、ウォレットケース(35ドル=約5,600円)などが用意される。

興味深いことに、ウォレットケースは2つのパーツで構成されている。かなり薄いプラスチックのシートでつくられており、アクセサリーポイントのネジを利用して本体に取り付ける。中央には磁石のリングが配置されており、本体の背面に磁力でウォレットを取り付られる仕組みだ。これはアップルのMagSafeにかなり似ている。

このウォレットを取り外せば、CMF Phone 1本体を磁力でどこにでも取り付けることができる(MagSafe充電器で試してみたところ、完璧にくっついた。しかし、ワイヤレス充電には対応していないので実用性はない)。CMFによると、現時点でほかのアクセサリーを発表する予定はないという。

それでも、199ドルの低価格なスマートフォンにこうした純正オプションがあることはありがたい。気の利いたデザインで、機能性もシンプルだ。

ウォレットは、マグネットを内蔵したスリムなプラスチックシートに磁力でくっつく。

Photograph: Julian Chokkattu

スマートフォン自体の仕様も、価格のわりには優れている。ただし、良質で割安なAndroidスマートフォンの存在が世界的に見れば当たり前であるなか、米国にはこうしたラインナップがかなり不足している点は指摘しておきたい。

CMF Phone 1は、6.67インチのAMOLED(アクティブマトリクス式有機EL)ディスプレイを搭載している。このディスプレイの解像度は2,400×1,080ピクセルで、リフレッシュレートは120Hzだ。この時点で、すでにサムスンの「Galaxy A15」(日本未発売)を上回っている。

プロセッサーはMediaTekの「Dimensity 7300」で、8GBのRAMと128 GBのストレージを備えている。実機にはそれほど触れることはできなかったが、快適に動作する。5G通信とデュアルSIMに対応しているほか、microSDカードを追加すればストレージ容量を2TBまで増やすことも可能だ。

容量が5,000mAhのバッテリーは33Wの急速充電に対応し、ディスプレイに光学式の指紋センサーを内蔵している。背面には50メガピクセルのメインカメラとボートレートモード用の深度センサーを搭載しており、前面には16メガピクセルの自撮り用カメラがある。

採用されているOSは「Nothing OS」だ。このOSのベースは「Android 14」だが、細かな微調整を施してNothing独自のインターフェイスに仕上がっている。CMFは2回のOSアップデートへの対応を約束しており、セキュリティアップデートへの対応は3年間となる。

これらのスペックは、米国で販売されている199ドルのスマートフォンとしては全体的に優れていると言っていい。CMF Phone 1は世界各地で販売されるが、米国ではベータプログラムで入手するしかない。このプログラムに登録して、承認されると購入できるようになる。これはNothingが米国で「Nothing Phone (2a) 」で採用した手法と同じだ。

上品でシンプルな「CMF Watch Pro 2」

低価格なスマートウォッチは、見た目がいまいちなことが多い。しかし、「CMF Watch Pro 2」には上品でシンプルな印象を受けた。形状は初代の「CMF Watch Pro」から丸型に変更されている。ベゼルを変更することが可能で、今回はより丸みを帯びたデザインに変更してみた。

基本モデルのストラップはシリコーン製だが、CMF純正のレザー製ストラップ(19ドル=約3,100円)のほか、22mmの好みのストラップと交換できる。アルミニウム製のケースは頑丈ながらも軽量で、1.32インチのAMOLEDディスプレイは大きすぎず小さすぎずといった印象だ。IP68規格の防塵・防水性能を備えているので、雨が降っても安心だろう。

Photograph: Julian Chokkattu

OSはグーグルの「Wear OS」ではないので、ほかのスマートウォッチのように豊富なアプリを使うことはできない。CMFはOSの詳細を明かしていないが、使った印象はWear OSのスマートウォッチに似ており、非常に軽快に動作する。

また、iPhoneとAndroidスマートフォンに対応しているので、専用アプリ「CMF Watch」を介してほぼ誰でもスマートフォンと連携させて使える。バッテリーの持続時間も長く、CMFによると通常の使用で11日間もつという。実際これは正しいようで、1日が経過した時点でのバッテリー残量は90%あった。

CMF Watch Pro 2のバンドとベゼルは交換できる。

Photograph: Julian Chokkattu

CMF Watch Pro 2では通知を受け取ったり、タイルをスワイプして天気や歩数などの情報を得たりもできる。睡眠や心拍数の追跡のほか、サイクリングや血中酸素飽和度(SpO2)のトラッキングも可能だ。

しかも、100を超えるエクササイズを自動検出によって追跡可能で、GPSも搭載している。実機を試した時間はかなり短かったが、かなり正確な追跡結果を得られた印象だ(今後さらなる検証が必要だろう)。データはすべて、グーグルの「ヘルスコネクト」やアップルの「ヘルスケア」「Strava」などのアプリと連携できる。

楽しげなデザインの「CMF Buds Pro 2」

最後に「CMF Buds Pro 2」を紹介しよう。これはアップルの「AirPods」に似たワイヤレスイヤフォンで、ケースのデザインが楽しげな雰囲気だ。

ケースの外側にある丸い部分は「スマートダイヤル」と呼ばれ、イヤフォンに触れたりスマートフォンを取り出したりすることなく音量を調節できるすばらしい機能をもつ。このボタンを押すことでノイズキャンセリング機能を操作したり、音声アシスタントを起動したり、マイクをミュートにしたりすることも可能だ(これらの機能はすべて「Nothing X」アプリでカスタマイズでき、イヤフォンのタッチ操作にも対応する)。

Photograph: Julian Chokkattu
Photograph: Julian Chokkattu

2つのドライバーを搭載しており、アクティブノイズキャンセリング機能や外音取り込みモードもある。CMFによるとバッテリーの持続時間は6時間で、ケースに内蔵された容量460mAhのバッテリーを使えば25時間まで延ばせるという。ケースにワイヤレス充電の機能はないが、USB-Cで充電できる。これらのデバイスは、すべて米国では発売中だ。

(Originally published on wired.com, edited by Daisuke Takimoto)

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