Beats「Studio Pro」はノイズキャンセリング性能が素晴らしいが、着脱検出などの機能は欠けている:製品レビュー

Beatsのワイヤレスヘッドフォン「Studio Pro」が発売された。音質はよく、アクティブノイズキャンセリング機能と外部音取り込みモードも優れている。しかし、着脱検出機能など、この価格帯のヘッドフォンが搭載していそうな主要機能がいくつか欠けている。
Beats Studio Proレビュー:ノイキャン性能は素晴らしいが、着脱検出などの機能は欠けている
Photograph: Beats

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万人受けする製品をつくることは難しいとされているが、Beatsはそれに挑もうとしている。Beatsはアップル傘下でアップル支持者の多いメーカーだが、最近は“中道”を狙って、Androidのエコシステムにも対応する製品設計をするようになっている。

最新モデルの「Beats Studio Pro」もそうだ。ワンタッチペアリングやデバイス間の切り替えに対応し、ヘッドフォンを「探す」機能が、iOSでもAndroidでも使えるようになっている。

ただ、よほどスマートフォンを頻繁に切り替える人を除けば、こうした機能を重視する人がどれだけ多いかはわからない。ソニーのような他ブランドは、特定デバイスへの対応ではなく、その製品で何をするかを重視した機能を提供している。

Studio Proには、この価格帯のヘッドフォンには不可欠と思える機能がいくつか付いていない。例えば、着脱を検出して自動停止する機能がない。こうした機能がないことは、他製品との激しい競争を勝ち抜くうえで、大きなハードルだろう。

もちろんいいところもある。アップルは周囲の環境音取り込み機能を活用し、アクティブノイズキャンセリング機能(ANC)と外部音取り込みモード(Studio Proシリーズには初搭載)の性能を上げている。しっかりした音質、明瞭な通話性能を併せ持つことを考えれば、Studio Proは散財に値する製品かもしれない。特にBeatsならではのデザインが好きな人にはもってこいだ。

ぎこちない操作感

Studio Proの見た目は、「Studio3」のような過去のBeatsヘッドフォンと似ている。アップグレードされているのは中身なのだ。第2世代の「AirPods Pro」もそうだったが、以前のモデルを好きだったかどうかによって、賛否がわかれるポイントだろう。

最新モデルには4つのスタイリッシュな色が用意されており、今回わたしがテストで使ったディープブラウンのほかにも、ブラックとネイビー、そしてサンドストーンから選べる。ヘッドフォンの見た目と超コンパクトなケースは気に入っているが、プラスチック素材には高級感を感じない点もあった。

Photograph: Beats

例えば、イヤーカップの外側に搭載された操作ボタンは、直感的に操作ができるのはいいが、押すと大きくて耳障りな音がする。スムーズな操作感という点においては、タッチコントロール搭載のソニーの「WH-1000XM4」「WF-1000XM5」など、ほかの競合フラッグシップモデルには及ばない。

こうした点で、Studio Proは、おとなしいデザインのボーズの「QuietComfort 45」を、流行りの見た目にしたような存在に思える。実際に押せるボタンが嫌いなわけではないのだが、その質感が価格に見合っていないのだ。右のイヤーカップに搭載されている電源のオンオフと、リスニングモードを切り替えるボタンはいいが、ちょっと場所がわかりにくいかもしれない。その下にステータスLEDが並んでいる。

装着感に関して言えば、Studio Proはキツめで、かなりの安定感があり、まるでヘルメットのようだ。。このヘッドフォンにはソニーのWH-1000XM4やWF-1000XM5、もしくはゼンハイザーの「MOMENTUM 4 Wireless」のような柔らかさはない。だが、新たに設計されたイヤーパッドは、シームレス設計のレザーとともに申し分ない耳当たりを提供してくれる。数時間使っても、大きな不快感を感じることなく着用できた。

搭載されていそうな機能がない

Beatsの「Fit Pro」を除くと、最新のBeatsのヘッドフォンやイヤフォンはアップルの独自チップを搭載せず、代わりに「Beats Proprietary Platform」が組み込むようになった。イヤフォンの「Fit Pro」は例外的な存在だ。

つまり、楽曲をほかのアップル製のヘッドフォンと共有して聴いたり、iCloudアカウントでログインしている複数デバイス間で自動で切り替えるといった、アップルならではの機能がStudio Proでは使えないのだ。

もちろん、アップル端末との互換性は高く、ワンタッチペアリング機能が搭載されていたり、「Hey Siri」と話しかけるだけで音声アシスタントを起動できたり、「探す」アプリを使ってヘッドフォンを追跡できたりする。また、コントロールセンターからの基本的な操作をすることが可能だ。

このヘッドフォンにはAndroid向けの機能も搭載されている。イージーペアリングも可能で、Android用の「Beats App」を使えばデバイスを探すこともできる。Android端末とChromebookの間での自動切り替え機能もある。Androidデバイスを使っている人なら、このヘッドフォンは便利だと感じることだろう。

ただし、より一般的なマルチポイント接続には対応していない。350ドル(日本では49,800円)のヘッドフォンなら、対応していてもいいと思うのだが。とはいえ、Studio ProはStudio3と同じようにClass 1のBluetooth接続に対応しているので、接続できる範囲は素晴らしく広い。

ANCをオンにした状態のバッテリー持続時間は24時間と平凡だが(オフなら40時間)、多くの競合製品と比べるとやや短い。個人的に許せないのは、この価格帯のヘッドフォンで着脱を検出して自動停止する機能が備わっていないことだ。「AirPods」ですら標準搭載されているのに。ボーズのQuietComfortなど例外はいくつかあるものの、Studio Proと同価格帯のヘッドフォンであれば当たり前のように搭載されている場合がほとんどだ。

この機能がなくても、日常的に使うのであれば気にならないだろう。だが、飛行機で映画やポッドキャストを再生しているときは大変重宝する。ちょっとした移動や飲み物を頼んだりする際に、いちいち一時停止の操作をせずとも、ヘッドフォンを外すだけでいいからだ。

ソニーのWH-1000XM4やWF-1000XM5には、さらに一歩先を行く機能が搭載されている。会話を始めると再生を止めてくれる「スピーク・トゥ・チャット」や、右のイヤーカップに手をかざすと瞬時に周囲の音を取り込んでくれる「クイックアテンションモード」などだ。ソニーのヘッドフォンには、場所によって外音取り込みのモードも自動で切り替える仕組みもある。

それを踏まえると、音質をカスタマイズするマルチバンドイコライザーなど、さまざまな機能が搭載されていないStudio Proは、一世代前のヘッドフォンのようだ。

ノイズキャンセリング性能は最高

だが、Studio Proの外部音取り込みモードはこの世代の製品にふさわしい性能を備えており、さまざまな場面で周囲の音を制御してくれる。ノイズキャンセリング機能は優れており、ソニーやボーズの競合製品に引けを取らず、ゼンハイザーの「MOMENTUM 4 Wireless」などのライバルにも勝っている。

Photograph: Beats

飛行機の中でStudio Proを使うことはできなかったが、大勢の親戚の集まりがあったので、テストしてみた。記事を書いていた静かな場所から、たくさんの大人と5頭の犬、3人の子どもがいる場所に移動してきたのだが、このヘッドフォンは騒音を難なく制御し、静けさを提供してくれた。

tudio Proのノイズキャンセリング機能は、ほかの高品質な製品に引けを取らず、送風機や家の外の騒音、そしてわたしがキーボードをたたく音といった環境音を取り払ってくれた。犬の鳴き声や子どもたちの叫び声は聞こえたが、ずいぶんと静かになっていた。

Studio Proで通話をしたところ、少し風があったにもかかわらず、通話相手は「声が明瞭に聞こえた」と高評価だった。新たに搭載された外部音取り込みモードの性能も素晴らしく、ヘッドフォンを着けたまま家族と話し込んでも、会話に支障がなかった。音が自然に聞こえるかどうかという意味では、第2世代のAirPods Proほどではないし、AirPodsのようなアダプティブ・ノイズ・サプレッション機能もない。ただ、この点においてはソニーのWH-1000XM4よりも優れている。Studio Proと聞き比べれば、ソニーのヘッドフォンはくぐもっており、トンネルの中で会話をしているように感じてしまう。

音質に関して言えば、Studio Proには、Beatsの磨き上げてきた品質がしっかりと反映されている。全体のバランスをとりつつも、Beatsならではの歯切れのよい高音域と重低音を提供しているのだ。

とはいえ、高音域と低音のバランスの好みは分かれるだろう。個人的には、ずっしりとした楽曲を聴いている際に低音を少し軽減できればと思ったが、低音が好きな人はもっと身体に響くような重みがほしくなるかもしれない。イコライザーで音質調整ができればよかったのにと思う。

新搭載の40mmドライバーはとてもいい。より広がりのあるステレオイメージと、しっかりとしたディテールを提供してくれる。ボーズのヘッドフォンと同様、サウンドは洗練されていてスタイリッシュだ。しかし、それでいて非常に親しみやすく、幅広いジャンルに適してもいる。個人的には音質面でいえば、ソニーやゼンハイザーのほうが好みだし、細かな調整もできるのも気に入っている。そういえば、ANCをオンにしていた際にときおり、ホワイトノイズが少し聴こえたが。数日の使用で大きな不満を感じるほどではなかった。

USB-Cで端末に直接つなぐと音質をさらに改善でき、Apple MusicやTidalなどのハイレゾ配信にも対応する。また、Spotifyを聴いているときも、ヘッドフォンを直接つなぐと音質が向上した。ただ、欲を言えば、もう少し長いケーブルやiPhone用Lightningケーブルがあればよかったと思った。

また、USB-C接続だとイコライザーがあり、ポッドキャストや映画の音声を際立たせるプリセットがいくつか用意されている。ただ、不思議なことに、有線接続ではANCと外部音取り込みモードが使えなくなってしまう。

Studio Proには、アップルのフラッグシップ・ヘッドフォンと同じ空間オーディオが搭載されている。もしかすると搭載されていない着脱検出機能の代わりなのかもしれない。個人的に空間オーディオを使う場面は少ないが、Disney+やNetflixなど、この機能に対応しているプラットフォームで映画を観るなら、音に深みを加えてくれるので、作品の世界のなかに没入できるだろう。

全体的にみると、Studio Proを購入すべき理由は大いにある。往年のファンであればなおさらそうだ。音質は上がっており、ANCの性能も向上している。それにAndroidやiOSの独自機能にも対応している。この額を出せるなら選択肢はほかにもあるが、このヘッドフォンもきちんとアップグレードされていて、検討する価値は十分にあるだろう。もしもセールになっていたら、なおさらだ。

◎『WIRED』な点
通話の音質のノイズキャンセリング性能は最高。音楽再生の音質も申し分ない。外部音取り込みモードは自然に聞こえる。USB-Cを介して直接つなぐと、ハイレゾ再生にも対応。アップル端末とAndroidスマートフォンは瞬時に接続可能。声だけで「Siri」を起動できる。空間オーディオ対応。Bluetoothの通信距離は素晴らしい。コンパクトなデザインと安定したフィット感。

△『TIRED』な点
着脱検出機能が搭載されていない。イコライザーで音の調整ができない。複数端末間の切り替えはグーグル製品のみ対応。ぎこちない操作感。頭の大きい人は窮屈に感じるかもしれない。バッテリー持続時間は平凡。

WIRED US/Translation by Naoya Raita)

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