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ウェールズ英語

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ウェールズ英語
話される国 イギリス
地域 ウェールズ
話者数 250万人
言語系統
初期形式
表記体系 ラテン文字英語アルファベット
言語コード
ISO 639-3
Glottolog wels1248[1]
 
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ウェールズ英語(ウェールズえいご、英語: Welsh Englishウェールズ語: Saesneg Gymreig)は、ウェールズ人が話す英語方言を総括して指す語である。この方言はウェールズ語文法から著しい影響を受け、しばしばウェールズ語に由来する単語を含んでいる。独特の単語と文法に加えて北ウェールズカーディフ英語版南ウェールズ渓谷英語版西ウェールズ英語版のものなど様々なアクセントがウェールズ中に遍在している。

ウェールズ東部の方言がイングランドで話されている英語英語版の方言から影響を受けている一方で、ウェールズ西部のアクセントと方言はウェールズ語から大いに影響を受けてきた[2]。東北ウェールズと北ウェールズ沿岸の一部はマーシーサイド英語から影響を受けてきたが、東部と南東部では西地方英語版方言や西ミッドランズ英語版方言から影響を受けてきた[3]

ウェールズ英語を指す話し言葉としてウェングリッシュWenglish: WelshEnglishかばん語)があり、1985年から使われている[4]

発音

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母音

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短い単母音

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長い単母音

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アバークレイヴで発音するようなウェールズ英語の単母音(Coupland & Thomas (1990), pp. 135–136より)
カーディフで発音するようなウェールズ英語の単母音(Coupland & Thomas (1990), pp. 93–95より)。話し手により長い/ɛː/は短い/ɛ/と同じ高さになる場合がある[13]
アバークレイヴで発音するようなウェールズ英語の二重母音(Coupland & Thomas (1990), pp. 135–136より)
カーディフで発音するようなウェールズ英語の二重母音(Coupland & Thomas (1990), p. 97より)

二重母音

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  • 前舌化する二重母音は容認発音に似る傾向がある。ただしbiteの母音[æ̈ɪ]は別で、もっと中央寄りで発声される[17]
  • 後舌化する二重母音は更に多様である[17]
    • 容認発音におけるlowの母音は、短母音で発音されるほかにも、上記したようにしばしば[oʊ̝]と発音される。
    • townという言葉は中舌狭めの広母音[ɐʊ̝]で発音される。
  • 下降二重母音[ɪʊ̯]として残るウェールズ英語は後期中英語の二重母音 /iu̯/ が決して/juː/にならなかった英語版数少ない方言の一つである。従ってyou /juː/yew /jɪʊ̯/ewe /ɪʊ̯/はウェールズ英語では異形同音異義語ではない。音韻欠落英語版のようなことは決して起こらず、殆どの英語の方言では区別されないchoose /t͡ʃuː z/chews /t͡ʃɪʊ̯s/や、through /θruː /threw /θrɪʊ̯/をウェールズ英語では区別して発音する。

子音

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特有の語彙と文法

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bach(少しのあるいはほんの少しの)、eisteddfodnaintaid(それぞれ祖母祖父)のようなウェールズ語からの借用語は別にして、固有のウェールズ英語には独特の文法上のしきたりがある。この例として、一部の話者が先行する発言の形式によらず付加疑問英語版“isn't it?”を使う例や、強調のために述語の後に主語と動詞を配置する例(例えばFed up, I amあるいはRunning on Friday, he is.など[23])がある。

南ウェールズでは、where という言葉はしばしば疑問文でwhere toに拡大され、"Where to is your Mam?" のように用いられる場合がある。buttyウェールズ語: byti)という言葉は(恐らく「buddy」(仲間)に関係する[要出典])「友人」の意味で使われる[26]

ウェールズに特有の英語の標準語はないが、ウェールズ英語の言い回しの翻訳である語句“look you”(実際は稀にしか使われない)などの特徴は、イギリスの他地域からの英語話者にウェールズ出身者っぽいものとして認識されている[23]

Tidy という単語は「最も使われすぎのウェングリッシュの単語の一つ」と言われていて、「素晴らしい」「長い」「かなり立派な」「沢山」などの幅広い意味に用いられる。tidy swill という言葉は、「最低限でも顔と手を洗う」という意味で使われる[27]

コードスイッチング

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ウェールズが益々イングランド風になってきているので、コードスイッチングは益々当たり前のものになっている[28][29]

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ウェールズのコードスイッチャーは主として3分類のどれかになる。第一分類は第一言語がウェールズ語で英語に最も自信のない人々で、第二分類は反対で英語が第一言語でウェールズ語に自信が少ない人々で、第三分類は第一言語がどちらかで両方の言語で能力を発揮する人々から成る[30]

ウェールズ語と英語はコードスイッチングの為に共存させる構成に十分な重複部分があることを示す適合性を共有している。ウェールズ英語のコードスイッチングの研究では、ウェールズ語がしばしば母体言語の立ち位置を取り、そこへ英語の単語や語句が混入される。この使い方の典型的な例は、“I love soaps”と訳せる dw i’n love-io soaps などが考えられる[29]

ウェールズ語と英語のコードスイッチングに関する2005年のマーガレット・デューチャーが行った研究では、調べた文の90%が母語の体裁(MLF)に完全一致することが分かった。これはウェールズ英語がコードスイッチングの古典的な事例に区分されることを意味する[29]。この事例は、母体となる言語が何か明確であり、コードスイッチングを使う文の中の節の大半が識別可能かつ互いと明確な区別ができて、文が主語・動詞の文型や修飾語といった点において母体となる言語の構造をとるときに、識別可能である[28]

ウェールズの英語史

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ウェールズにおける英語の存在感は、1535年と1542年に成立したウェールズ法英語版によって強化された。この法律はウェールズで英語を優勢に向かわせ、ウェールズ語教育の中心となっていた修道院の閉鎖と相まって、ウェールズ語を使う機会が減少することとなった。

ウェールズ語の衰退と英語の優勢は、産業革命期により強まり、当時多くのウェールズ語話者が仕事を見付けにイングランドに移住し、当時発展しつつあった鉱山業英語版製錬業に英語話者が就職していった。デヴィッド・クリスタル英語版ホリーヘッドで成長し、ウェールズで続く英語の優勢は世界各地での拡大とほとんど変わらないと主張している[31]。ウェールズ語の使用の減退は、18世紀から19世紀の一部の学校で“Welsh Not”が使われるなど日常的に学校で英語を話しウェールズ語での会話を妨げる社会の動きも関係している[32]

ウェールズ圏外の影響

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イングランドからのイギリス英語のアクセントがウェールズ特に東部の英語のアクセントに影響している一方で、影響は双方に及んでいる[2]。東北ウェールズと北ウェールズ沿岸部の一部のアクセントは、北西イングランド英語版のアクセントに影響されていて、南東ウェールズのアクセントが西イングランド英語版に影響されている一方で、中東部のアクセントは、西中部地方英語版のアクセントに影響されている[3]。前者の例ではイングランドとアイルランドの影響の方が良く知られているが、特にスカウスブルーミー方言英語版(口語体)アクセントは、共に移住を通じた広範なイングランド・ウェールズ間の導入がある。

文学

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ラーン英語版にある、ディラン・トマスの船小屋英語版の書斎

「英語とウェールズ語で書く文学」と「英語で書くウェールズ語」は、ウェールズの作家が英語で書く著作を指すのに使う言葉である。20世紀以降独特のものとしてのみ認められてきた[33]。この種の著作にとっての別個の独自性を求める需要は、現代のウェールズ語の文学英語版が並行して発展したために増した。恐らくブリテン島における英語の文学の最も若い枝である故に。

レイモンド・ガーリック英語版が20世紀に先立ち英語で書いたウェールズ人男女69人を見出した一方で[33]、ダフィッド・ジョンストンは「一般に英文学に対立するものとしてこのような作家が承認可能なイギリス系ウェールズ文学に属しているか議論の余地がある」と考えている[34]。19世紀に入っても優に英語はウェールズでは比較的少数の人が話していて、20世紀前半に先立ち英語で書くのはウェールズ生まれの主要な3人(モンゴメリーシャー英語版出身のジョージ・ハーバート(1593年–1633年)、ベックノックシャー英語版出身のヘンリー・ヴォーガン英語版(1622年–1695年)、カーマーゼンシャー出身のジョン・ダイヤー英語版(1699年–1757年))に留まっていた。

英語で書くウェールズ人は、15世紀の詩人イウアン・アプ・ハイウェル・スワッドワル英語版(?1430年-?1480年)に始まると言われることがあり、処女マリアへの賛歌が1470年頃にイングランドのオックスフォードで書かれウェールズの詩の形式アウドル英語版ウェールズ語の正書法を用いている。例えばこうなる。

O mighti ladi, owr leding - tw haf
At hefn owr abeiding:
Yntw ddy ffast eferlasting
I set a braents ws tw bring.

初めて創造的に英語を使ったウェールズ人作家に対する主張は、外交官で兵士で詩人のジョン・クランヴォー英語版(1341年–1391年)のために行われている[要出典]

ウェールズ英語の影響は、カラドック・エヴァンス英語版による1915年の短編小説集『我が人民英語版』に見られ、(物語形式ではなく)対話形式で使い、ディラン・トマスによる『牛乳入れの下で英語版』(1954年)は元々ラジオ演劇であり、ニアル・グリフィス英語版は殆どウェールズ英語で書かれた事実に徹した現実主義者であった。

関連項目

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ケルト系言語に大いに影響された英語の方言

参照

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  1. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “ウェールズ英語”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/wels1248 
  2. ^ a b Rhodri Clark (2007年3月27日). “Revealed: the wide range of Welsh accents”. Wales Online. Wales Online. 31 January 2019閲覧。
  3. ^ a b Secret behind our Welsh accents discovered”. Wales Online. Wales Online (2006年6月7日). 31 January 2010閲覧。
  4. ^ Lambert, James. 2018. A multitude of ‘lishes’: The nomenclature of hybridity. English World-wide, 39(1): 32. DOI: 10.1075/eww.38.3.04lam
  5. ^ Wells (1982), pp. 380, 384–385.
  6. ^ Connolly (1990), pp. 122, 125.
  7. ^ a b c Coupland, Nikolas; Thomas, Alan Richard (1990a). English in Wales: Diversity, Conflict, and Change - Google Books. ISBN 9781853590313. https://books.google.com/books?id=tPwYt3gVbu4C&q=welsh+vowels&pg=PA138 2015年2月22日閲覧。 [要ページ番号]
  8. ^ a b c Wells (1982), pp. 384, 387, 390
  9. ^ a b c d Schneider, Edgar Werner; Kortmann, Bernd (2004). A Handbook of Varieties of English: CD-ROM. - Google Books. ISBN 9783110175325. https://books.google.com/books?id=Dptsvykgk3IC&q=uvular+in+welsh&pg=PA110 2015年2月22日閲覧。 
  10. ^ Coupland, Nikolas; Thomas, Alan Richard (1990a). English in Wales: Diversity, Conflict, and Change - Google Books. ISBN 9781853590313. https://books.google.com/books?id=tPwYt3gVbu4C&q=%22welsh+English%22+transcription&pg=PA130 2015年2月22日閲覧。 [要ページ番号]
  11. ^ Wells (1982), pp. 380–381.
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  13. ^ Coupland & Thomas (1990), p. 95.
  14. ^ Wells (1982), p. 387.
  15. ^ Coupland, Nikolas; Thomas, Alan Richard (1990a). English in Wales: Diversity, Conflict, and Change - Google Books. ISBN 9781853590313. https://books.google.com/books?id=tPwYt3gVbu4C&q=stigmatised&pg=PA138 2015年2月22日閲覧。 [要ページ番号]
  16. ^ Coupland, Nikolas; Thomas, Alan Richard (1990a). English in Wales: Diversity, Conflict, and Change - Google Books. ISBN 9781853590313. https://books.google.com/books?id=tPwYt3gVbu4C&q=rounded&pg=PA130 2015年2月22日閲覧。 [要ページ番号]
  17. ^ a b c Coupland, Nikolas; Thomas, Alan Richard (1990a). English in Wales: Diversity, Conflict, and Change - Google Books. ISBN 9781853590313. https://books.google.com/books?id=tPwYt3gVbu4C&q=playplace&pg=PA138 2015年2月22日閲覧。 [要ページ番号]
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  20. ^ a b Coupland, Nikolas; Thomas, Alan Richard (1990a). English in Wales: Diversity, Conflict, and Change - Google Books. ISBN 9781853590313. https://books.google.com/books?id=tPwYt3gVbu4C&q=rhotic&pg=PA138 2015年2月22日閲覧。 [要ページ番号]
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  25. ^ Wells (1982), p. 390.
  26. ^ Why butty rarely leaves Wales”. Wales Online (2 October 2006). 22 February 2015閲覧。
  27. ^ Edwards, John (1985). Talk Tidy. Bridgend, Wales, UK: D Brown & Sons Ltd. pp. 39. ISBN 0905928458 
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  33. ^ a b Garlick (1970).
  34. ^ Johnston (1994), p. 91.

参考文献一覧

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参考書籍

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  • Parry, David, A Grammar and Glossary of the Conservative Anglo-Welsh Dialects of Rural Wales, The National Centre for English Cultural Tradition: introduction and phonology available at the Internet Archive.

外部リンク

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