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経営管理論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
マネージメントから転送)

経営管理(けいえいかんり、: Business Management, : Business Administration[1])は営利企業経営管理する手法のことである[2]

概要

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20世紀初頭、科学的管理法を提唱したフレデリック・テイラーがその始まりとされており、また「管理原則(管理過程論)の父」と呼ばれたアンリ・ファヨールによる研究により、学問として成立。その後、主にアメリカで研究が発展した。経営学を構成する分野の一つ。

下位分野には人事労務管理論財務管理論オペレーションマネジメント戦略的マネジメントマーケティング・マネジメントITマネジメントなどがある。

定義

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経営管理の定義として次が挙げられる。

経営管理は、広義に解釈すれば、“経営システムの維持・存続のための全成員のダイナミック(dynamic)な情報活動”であって、それは人間の頭脳活動を含む神経系統の活動に相当するものである。 — 西村林・小林信雄・秋山義継、経営管理入門, pp.4-5
経営管理とは、人に働きかけて、協働的な営みを発展させることによって、経営資源の転換効率や環境適応の能力と創造性を高めて、企業の目的を実現しようとする活動である。(中略)経営管理は、個性的で具体的な人間が組織的な人間として振る舞い、組織の活力や創造性を高めるように働きかけようとする。こうして企業の協働的な営みは組織として展開され、個人の能力の総和以上の生産を実現するのである。 — 塩次喜代明・高橋伸夫・小林敏男、経営管理, pp.8-9
business administration (企業経営) の概念は ...「企業目的を明示し基本構造を設定し経営資源を配分する場合に、またこれらの基盤のうえに実施業務 (operation) を調整し統制し計画してゆく場合に、経営管理者が行なう決定ならびに行為」である — 稲葉、Business Administration の概念をめぐって

また「管理原則の父」と呼ばれるアンリ・ファヨールは、経営管理を計画組織指揮調整統制の5要素と定義している。

経営管理は計画や統制といった「管理」のニュアンスを含んでおり、現場における運用/オペレーション(例: 生産活動)と対比される[3]

簡単にまとめると、経営管理とは、企業活動を円滑に行うとともに、企業の目的を達成するために、「ヒト・モノ・カネ・情報」の4つの経営資源を調達し、効率的に配分し、適切に組み合わせる、といった諸活動のことである。

語源

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経営管理すなわち「マネジメント」の由来は「」を意味するラテン語「manus」であり、もともと何かをモノを扱うという意味である。その名残として馬を扱う乗馬学校の練習場や調馬場を指す言葉として「マネージュ」が国際的に使われている。すなわちマネジメントには行き届いた管理、つまりすべての資源、とくに資金を効率的かつ効果的に使うという含みがある。またマネジメントの概念は、はるか昔からあるリーダーシップの概念と違って科学の時代に生まれ育ち、システムに対する信頼、特にシステムを導入して維持する能力と、財政を管理して統御する能力が高く、ビジネスには不可欠である。

学説

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ハロルド・クーンツは著書『経営の統一理論』にて、経営管理の学説を以下の6つに分類している。

管理過程学派(普遍学派)
経営管理を「組織を構成する人々に、あることをしてもらう過程」と捉え、そのための管理の諸原則を明らかにしようとする。
経験学派
経営管理に関する事例研究(ケーススタディ)を通じて、最も有効な経営管理技法を構築する。
人間行動学派
経営には多くの人々が関わっていることに着目し、構成員・関係者の行動や相互関係を研究する。行動科学や人間関係論など、心理学的アプローチ。
社会システム学派
経営管理を人やその行動からなる一つの社会システムと捉え、社会学的見地から研究する。人間的側面を重視することから、人間行動学派と共通する点を持つ。バーナードに代表される。システムズ・アプローチとも。
数理学派
数学や統計学、計測可能なデータなどを駆使して、数理的アプローチから経営管理を把握しようとする。そのための手段として代表的なものにオペレーションズ・リサーチがある。この学派の研究は経営科学とも言われる。
意思決定学派
企業内の意思決定システムを研究し、合理的な意思決定を行うにはどうすべきかを追究する。サイモンに代表される。

歴史

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19世紀後半から、第二次産業革命と呼ばれる工業化の進行・資本主義の発展や経済の拡大により、企業は経営資源を効率的に運用し、生産力を増強することを目指すようになった。そのような状況の下、20世紀初め、アメリカの技術者・テイラーが「科学的管理法」を、フランスの経営者・ファヨールが「管理過程論」の原型をそれぞれ発表、経営管理の研究が始まった。一方、ドイツの社会学者・マックス・ヴェーバーは、組織の支配形態(カリスマ支配、伝統的支配、合法的支配の3つ)を分析し、合法的・合理的な組織は官僚制組織であるとした。その上で組織の合理的・機能的側面に注目、組織構造という概念を考え出し、「官僚制組織論」を提唱した。これらの3人の研究が、経営管理論の出発点と言える[要出典]

その後、人間的側面を軽視する科学的管理法への批判(参考: 経済人)から、人間関係や人間の持つ欲求、特に自己実現欲求に注目する「人間関係論」が生まれた[注釈 1]メイヨー、レスリスバーガーによるホーソン実験や、マズロー欲求段階説(自己実現理論)マクレガーXY理論などが知られる。さらにその後、マックス・ヴェーバーの組織の理論を経営に応用し、組織全体を分析する「システムズ・アプローチ」がバーナードによって唱えられ、後にサイモンの「意思決定論」に繋がった。

一方、1960年代以降、従来の普遍的な法則を見出そうとする議論では抽象的で現実の経営に対応できないとして、経営環境に応じてそれぞれに異なる最適な組織形態・管理法が存在するとする「コンティンジェンシー理論」が登場した。

これらの諸議論を基礎に、リーダーシップ論、モチベーション論、組織文化論、企業間関係論など様々な議論に広がっている。

占部都美は、最近の経営管理論は、意思決定論的アプローチ、行動科学的アプローチ、システムズ・アプローチを取っているとしている[4]

ジョン・アデアらは、人を機械やお金のように「マネジメント」できるものと見なす習慣に陥りやすいとしている[5]

教育機関

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経営管理は、世界各国のビジネス・スクール(異称に "Business Administration School" あり)で教授されている。

日本においては、商学部商学研究科)・経済学部経済学研究科)・経営学部経営学研究科)・経営管理研究科などが経営管理の教育・研究を担当している。学術団体としては、1926年7月10日日本経営学会が創設された。また戦後には、日本商業学会1951年4月21日[6]慶應義塾大学教授向井鹿松を初代会長として[7]設立されている。

関連分野

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一覧

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脚注

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注釈

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  1. ^ これらは、人間を欲求・感情で動く「社会人モデル」(メイヨーによる)や、自己実現を欲する「自己実現人モデル」(マズローによる)で捉えている。

出典

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  1. ^ 稲葉元吉「Business Administration の概念をめぐって」『年報行政研究』第1986巻第20号、日本行政学会、1986年、13-35頁、doi:10.11290/jspa1962.1986.20_13 
  2. ^ "Business administrationは ... administration活動一般の、一つの特殊具体的な姿であり、それは私企業におけるadministrationを意味している(稲葉元吉 1986)
  3. ^ "administrationの概念は ... operation概念との対比で理解されている ... かくしてadministrationは企業活動全体とは同義ではない(稲葉元吉 1986)
  4. ^ 占部都美 編著『経営学辞典』中央経済社、1980年[要ページ番号]
  5. ^ ジョン・アデア、ペーター・リード『NOT BOSSES BUT LEADERS』Kogan Page Publisher UK, 1987. ISBN 07494-4632-3[要ページ番号]
  6. ^ 沿革 日本商業学会、2022年11月19日閲覧。
  7. ^ 歴代会長一覧 日本商業学会、2022年11月19日閲覧。

参考文献

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関連項目

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