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ヒューリスティック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヒューリスティクスから転送)

ヒューリスティック: heuristic: Heuristik)または発見的(手法)[1] [2]:7 [3]:272とは、必ずしも正しい答えを導けるとは限らないが、ある程度のレベルで正解に近い解を得ることができる方法である。発見的手法では、答えの精度が保証されない代わりに、解答に至るまでの時間が短いという特徴がある。

主に計算機科学心理学の分野で使用される言葉であり、どちらの分野での用法も根本的な意味は同じであるが、指示対象が異なる。すなわち、計算機科学ではプログラミングの方法を指すが、心理学では人間の思考方法を指すものとして使われる。なお、論理学では仮説形成法と呼ばれている。

計算機科学

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計算機科学では、コンピューターに計算やシミュレーションを実行させるときに、発見的手法を用いることがある。たいていの計算は、計算結果の正しさが保証されるアルゴリズムか、または計算結果が間違っているかもしれないが誤差がある範囲内に収まっていることが保証されている近似アルゴリズムを用いて計算する。しかし、そのような方法だと、計算時間が爆発的に増加してしまうようなことがある。そのような場合に、妥協策として発見的手法を用いる。発見的手法は、精度の保証はないが、平均的には近似アルゴリズムより解の精度が高い。また、発見的手法の中でも、任意の問題に対応するように設計されたものは、メタヒューリスティックという。

発見的仮定

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アルゴリズムの近似精度や実行時間を評価したいが、真面目に評価するのが困難な場合、アドホックな仮定(妥当な仮定に見えるものの、その正しさを証明できないような、その場しのぎの仮定)をおいて評価を行うことが多い。こうした仮定のことを「発見的仮定」と呼ぶ[4]:82

アンチウイルスソフトウェア

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近年のアンチウイルスソフトウェアでは、ヒューリスティックエンジンを搭載したものが増加してきている。また、フリーソフトにも搭載されており、その進展を見せている。ただし、個々のソフトの発見的機能は同じでも、その仕組みは異なっているものが多い。

心理学

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心理学における発見的手法は、人が複雑な問題解決などのために、何らかの意思決定を行うときに、暗黙のうちに用いている簡便な解法や法則のことを指す。これらは、経験に基づくため、経験則と同義で扱われる。判断に至る時間は早いが、必ずしもそれが正しいわけではなく、判断結果に一定の偏り(バイアス)を含んでいることが多い。なお、発見的手法の使用によって生まれている認識上の偏りを、「認知バイアス」と呼ぶ。

発見的手法の例

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利用可能性発見的手法[注釈 1]、想起発見的手法
想起しやすい事柄や事項を優先して評価しやすい意思決定プロセスのことをいう。
英語の訳語である検索容易性という言葉の示す通りの発見的手法である。
代表性発見的手法[注釈 2]
特定のカテゴリーに典型的と思われる事項の確率を過大に評価しやすい意思決定プロセスをいう。
代表的な例として、「リンダ問題」がある。
係留と調整[注釈 3]
最初に与えられた情報を基準として、それに調整を加えることで判断し、最初の情報に現れた特定の特徴を極端に重視しやすい意思決定プロセスをいう。

脚注

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注釈

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  1. ^ : availability heuristic
  2. ^ : representative heuristic
  3. ^ : anchoring and adjustment

出典

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参考文献

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  • 中島秀之、高野陽太郎、伊藤正雄『岩波講座 認知科学 8 思考』岩波書店、1994年、10,112頁。ISBN 9784000106184 
  • 鹿取 廣人・杉本敏夫編『心理学』(第2版)東京大学出版会、2004年、174頁。ISBN 9784130120418 
  • 市川伸一「第六章 第一節 不確かな状況におけるヒューリスティックス」『考えることの科学-推論の認知科学への招待』(第2版)中央公論新社〈中公新書〉、1997年、110-113頁。ISBN 9784121013453 
  • T. ギロビッチ 著、守一雄・守秀子 訳『人間この信じやすきもの-迷信・誤信はどうして生まれるのか』新曜社、1993年。ISBN 9784788504486 

関連項目

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外部リンク

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