コンテンツにスキップ

バオバブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
バオバブ属から転送)
バオバブ属
アフリカバオバブA. digitata
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
: アオイ目 Malvales
: アオイ科 Malvaceae
亜科 : Bombacoideae
: バオバブ属 Adansonia
和名
バオバブ
英名
Baobab
芽吹いたバオバブの群れ。セネガル
アフリカバオバブの花
アフリカバオバブの実
ジンバブエで採取された実の内部

バオバブ(英名:Baobab、学名Adansonia)は、樹木の一つ。アオイ目アオイ科クロンキスト体系新エングラー体系ではパンヤ科バオバブ属の総称。

名称

[編集]

「バオバブ」の名は、16世紀に北アフリカを旅したイタリア人植物学者が「バ・オバブ」と著書に記したのが始まり。元はアラビア語のブー・フブーブ(がたくさんあるもの)から来ているという説がある。

学名は、A. digitata を報告したフランス人自然学者ミシェル・アダンソン (Michel Adanson) の名に由来する。

アフリカの諸言語ではそれぞれ呼称が異なる。ズールー語では「ウムコーモ」、ハウサ語では「クーカ」(Kuka)、スワヒリ語では「ムブユ」(mbuyu)、フルベ語では「ボッキ」、バンバラ語では「シラー」、モシ語では「トゥエガ」と呼ばれる[1]

特徴

[編集]

サバンナ地帯に多く分布する[2]。幹は徳利のような形をしていて、高さは約30メートル、直径は約10メートルに及ぶ。最大のものは南アフリカ共和国リンポポにあり、高さ47メートル、直径15メートルである。 中は空洞になることが多い。葉は幹の上部につき、乾季落葉する。は白色で大きい。果実ヘチマのように垂れ下がり、堅い。

大木の幹には10トンもの水分を蓄えており[1]、乾季になると葉を落として休眠する。休眠中は、幹内の水分で生き延びる。

年輪がないので樹齢を知ることは難しいが、数千年に達するといわれる[2]放射年代測定は可能である。2011年に枯死したジンバブエのバオバブは、樹齢2500年と推定された。

バオバブには、個別に名前が付けられている有名な古木・巨木もある。ジンバブエの「パンケ」(樹齢約2500年)、ナミビアの「グルートブーム 」(樹齢約1500年)、ボツワナの「チャップマンバオバブ」(樹齢約1400年)そして南アフリカ共和国リンポポにあり大きさでは世界トップの「サンランドバオバブ」(樹齢約1100年)である。だが南部アフリカではバオバブの枯死が相次いでおり、これらの古木・巨木も一部または全てが枯死した。原因としては気候変動、灌漑の水分で乾燥に強いバオバブの根が腐ったことなどの可能性が指摘されている[3]

マダガスカル南西部のムルンダバはバオバブが林立することから「バオバブ街道」と呼ばれ、観光名所になっている[3]

利用

[編集]

アフリカ諸国では食用など様々に活用され、親しまれている。 オーストラリア先住民族アボリジニの間では、ブッシュ・タッカーとして古くから消費されていた。 果肉は食用・調味料とされ、セネガルでは「サルのパン」と呼ばれる[2]ビタミンCがオレンジより多く、カルシウム牛乳より多いといわれる。種子からは、油が採集できる。若葉を野菜として、また汁気のおおい料理に入れるととろみが増し、デンプン質の主食にかけるうってつけのソースができる。樹皮は煎じて解熱剤に用いられるほか、細かく裂いて編めば強靭なロープを作ることができる。

マダガスカルの企業レナラ社は2012年以降、ビタミンCや抗酸化物質を多く含む果実を住民から買い取り、化粧品や栄養補助食品に加工して販売している。苗木を配布している団体もある。バオバブを見学する観光客を誘致するエコツーリズムを含めた商業利用は、バオバブの保護をも目的としている[3]

その他

[編集]
  • 言い伝えによると、その姿はまるで悪魔が巨木を引き抜いて逆さまに突っ込んだようだといわれている。
  • サン・テグジュペリの『星の王子さま』では、放置するとを破壊する有害な巨木として描かれており、見つけ次第抜かれてしまうことになっている。
  • 日本では、浜名湖花博において初めて屋外で開花した。観葉植物にもなり、盆栽型に仕立てることもできる。

[編集]

原生種がマダガスカルに6種、オーストラリアに1~2種、アフリカ大陸に2種ある。

脚注

[編集]
  1. ^ a b 講談社 2002.
  2. ^ a b c 毎日 1978.
  3. ^ a b c 【世界深層in-depth】バオバブ 枯死の謎/農地開発か気候変動か『読売新聞』朝刊2019年9月20日(国際面)
  4. ^ a b 冨山 (2003:166).
  5. ^ 米倉・梶田 (2003-).
  6. ^ a b 冨山 (2003:246).
  7. ^ a b バオバブ:マダガスカル島の固有植物. (マダガスカルツアーサービス). 2018年8月8日閲覧。
  8. ^ IUCN (2014:259).
  9. ^ World Conservation Monitoring Centre (1998c).
  10. ^ IUCN (2014:110).
  11. ^ 冨山 (2003:247).
  12. ^ Ravaomanalina & Razafimanahaka (2016).
  13. ^ Appendices. (CITES). 2018年8月8日閲覧。
  14. ^ The CITES Appendices. (CITES). 2018年8月8日閲覧。
  15. ^ a b Hassler (2018).
  16. ^ World Conservation Monitoring Centre (1998a).
  17. ^ a b マダガスカルのバオバブは絶滅寸前〜『日経サイエンス』2013年12月号より. (日経サイエンス). 2018年8月8日閲覧。
  18. ^ World Conservation Monitoring Centre (1998b).
  19. ^ World Conservation Monitoring Centre (2017).
  20. ^ World Conservation Monitoring Centre (1998d).

参考文献

[編集]

日本語:

  • IUCN(国際自然保護連合)編、岩槻邦男・太田英利 訳『IUCNレッドリスト 世界の絶滅危惧生物図鑑』丸善出版、2014年。ISBN 978-4-621-08764-0
  • 冨山稔『世界のワイルドフラワーI 地中海ヨーロッパ/アフリカ;マダガスカル編』学習研究社、2003年。ISBN 4-05-201912-1
  • 米倉浩司・梶田忠 (2003-).「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList),http://ylist.info (2018年8月7日).
  • 毎日新聞社編『黒い光と影 : 未来大陸アフリカ』毎日新聞社、1978年、118頁。 
  • 吉田繁(撮影)、蟹江節子『地球遺産 最後の巨樹』講談社、2002年。 
  • ゲイリー・アレン、『ハーブの歴史』、株式会社原書房、2015年1月21日、86頁、ISBN 978-4-562-05122-9

英語:

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]