アエルマッキ S-211
アエルマッキ S-211
アエルマッキ S-211 (Aermacchi S-211) は、元々イタリアのSIAI-マルケッティ社でS.211として開発されたジェット軍用練習機である。約60機が海外の空軍に販売された。1997年にアエルマッキ社が製造権を購入し、現在はアレーニア・アエルマッキ社で改良型M-345が開発されている。
設計と開発
[編集]SIAI・マルケッティ社は自社のSF-260 ピストンエンジン練習機を使用している既存ユーザーである小国の空軍に採用されることを見込んで、1976年に基本練習機S.211の開発作業をプライベートベンチャーとして始めた。翌年にパリで正式発表され、十分な反響を得たため2機の試作機を製造することになった。最初の試作機は1981年4月10日に初飛行し、1983年にシンガポール空軍が最初に10機を発注した[1]。
S-211はプラット・アンド・ホイットニー・カナダ JT15D-4C ターボファンエンジンを1基搭載し、引き込み式首車輪降着装置を持ったタンデム複座・片翼配置の単葉機である[1]。ジェット練習機としては小型軽量にまとめつつも、M0.8級の性能を有し、当時の最新アビオニクスも備えていた。多くの軍用練習機と同様に、本機は副次的に近接支援任務をこなせるように考慮されており、翼下に4つのハードポイントを設けていた[1]。
S-211AはS-211を小改良し近代化した派生型で、アメリカ合衆国の統合基本航空機訓練システム計画(JPTATS)に応募したが7機種がエントリーした結果、ビーチクラフト/ピラタスが提案したPC-9 Mk.II選ばれ、これが後にT-6 テキサン II になった。S-211はグラマン社、1994年以降はノースロップ・グラマン社との共同提案であった。
派生型
[編集]- S-211
- 約60機が製造された最初の量産型。ハイチ空軍、フィリピン空軍、シンガポール空軍が運用[2]。
- S-211A
- アメリカ合衆国の統合基本練習機システム(Joint Primary Aircraft Training System、JPTATS)にグラマン社と共同提案したモデル(2機の試作機が元ハイチ空軍機から換装)[2]。
- アレーニア・アエルマッキ M-345
- 2004年にアエルマッキ社により発表された近代化、アップデートされたモデル(2機製造)[2]。イタリア空軍に採用。
運用
[編集]S-211は純粋な輸出用であったため、イタリア本国では採用されていない。
- フィリピン空軍 (PAF):補修部品としての半完成品の機体を1機分と現地のフィリピン航空開発社(Philippine Aerospace Development Corporation)で組み立てられた15機を含む25機[2]。事故や老朽化のために14機にまで機体が減少し、僅かに4機が飛行可能となっている。[3][4][5]。
- シンガポール空軍 (RSAF):現地のシンガポール航空工業社(Singapore Aircraft Industries)で組み立てられた24機と損耗分の補充として購入した元ハイチ空軍機2機を含む32機[2]。
以前の運用
[編集]民間
[編集]事故と事件
[編集]1992年9月21日にフィリピン空軍の機体がパラワンのアントニオ・バティスタ空軍基地から離陸後、海に墜落。フィリピン空軍では乗員と機体の双方とも行方不明と発表[11]。
要目
[編集](S-211)Jane's All the World's Aircraft 1988-89 [12]
- 乗員:2名
- 全長:9.31 m (30 ft 6½ in)
- 全幅:8.43 m (27 ft 8 in)
- 全高:3.8 m (12 ft 5½ in)
- 翼面積:12.6 m² (135.63 ft²)
- 空虚重量:1,850 kg (4,070 lb)
- 最大離陸重量:2,750 kg (6,050 lb)
- 馬力重量比:0.413:1
- エンジン:1 × プラット・アンド・ホイットニー・カナダ JT15D-4C ターボファンエンジン 11.12 kN (2,500 lbf)
- 最大速度:667 km/h (360 knots, 414 mph)
- 超過禁止速度:マッハ 0.8 (740 km/h, 400 knots, 460 mph)
- 失速速度:138 km/h (74 knots, 86 mph)
- 巡航高度:12,200 m (40,000 ft)
- 航続距離:1,668 km (900 nm, 1,036 miles)
- 上昇率: 21 m/s (4,200 ft/min)
- 制限荷重: +6g (+58.9 m/s²) /−3.0g (−29 m/s²)
- 武装
- ガンポッド、爆弾、ロケット弾 等 4箇所のハードポイントに660 kg (1,455 lb)まで
関連項目
[編集]出典
[編集]- ^ a b c Orbis 1985, page 2854
- ^ a b c d e “SIAI-MARCHETTI S.211 production list”. www.siai-marchetti.nl. 2008年12月13日閲覧。
- ^ http://www.ejection-history.org.uk/Country-By-Country/Philippines.htm
- ^ http://timawa.net/forum/index.php?topic=10208.msg92195#msg92195
- ^ http://www.siai-marchetti.nl/s211pro.html
- ^ “RSAF Pilatus PC-21 Makes its Maiden Flight”. MINDEF. 2008年12月13日閲覧。
- ^ “Australia - Singapore Defence Relationship”. MINDEF. 2008年12月13日閲覧。
- ^ “World Air Forces - Haitian Air Force - SIAI-Machetti S-211 status”. www.aeroflight.co.uk. 2008年12月13日閲覧。
- ^ Federal Aviation Authority Aircraft Inquiries for N48SM Archived 2009年3月3日, at the Wayback Machine.
- ^ Federal Aviation Authority Aircraft Inquiries for N852TC Archived 2009年3月3日, at the Wayback Machine.
- ^ “Philippines Air Force - Siai-Marchetti S.211 - Write-offs”. www.hueybravo.net. 2008年12月13日閲覧。
- ^ Taylor 1988, pp. 157—158.
書籍
[編集]- The Illustrated Encyclopedia of Aircraft (Part Work 1982-1985). Orbis Publishing
- Taylor, John W R (1988). Janes All the World's Aircraft 1988-89. Coulsdon, Surrey, UK: Jane's. ISBN 0 7106-0867-5
外部リンク
[編集]- Unofficial S-211 site
- Republic of Singapore Air Force Trainer Factsheet
- SIAI-Marchetti S.211 Factsheet
- S211A Jet Trainer, Italy