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国民政党

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国民政党(こくみんせいとう)とは、資本家労働者のどちらかのみの利益を代表するのではなく、国民全体の利益を代表することを標榜する政党を指す。対義語は資本家と労働者を区分する階級政党。あるいは「本来は一定の階級的利害を代表しながらも、国民的同質性を前提とし、その支持基盤を広く国民各層に求めようとする政党」[1]と定義される場合もある。長期間に渡って、民主主義体制の中で与党になる傾向がある[2]

概説

国民政党は政党の性格づけを分類したときの階級政党に対する概念である[3]。階級政党とは階級対立を最も重要な要素として結党し組織される政党をいう[3]。これに対して国民政党は全国民的な立場を代表すると標榜して組織される政党をいう[3]

なお、国民の各層から広く支持を受けることに成功した政党のことを包括政党(catch all party)という[3]

政党の性格づけを分類する場合、階級政党と国民政党のほかに議員政党(幹部政党)と大衆政党という分類もある[3]。議員政党あるいは幹部政党とは、国や地方の議会の議員が中心となって構成されており一般党員は少ない政党をいう[3]。これに対して、大衆政党とは多くの一般党員を擁している政党をいう[3]

民主主義各国の例

西欧社会民主主義政党はすでに階級政党としての性格を過去のものとしており、中産階級を含む国民政党としての性格を明瞭にしていた。なかでもドイツ社会民主党が1959年にゴーデスベルク綱領によって国民政党への転換を果たした例が有名である。ほかにイギリスの労働党などもフェビアン協会などの社会改良主義の影響により、早くから国民政党を指向した社会民主主義政党の例である。日本でも日本社会党から分かれた民社党は当初から階級政党の考えを批判し、国民政党を標榜していた。これらのケースは前述の「一定の階級的利害を代表しながらも、国民的同質性を前提」とする政党、という意味で国民政党だと考えられる。社会党が公務員労組を支持母体としていて企業経営者・投資家・資本家を敵視していたのに対して、民社党は民間企業労組を支持母体にしていたため、話し合いによる漸進的な賃金引き上げ、倒産を回避のために危機時の凍結・引き下げなど企業と労働者の相互利益を推進していた[2]

北欧諸国では左派第一党がマルクス・レーニン主義を早期に放棄して、個々の納税額を互いに国民同士が把握出来る仕組みを導入して高負担高福祉政策をとったため、幅広い支持を受けて国民政党として長期間与党を維持している[4]

日本

自由民主党タカ派だけではなく、マルクス・レーニン主義を追及する日本社会党・日本共産党を支持しないリベラル派[5]、冷戦中に共産主義国家になることを恐れる無党派層も多数取り込んだ国民政党であると、長らく見なされてきた。特に高度成長から、公害対策を経て、バブル経済崩壊まで、右肩上がりの時代には成長の果実が国民諸階層に等しく分配され、一億総中流を成しとげた。また、派閥による政権の交代など、擬似的政権交代が図られていた。しかし、同じ政党の議員が選挙区で対立することで起きていた派閥争いによって金権政治を招いたことから世論の支持を受けて、衆議院小選挙区比例代表制、政党交付金の創設や政治資金規正法の強化など選挙制度改革が行われた。党の公認がないと勝てない所属議員に対する政党本部のコントロールが強化された。地方への分配に批判的な都市部の層からの支持は比較的低いものの、与党にあるなど冷戦崩壊後も国民政党となっている[2]

かつて「総評政治部」とも批判された日本社会党は、左派主導の下で階級的大衆政党を標榜してきた。しかし1970年代末に右派の影響力が強まると、国民政党に転換すべきとの声が台頭した。日本社会党の新宣言は国民政党との用語を使用しないものの、事実上国民政党への転換を目指す内容だった。しかし、冷戦下で東側諸国にシンパシーを持つなどマルクス・レーニン主義支持する各公務員労組執行部や市民団体など選挙運動を実際に支援する支持母体によって、多数派だった党内左派が台頭して事実上撤回された[2]

脚注

  1. ^ 百科事典マイペディア「国民政党」の項目
  2. ^ a b c d 「政治学の基礎」p97,加藤秀治郎
  3. ^ a b c d e f g 橋本五郎、飯田政之、加藤秀治郎『図解・日本政治の小百科』2002年 一藝社、159頁。
  4. ^ 「政治学の基礎」p103 ,加藤秀治郎
  5. ^ 「リベラル」は「革新」に対してマルクス・レーニン主義・共産主義を支持しない、又は批判的な自由主義者を意味する。

関連項目