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横領罪

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横領罪
法律・条文 刑法252条-254条
保護法益 物に対する所有権
主体 他人の物を占有する者(真正身分犯)
客体 自己の占有する他人の物、公務所から保管を命じられた物
実行行為 横領行為
主観 故意犯
結果 結果犯、侵害犯
実行の着手 -
既遂時期 不法領得の意思を実現しようとする行為が行われた時点
法定刑 各類型による
未遂・予備 なし
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横領罪(おうりょうざい)は、自己の占有する他人の物を横領することを内容とする犯罪。広義の横領罪は、刑法第二編「罪」- 第三十八章「横領の罪」252条255条)に規定された犯罪すべてを指し、狭義の横領罪は、刑法252条1項に規定される罪(単純横領罪)のみをいう。自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合にこれを横領したときには、横領罪が成立する(刑法252条2項)。

条文

  1. 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。
  2. 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

保護法益

本罪は、物の委託者と受託者の委託信任関係を保護するものであるとされる。近時は委託信任関係と併せて委託者の所有権も保護法益とする見解が有力である。

犯罪の類型

単純横領罪

自己の占有する他人の物を横領すると、(狭義の)横領罪が成立する(刑法252条1項)。業務上横領罪との比較から単純横領罪と呼ばれることもある。他人の物を委託関係に基づいて占有する者のみが犯すことのできる身分犯である(真正身分犯)。法定刑は5年以下の懲役である。

業務上横領罪

業務上占有する他人の物を横領すると、業務上横領罪が成立する(刑法253条)。占有が業務であることで刑が加重される身分犯であり(不真正身分犯)、基本犯である単純横領罪が真正身分犯であることから、真正身分犯・不真正身分犯両方の性質を有する複合的身分犯である。法定刑は10年以下の懲役である。 (窃盗罪とは違い、罰金刑はない)

遺失物等横領罪

遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領すると、遺失物等横領罪が成立する(刑法254条)。拾得物横領罪占有離脱物横領罪とも言う。所有者との間に委託信任関係がない点で、狭義の横領罪と異なる。法定刑は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料である。

遺失物等横領罪と対比して、狭義の横領罪と業務上横領罪とを包括し委託物横領罪と呼ぶ。

行為

行為の客体

単純横領罪の客体は「自己の占有する他人の物」、業務上横領罪の客体は「業務上自己の占有する他人の物」、遺失物等横領罪の客体は「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物」である。なお、自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられたものについては、単純横領罪の客体となる(刑法252条2項)。

占有の意義

窃盗罪のケースと違い、事実的な所持だけでなく法律的な支配も占有に含まれる。預金に対する預金者、既登記建物の登記名義人にも占有が認められる。

すなわち、ここでいう占有とは、横領罪の主体としての地位を基礎付けるものであり、横領行為をなしうる立場にあることを意味する。例えば、不動産所有権の登記名義人である者は、たとえ実体として他人に帰属する物であっても、他人に売却して所有権移転登記手続をすることができる。したがって、不動産所有権の登記名義人はその不動産について占有をしていると評価することができるのである。

行為の内容

本罪の実行行為たる横領とは、通説によると、不法領得の意思の発現行為一切をいうとされる。不法領得の意思とは、通説的な説明によれば、所有者を排除する意思とその物の効用を享受する意思の総体をいうとされる。

既遂時期

領得が始まれば、完了しなくても既遂に達する。すなわち、既遂時期と着手時期が同一ということである。そのため、横領罪には未遂処罰規定が存在しない。

他罪との関係

  • 背任罪との区別

他人の物を本人の委託に基づいて占有する者が、図利加害目的で任務に背き本人に財産上の損害を与えた場合、横領罪と背任罪のいずれが成立するのかという問題が生じる。両罪の区別については、越権の有無で区別する見解や、領得行為の有無で区別する見解などがある。また、最近は横領罪は背任罪に対して特別法の関係に立つとして、横領罪の成否によって区別することが必要であり、かつ、それで十分であるとする見解が有力である。

親族間の特例

窃盗罪親族相盗例の規定が横領罪にも準用される(刑法255条244条)。 なお、成年後見人未成年後見人による被後見人財産の横領のケースでは、親族であろうと準用されないとするのが判例である(成年後見人につき最決平成24年10月9日、未成年後見人につき最決平成20年2月18日)。

関連項目