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SKYACTIV TECHNOLOGY

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SKYACTIV TECHNOLOGY(スカイアクティブ・テクノロジー)は、マツダが開発、および製造する自動車技術群の総称である。

概要

2009年9月4日に、同年10月24日から開催される東京モーターショーで、「マツダ SKY-G」「マツダ SKY-D」「マツダ SKY-Drive」を展示することを発表[1]。前年のパリモーターショーで展示された[2]、日本初公開に合わせて「SKY-G」と「SKY-Drive」が搭載されていることを公表した[1]

2010年10月20日にマツダの新世代技術として正式に発表された[3]

といった技術が含まれる。こうした一連の技術により2015年までにマツダ車の平均燃費をグローバルで2008年比で30%向上させるとしている[4]

従来の自動車開発ではエンジントランスミッションプラットフォームといった主要なコンポーネントの設計時期が異なるため、個々の理想的な構造・設計を純粋に追求することは難しかったが、 スカイアクティブ・テクノロジーは自動車を構成する要素技術を包括的かつ同時に刷新することで車両全体の最適化を図ったという点に特徴がある[5]

スカイアクティブ・テクノロジーを採用した商品は製作誤差による性能の個体差を極小化することで、カタログ通りのスペックを全数保証するポリシーが貫かれており、こうした取り組みはマツダ車が属する価格帯の商品では異例である[6][7]

マツダはスカイアクティブ・テクノロジーが全面的に採用された新型車を2015年度までに8車種発売する予定であり[8] 、さらに2016年以降に第2世代のスカイアクティブ・テクノロジーを登場させることを示唆している[9]

なお、いずれも「SKYACTIVE」は誤り(最後に「E」はつかない)。

歴史

SKY-G (2009年東京モーターショー)
SKYACTIV-CNG Concept (2013年東京モーターショー)

ビルディングブロック戦略

SKYACTIV-HYBRID

自動車の燃費向上にあたり、エンジントランスミッションプラットフォームといったベース技術の基本性能を優先的に高めた上で、電気デバイスの採用を拡大するマツダの戦略[4]。マツダは2020年においても内燃機関が主要なパワートレーンとしての割合を占めると予測しており、ベース技術の性能を高めておけば電気デバイスの負荷が相対的に小さくて済むとしている[4]。この戦略におけるベース技術がスカイアクティブ・テクノロジーにあたる。ビルディングブロック戦略における電動化技術には以下の3つが含まれる。

第1段階「i-stop
アイドリングストップ技術。
第2段階「i-ELOOP
減速エネルギー回生技術
第3段階「SKYACTIV-HYBRID
モーター駆動技術
2010年3月のトヨタ自動車とのハイブリッドシステムライセンス供与の合意を受け[15]、2013年11月にアクセラに搭載され発売された[16]プリウスシリーズ等と同じシステムを利用するために、エンジンはTHS-IIの特性に合わせたSKYACTIV-Gを利用し、出力値もトヨタ車と同一値に合わせている[17]

エンジン

SKYACTIV-D 2.2 (SH-VPTR)

エンジンの全面刷新にあたり、パワートレーン開発の責任者人見光夫は、内燃機関の改善における因子を「圧縮比」、「空燃比(比熱比)」、「燃焼期間」、「燃焼タイミング」、「ポンピング損失」、「機械抵抗」の6つに集約した[18][19]。マツダは3段階でこれら全ての因子を理想状態に近づけることにより、内燃機関としての「究極」を目指すとしている[18]。スカイアクティブ・エンジンはこのロードマップにおける第1段階に位置付けられており、残る段階ではリーンバーンの採用及びシリンダーブロックの断熱化が示唆されている[20]

SKYACTIV-G
上記の因子のうち、「圧縮比」、「ポンピング損失」、「機械抵抗」の改善に開発の重点が置かれた[18]
SKYACTIV-D
上記の因子のうち、「燃焼タイミング」、「機械抵抗」の改善に開発の重点が置かれた[18]

トランスミッション

SKYACTIV-DRIVE

SKYACTIV-DRIVE

6速オートマチックトランスミッション。トルク容量270Nmの「ミッド」と460Nmの「ラージ」の2種類が存在する[21]

従来のステップATは、滑らかな発進や変速といった利点を持っているが、その際にトルクコンバーターの滑りによる伝達ロスや、ダイレクト感が損なわれるといった欠点が存在した。この対策として、トルクコンバーターを介さず、エンジンとトランスミッションを直結するロックアップが用いられてきたが、ロックアップの多用はNVHの増大やロックアップクラッチの耐久性を損なうといった問題があったため、ロックアップ領域の拡大は進んでいなかった。

マツダは、トルクコンバータを作動させるのは発進時のみとすることで流体継手を小経化し、開いたスペースに湿式多板式ロックアップクラッチと大容量化したダンパースプリングを収める事でレイアウトを成立させ、耐久性や制御性を損なうことなくロックアップ領域をJC08モードで従来の49%から82%へ大幅に拡大させた[22]。ロックアップによるNVHの増大は、トランスミッションだけでなく、排気系や車体、エンジンマウントといった幅広い領域での対策を施すことで低減した[22]。 さらに、従来ではATユニットの外部に置かれたECUと油圧制御装置を一体化した「機電一体制御モジュール」を採用した上で、ソレノイドバルブに個体差による制御のばらつきを補正するトリミングを実施することで作動油圧の精度を高め、変速時の応答性を向上させている[23]

こうした結果、SKYACTIV-DRIVEは従来比で4-7%の燃費向上と[24]デュアルクラッチトランスミッションを上回る変速速度を実現したとしている[23]

SKYACTIV-MT

SKYACTIV-MT

6速マニュアルトランスミッション。トルク容量270Nmの「ミッド」(C66M-R)と460Nmの「ラージ」(D66M-R)の2種類が存在する[25]

意のままに操れる変速操作性と小型軽量化、NVH性能の向上を開発の目標とした。 ショートストロークと操作力の軽減を両立させるため、スリーブストロークを短縮することで内部レバー比を拡大するとともに、ギヤトレイン部のイナーシャを低減することでシフトストロークを50mmから45mm、操作力を約50Nから約40Nに低減した[25]。 また、「ラージ」は1速用ギアとリバースギアを兼用とすることでリバースアイドル専用軸を廃止した他、2速及び3速インプットギアを共用とすることでセカンダリー軸長を従来比で約20%短縮させている[26]

こうした結果、SKYACTIV-MTは従来比で1%の燃費向上と、約20%の軽量化を実現したとしている[25]

プラットフォーム

SKYACTIV-BODY

プラットフォームの刷新に当たり、ボディ設計の基本コンセプトを「ストレート化」、「連続化」、「マルチロードパス」とした[27]

従来、前輪駆動車ではドライブシャフトの可動軌跡を避けるためにフロントサイドメンバーを上方に湾曲させていたが、スカイアクティブ・テクノロジーの開発にあたってはプラットフォームとパワートレーンの同時刷新という機会を生かし、トランスミッションの軸方向短縮といった工夫で干渉を避け、フレームのストレート化を果たした[5]。フロントサイドメンバーからフロアメンバー、リヤサイドメンバーの接合部も平面視でハの字形にストレートに配置することで屈曲部を極力廃している。サスペンションの取り付け位置をアッパーボディとアンダーボディとダイレクトに結合させる「デュアルブレース」と呼ぶ構造にした他、部材をリング状に連続化させる環状構造を用いて剛性を確保しながら軽量化を図った[28]。Bピラーリインフォースメントにはホットスタンプ材を採用し、高張力鋼板の使用比率を従来の40%から60%に増加させている[27]。衝突時においては、荷重を複数の方向に分散させ吸収する「マルチロードパス構造」とし衝突安全性能を向上させた。

こうした結果、SKYACTIV-BODYは従来比で30%の剛性向上と8%の軽量化を実現したとしている[28]

SKYACTIV-CHASSIS

SKYACTIV-CHASSIS

サスペンション形式はフロントにストラット、リアにマルチリンクを採用している[29]。フロントサスペンションのキャスター角およびトレール量を拡大して高速域での直進性を高めた上で、電動パワーステアリングギヤレシオを従来より高速化させヨーゲインのピークを低車速域に設定し、操舵の軽快感と安心感を両立させている[30]。リアサスペンションはトレーリングアームの取り付け位置を2代目アテンザ比で45mm上方に設定し、後輪の揺動軌跡を後傾化したことで前後方向の入力の低減と制動時のリフトの抑制を図ると同時に、ショックアブソーバーの減衰力とトップマウントラバーの剛性の低減により快適性を向上させた[29]

また、クロスメンバーの閉断面部をフランジレス化するなどして、剛性を向上させながら従来比で14%の軽量化を実現したとしている[30]

車種ごとの対応状況

初搭載については、対応している場合はを付けている。

車名
(世代)
販売期間 SKYACTIV
-G
SKYACTIV
-D
SKYACTIV
-DRIVE
SKYACTIV
-MT
SKYACTIV
-BODY

SKYACTIV
-CHASSIS
SKYACTIV
-HYBRID
備考
デミオ
(3代目マイナーチェンジ型)
2011年6月 -
アクセラ
(2代目マイナーチェンジ型)
2011年6月 -
2013年8月
CX-5
(初代)
2012年2月 -
(日本国外仕様のみ)
アテンザ
3代目
2012年11月 -
プレマシー
(3代目マイナーチェンジ型)
2013年1月 - 日産にもラフェスタハイウェイスターとしてOEM供給[31]
ビアンテ
(初代マイナーチェンジ型)
2013年5月 -
アクセラ
(3代目)
2013年11月 -
(日本国内仕様のみ)
デミオ
(4代目)
2014年秋頃予定 - トヨタの北米市場向けに2015年からOEM供給予定[32]

脚注

  1. ^ a b c マツダ、第41回東京モーターショーで環境・出力性能を飛躍的に高めた次世代エンジン「マツダ SKY-G」と「マツダ SKY-D」を世界初公開 - マツダ 2009年9月29日
  2. ^ マツダ、パリモーターショーにコンセプトカー「マツダ清(きよら)」を出品 - マツダ 2008年9月4日
  3. ^ a b “マツダ、次世代技術「SKYACTIV」を発表”. マツダ ニュースリリース. (2010年10月20日). http://www.mazda.co.jp/corporate/publicity/release/2010/201010/101020a.html 
  4. ^ a b c “【MAZDA】マツダが目指すもの|SKYACTIV TECHNOLOGY|マツダのクルマづくり”. http://www.mazda.co.jp/philosophy/skyactiv/vis.html 
  5. ^ a b マツダ「SKYACTIV」の本当の強み - 日経Automotive Technology - Tech-On!”. 2014年2月20日閲覧。
  6. ^ “新型アテンザ でマツダの付加価値拡大戦略は成功するか…井元康一郎”. http://response.jp/article/2012/09/10/181117.html 
  7. ^ 「モノづくり革新」への挑戦 生産領域のブレークスルー マツダ株式会社 専務執行役員 小飼雅道” (PDF). 2013年2月13日閲覧。
  8. ^ “【MAZDA】中長期施策の枠組み|経営方針”. http://www.mazda.co.jp/corporate/investors/policy/mid_term.html 
  9. ^ “基本技術で燃費改善 安易な妥協はしない マツダ 金井 誠太 副社長”. http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120112/226069/?rt=nocnt 
  10. ^ 2006年マツダ技報 今後の商品開発の在り方” (PDF). 2013年2月11日閲覧。
  11. ^ “マツダ、技術開発の長期ビジョンサステイナブル”Zoom-Zoom”宣言」を策定”. http://www.mazda.co.jp/corporate/publicity/release/2007/200703/070322a.html 
  12. ^ “「マツダ CX-5」が「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞”. http://www.mazda.co.jp/corporate/publicity/release/2012/201211/121129b.html 
  13. ^ a b 新型「マツダ アクセラ」の予約販売を開始”. 2013年11月21日閲覧。
  14. ^ マツダ、東京モーターショーに新型「アクセラ」を出品”. 2013年11月21日閲覧。
  15. ^ トヨタとマツダ、ハイブリッドシステムの技術ライセンス供与に合意” (PDF). 2014年2月20日閲覧。
  16. ^ 【MAZDA】新型「マツダ アクセラ」の予約販売を開始|ニュースリリース”. 2014年2月20日閲覧。
  17. ^ マツダ 新型アクセラハイブリッド・ディーゼル 新型車解説 -マツダ初のハイブリッド、燃費は「30.8km/L」-/渡辺陽一郎 (1/2) - Autoc one 2013年10月10日
  18. ^ a b c d 内燃機関の将来展望 人見光夫” (PDF). 2013年2月13日閲覧。
  19. ^ 高圧縮比高効率ガソリンエンジン - 機械振興協会” (PDF). 2013年5月13日閲覧。
  20. ^ “SKYACTIVエンジンは“理想の燃焼”に向けた第1ステップ”. http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1204/26/news047.html 
  21. ^ マツダ・ビアンテ グランツ-SKYACTIV(FF/6AT)【短評】”. 2014年2月20日閲覧。
  22. ^ a b SKYACTIV-DRIVE の開発 Development of SKYACTIV-DRIVE” (PDF). 2014年2月20日閲覧。
  23. ^ a b マツダの走りを支える次世代「スカイアクティブ・ドライブ」誕生”. 2014年2月20日閲覧。
  24. ^ 【MAZDA】構造改革プラン|経営方針”. 2014年2月20日閲覧。
  25. ^ a b c SKYACTIV-MTの紹介 Introduction of SKYACTIV-MT” (PDF). 2014年2月20日閲覧。
  26. ^ 【MAZDA】SKYACTIV-MT|プラットフォーム|SKYACTIV TECHNOLOGY”. 2014年2月20日閲覧。
  27. ^ a b SKYACTIV-ボディ SKYACTIV-BODY マツダ技報(2011)” (PDF). 2014年2月20日閲覧。
  28. ^ a b 【MAZDA】SKYACTIV-BODY|プラットフォーム|SKYACTIV TECHNOLOGY
  29. ^ a b SKYACTIV-シャシーのダイナミクス性能 Dynamics Performance of SKYACTIV-CHASSIS” (PDF). 2014年2月20日閲覧。
  30. ^ a b 【MAZDA】SKYACTIV-CHASSIS|プラットフォーム|SKYACTIV TECHNOLOGY
  31. ^ 新型「ラフェスタ ハイウェイスター」を発売 - 日産自動車 2011年6月15日
  32. ^ トヨタとマツダ、メキシコでの生産について合意 - マツダ 2012年11月9日

参考文献

関連項目

外部リンク