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シトロエン・メアリ

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シトロエン・メアリ<メアリ 4x4>
標準的ピックアップタイプ.前期型.
概要
販売期間 1968年 - 1988年
1980年 - 1983年
ボディ
乗車定員 2(+2)
駆動方式 前輪駆動<四輪駆動>
パワートレイン
エンジン 空冷 水平対向2気筒 OHV 602cc ガソリンエンジン
変速機 4速MT <2速副変速機>
前輪リーディングアーム、後輪トレーリングアーム、4 輪独立、横置-コイルスプリングによる前後関連懸架<前輪リーディングアーム、後輪トレーリングアーム、4 輪独立、横置-コイルスプリング>
前輪リーディングアーム、後輪トレーリングアーム、4 輪独立、横置-コイルスプリングによる前後関連懸架<前輪リーディングアーム、後輪トレーリングアーム、4 輪独立、横置-コイルスプリング>
車両寸法
ホイールベース 2.37m
全長 3.52m
全幅 1.53m
全高 1.635m
車両重量 525kg
その他
積載重量 400kg
タイヤ 135X380XM - S
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メアリMéhari )はフランスの自動車会社シトロエンがかつて製造、販売していたオフロードカーである。

世界で初めてABS樹脂製のボディパネルを架装した大量生産車として知られる。1968年から1988年までの総生産台数は 144572台と記載されている。

バリエーションとして四輪駆動車のメアリ4x4 が1980年から1983年まで生産されたが、高価なこともあり、販売台数は1200台程度にとどまった。

概要

車名は 、ヒトコブラクダのうちメアリと呼ばれる早駆け用のラクダに由来しており、その名称の通りどんな道でも使用できる小型多用途車である。 この小さなピックアップは、ないボディ素材を活かし、若者のレジャー用から漁業作業用まで幅広い用途に活用された。

そのボディの素材と構造から、室内が汚れた場合でも水をかけて洗い流すだけでよく、ワックスがけの必要もなく、少々の「擦り傷」程度はサンドペーパーなどで修復すれば良いので手間が掛からない。これまで2CVが持っていた道具のような性格を、より発展させたモデルであり、シトロエンが2CVに交代するモデルとして送り出した「都会的な」モデルのディアーヌにない部分を補うモデルでもある。

メーカーとしては、2CVに交代する車として2CVの持つ性格を二分割してディアーヌとメアリにする意図を持っていたと考えられる。価格は1969年の2CVが5,984フランに対してディアーヌ6が7,655フラン、メアリが7,800フランであり、メアリの価格が一番高くなっている。

生産台数もディアーヌとメアリの合計生産台数が2CVの生産台数を一時追い抜いたことがあったが、数年の内に再逆転されてしまった。この間、2CV AZU、AKの生産数はほとんど変化していない。

最初期のカタログシトロエンの広報誌「ル・ドゥブル・シュヴロン」(Le Double Chevron )の中でも、生産が終了した車種を解説するL'ANTIQUAIREの1986年版でも車名は「Dyane 6 Méhari」と表記されており、正式名称は「ディアーヌ6メアリ」であったと思われる。この意味は4輪駆動車のメアリ 4x4 と区別するためであろう。

ボディ

ボディ構造

ディアーヌ6プラットフォームシャシの上に鋼管フレームが組まれ、それに熱成型されたABS樹脂製の13のボディパネルがボルト留めされるという構造である。破損したボディの補修は、その部位のパネルを外して交換するだけであり、容易で且つ安価である。但し鋼管フレームが変形、破損した場合には、修正が必要となる。 このABS樹脂は商品名を「サイコラック」(Cycolac )といいMarbon-France社よりS.E.A.B.社に供給され、ここで熱成型されてボディパネルとなる。

前部座席は左右で独立しており、ボディ側面は乗降用に深くえぐられ、そこには転落防止用のチェーンが付いているだけであったが、後年ドアがつけられた。フロントのウインドシールドスクリーンは可倒式、車体後部のアオリ(ドロップゲート)は床の高さから開き、荷役のし易さが考慮されている。スペアタイヤは荷室右側の前寄りに立てて収納される。

ボディー・カラー

ABS樹脂は、半分はプラスチック、半分は合成ゴムのような特殊な性質を持っている。このABS樹脂は塗装をしなくても、ABS顆粒に顔料を入れて熱処理して成型することにより着色パネルが造られる。また、樹脂用の塗料を用いて好みの色に塗装することもできる。当初の車体色には、カラハリオーク、ホッピーレッド、モンタナグリーンが用意されている。

ボディ型式

2型式に分類される。

  • 作業用2座席ベーシックモデル
フロントウインドシールドは可倒式。ドアには安全用のチェーンが付いているのみのベーシックモデルである。荷室は平面フロアーであり、側面をABSで覆ったロールバー状のフレームが備わる。
  • オプション - 1
運転席と荷室を覆うトノーカバーが付く。下半分がABS製のドア(上半部分はビニールとカンバス製。)が安全性と快適性のため装備される。
  • ENAC オプション
布製またはABS製ドア付き、黒コットン製折りたたみ式とABSドア付きハードトップスライディングドア付。2座席モデルではサイドウインドウはやや小型である。
  • 2 + 2 タイプ(ベーシックタイプ)
フロントウインドシールドは可倒式。ドアなしで安全チェーン付き。折りたたみ式の黒色コットン製車室幌を装着するため、側面をABSで覆ったロールバー状のフレームと、鉄製パイプによる四角く簡単な支柱が組み付けられる。着脱自在のリアベンチシートはフロントシート直後のフロアーを起こす方式で、簡単な背当てのみである。
  • オプション - 1.
キャビンを完全の覆うソフトトップと下半分がABS製のドア(上半部分はビニールとカンバス製)が付く。
  • ENAC オプション
黒色コットン製の覆い付きで、布またはABS製ドアが付く。ステアリング・コラムに盗難防止装置がつく。ABS製ドア付きハードトップも選択出来る。

メカニズム

エンジン

排気量602ccから 28HP/5,400rpm.を発揮する空冷水平対向2気筒ガソリンエンジンを搭載し、最高速度は100km/h。

車重は 525kg と軽量で、最大積載量は 400kg である。

遠心クラッチ付きモデルも選択できたのも2CVと同様である。タイヤは135x380XM-S.

サスペンション / ダンパー

2CVと同様に前輪がリーディング・アーム、後輪がトレーリング・アームによる四輪独立懸架であり、前後のサスペンション・アームからのロッドがサスペンション・シリンダー内の横置(前後方向に水平配置)コイルスプリングを圧縮する。従って、この力は前後でサスペンション・シリンダーを引き合っている。 このサスペンション・シリンダーはシャシに半浮動固定されているので、前輪と後輪の動きは互いに影響し合う2CVと同様の前後関連懸架である。

この関連する動きにより、サスペンション・スプリングは単純に考えても2倍に柔らかくなり、車重の軽い車に適しているが、平坦路の走行時に前後のバネが同時に伸縮を繰り返し、車体が上下に連続運動(バウンシングと呼ばれる)し続ける欠点を持っている。

4輪に慣性ダンパーを装備し、その他、前輪に摩擦ダンパー、後輪にテレスコピック式油圧ダンパーを装備している。

モデルの変遷

  • 1969年、エンジンが33HP/5,750rpmに強化され、最高速度は110km/hとなる。これは 2CV-6、ディアーヌ6と同様である。
  • 1970年、ENACによりABS樹脂製のハードトップモデルが造られ、完全なクローズドボディとなり、鍵による車室の施錠が可能になる。
  • 1973年軍用試験にも合格した "Military-Mehari" が有名で、1,000台がフランス陸軍に、250台がフランス空軍に採用された。(from: Le Double Chevron: No.30. 1972 )
  • 1978年フロントグリルが横線基調のものとなり、ドアが付くようになる。

メアリ 4x4

1979年、「メアリ 4x4」が造られる。エンジンとトランスミッションは同一であるが、2速副変速機付きのトランスファーを持ち、レバー操作により後輪も駆動できるパートタイム4WDとされた。前後にパワートレインを搭載した2CV サハラ とは異なる一般的な仕様である。
副変速機で2.6倍に減速されることにより1輪当たりの駆動トルクは非常に大きくなる。またディファレンシャルギアをロックすることで後輪の空転を防ぐことができ、1 : 1(45度)以上の斜度を登坂することが出来るフランス製のジープとも呼べるモデルである。
  • 他の2CV派生車種とは異なり、このモデルのサスペンションには前後関連懸架はない。サスペンション・シリンダーはシャシに固定されており、油圧ダンパーを前後に装備している。

軍用承認車(シトロエン A 4x4)

メアリ 4x4 より5,000台規模の4輪駆動、軽クロスカントリー車がフランス軍の公式承認を獲得した。全製造台数から考えると「正にジープ」に比肩する。

この車両はメアリ同様の四輪駆動車であるが、ボディーはABS製ではなく鋼板製」である。 このため、外観はFAFNAMCO PONYに似ている。ルーフとボディー上半部はカンバス製のようで、勿論緑系の迷彩色である。

車両が民生のメアリ 4x4 と同等以上の障害物を乗り越える能力を持っていることを証明する「テスト」が、1979年5月から1980年10月にかけて軍用技術試験場で行われた。 この20ヶ月の期間、270,000km のトラックとクロスカントリーに於いて、車両の頑丈さと信頼性がテストされた。

使用された車両は10台の"A 4x4"プロトタイプであった。

車両仕様

これらの組み合わせで、6モードの駆動方式が選択可能である。

  • FF(4x2)で副変速機の有無、4x4で副変速機の有無、ディファレンシャル・ロックの有無、の6種類である。

普通の地面では4x2の副変速機及びディファレンシャル・ロックなしが推薦された。

  • 最高速度110km/h。燃費は100kmあたり9L。
  • 走行状態重量 : 840kg、全備重量 : 1,240kg。
  • スタンダード仕様で、保護金網付、前倒式フロントウィンドシールド装備、12-24Vコンバーター無線機装備である。(from:Le Double Chevron. No.63. 1981)

再生産

フランスのメアリクラブではエンジン、シャシフレーム、鋼管フレーム、ボディパネル等全ての構成部品を製作販売している。また、古い廃車の車体ナンバーから、新車のメアリを多数再生産している。この様にメアリの再生産は特に容易である。

輸入実績

1982年9月に三越百貨店麻布自動車により、少数の2CVとメアリの輸入がされたが、丁度、フランス祭に当たって2CV France-3が(ヨットレースで有名)写真付き購入募集案内書を配布した。三越事件による三越百貨店社長の突然の解任により中止になった。麻布自動車により予約分が販売された。

メアリ4x4 は西武自動車販売により数台がサンプル輸入されており、カーグラフィック誌によってテストされ、記事化された。


外部リンク

<- Previous シトロエン ロードカータイムライン 1980年代-
タイプ 1980年代 1990年代 2000年代 2010年代 2020年代
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