歩法 (馬術)
歩法(ほほう)とは、馬術において、馬の歩き方、走り方(4本の肢の動きのパターン)のことを言う。
対称歩法
左右の肢の動きがほぼ1/2の周期でずれている歩法を、対称歩法という。
常歩
常歩(なみあし; 英:walk; 仏:pas; 独:Schritt)は、4節(四肢が別々に着地・離地すること)の歩き方で、常に2本あるいは3本の肢が地面に着き、体重を支えている(「空間期」がない)。なお、常歩が早くなると1本の肢で体重を支えるようになる(アンブル)。
肢の動く順序は右後肢、右前肢、左後肢、左前肢。
速度は通常、分速110メートルほど。
騎乗者にはごく軽い前後の揺れが伝わる程度。
速歩
速歩(はやあし; 英・仏:trot; 独:Trab)は、2節の歩き方で、右前肢と左後肢(右斜対肢)、左前肢と右後肢(左斜対肢)がペアになってほぼ同時に着地・離地する「斜対歩」と、右前肢と右後肢(右側対肢)、左前肢と左後肢(左側対肢)がペアになる「側対歩」とがある。厳密には4本の肢の着地には時間差があり、常歩と同様の順序である。
馬にとって自然な速歩は斜対歩である。繋駕速歩競走や日本の古馬術では、側対歩が採用されている。
歩行中、四肢のいずれもが地面から離れている「空間期」がある。
速度は通常、分速220メートルほど。
騎乗者には強い上下の揺れが伝わる。
軽速歩
軽速歩(けいはやあし)とは、速歩のとき騎手が馬の動きに合わせて鐙に立つ、鞍に座る、を繰り返すことをいう。
速歩の反撞による人馬への負担を低減するための技術。
非対称歩法
左右の肢の動きが1/2の周期でずれていない歩法を、非対称歩法という。非対称歩法においては、左右の肢のうち遅れて着地する肢を手前肢、先に着地する肢を反手前肢という。右肢が手前の場合を右手前、左肢が手前の場合を左手前という。
駈歩
駈歩(かけあし; 英:canter; 仏:galop; 独:Galopp)は、3節の歩き方で、3本の肢が接地している時期と、4本の肢すべてが地面を離れている時期とがある。左右どちらの前肢が前に出るかで、左駈歩、右駈歩の区別がある。駈歩を、遅い襲歩に区分する場合もある。
駈歩には後肢が先に着地するものと前肢が先に着地するものとがあり、前者の着地順序は後述襲歩と同じく右手前と左手前とがあり、後者の着地順序は対称歩法と同じである。
速度は通常、分速340メートルほど。
騎乗者には、ブランコのような大きくゆったりとした前後の揺れが伝わる。
襲歩
襲歩(しゅうほ;gallop)は、全速力で走る際の馬の歩き方で、馬術の基本となる「三種の歩度」(常歩、速歩、駈歩)には含まれない。左右の後肢の動くタイミングが近く、また左右の前肢の動くタイミングは離れている。4節の歩き方で、左手前と右手前があり、前肢の手前肢が走る方向を調整し、後肢の反手前肢が前方へ身体を推進させる働きをする。また、交叉襲歩と回転襲歩がある。
襲歩においては、3本以上の肢が設置している時期がなく、4本いずれもが接地していない時期がある。
左(右)手前の交叉襲歩は、肢の着地が右(左)後肢、左(右)後肢、右(左)前肢、左(右)前肢の順。
左(右)手前の回転襲歩は、肢の着地が左(右)後肢、右(左)後肢、右(左)前肢、左(右)前肢の順。
通常は交叉襲歩を用いて走っているが、手前を変えるとき、あるいは走り始めてからある程度のスピードが出るまでは回転襲歩を用いて走る。回転襲歩において前肢の手前肢が地面を離れた直後、いずれの肢も着地していない「空間期」がくる。