コンテンツにスキップ

「エアインテーク」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
蛇足の除去。重複内容の省略。
セクションの再構成。文章の簡潔化。
7行目: 7行目:
移動する[[乗り物]]などに生じる風圧を利用して、より効率的に空気を取り込むエアインテークを'''ラムエアインテーク'''({{lang-en-short|ram-air intake}})と呼ぶ場合がある。ラムエア({{lang-en-short|ram-air}})は「衝突する空気」という意味で、空気密度の薄い上空を時速500km/h以上の速度で飛行する[[ジェット機]]に用いられた。走行風を積極的に利用して吸気管内を流れる空気の抵抗を減らして<ref name=autoexe>{{cite web|url=http://www.autoexe.co.jp/products/ram_air.html|title=AutoExe:機能別商品情報|publisher=株式会社オートエグゼ|accessdate=2014-03-28}}</ref>[[ポンピングロス]]を低減できるとして、自動車やオートバイなどような陸上輸送機器の分野にも応用され、[[レーシングカー]]や市販のオートバイで採用されている。
移動する[[乗り物]]などに生じる風圧を利用して、より効率的に空気を取り込むエアインテークを'''ラムエアインテーク'''({{lang-en-short|ram-air intake}})と呼ぶ場合がある。ラムエア({{lang-en-short|ram-air}})は「衝突する空気」という意味で、空気密度の薄い上空を時速500km/h以上の速度で飛行する[[ジェット機]]に用いられた。走行風を積極的に利用して吸気管内を流れる空気の抵抗を減らして<ref name=autoexe>{{cite web|url=http://www.autoexe.co.jp/products/ram_air.html|title=AutoExe:機能別商品情報|publisher=株式会社オートエグゼ|accessdate=2014-03-28}}</ref>[[ポンピングロス]]を低減できるとして、自動車やオートバイなどような陸上輸送機器の分野にも応用され、[[レーシングカー]]や市販のオートバイで採用されている。


== 形状 ==
== 航空機 ==
[[File:Krzesiny 3RB.JPG|thumb|F-16戦闘機のインテーク<br/>胴体および[[ストレーキ]](翼前縁延長部)の下にエアインテークを配置することにより、大きな[[迎角]]の飛行状態の際にも安定して空気が取り込まれる。]]
[[File:Ferrari F40 in IMS parking lot.jpg|thumb|right|220px|[[フェラーリ・F40]]のNACAダクト]]
[[File:Front view of F-35C Lightning II of VX-23 on USS Eisenhower (CVN-69) in October 2015.JPG|thumb|F-35のインテーク]]
[[ファイル:MiG-15 RB2.jpg|thumb|[[ミコヤン設計局]] [[MiG-15 (航空機)|MiG-15]]。典型的なジェットエンジンのラムエアインテーク。]]
[[航空機]]、とりわけ[[ジェット機]]においてはエアインテークの数や配置、形状は[[エンジン]]や[[飛行機]]の性能に大きく影響する要素の1つである。航空機の用途によってエアインテークの設計も異なり、例えば空気の薄い高高度を飛行する航空機やと低高度を飛行する航空機とでは設計が異なる。

近年の戦闘機では、インレットの位置や形状の設計に[[ステルス性]]も考慮しており、例えば、[[F-117 (航空機)|F-117]][[攻撃機]]や[[B-2 (航空機)|B-2]][[爆撃機]]では、機体下面の[[レーダー反射断面積]]を小さくするために、エアインテークは主翼の上面に開口している。また、レーダー反射を増大させるファンブレードが正面から見えないように単発機でも敢えて左右に取り入れ口を設けた[[サーブ 39 グリペン]]や[[F-35 (戦闘機)|F-35]]といった例がある。F-35ではこれに加え、[[ダイバータレス超音速インレット]]と呼ばれる特殊なインテークを使い重量を減らしつつ、ステルス性を向上させている。

航空機では[[ピトー管]]が飛行中のラム圧の測定に利用され、[[大気圧]]との対比によって航空機の[[対気速度]]を測定するのに用いられている。

エンジンへ空気を導入する構造としてのラムエアインテークは、対気速度が高い[[ジェット機]]では標準的に用いられていて、ラム圧を積極的に利用することは[[ジェットエンジン]]には不可欠となっている。最高速度の頭打ちの要因となる開口部を減少させて空気抵抗を抑えつつも、より効率の良い吸入空気量を得るために[[流体力学]]を駆使したエアインテークの研究は古くから非常に盛んに行われた。そのうちの1つである[[NACAダクト]]([[:en:NACA_duct]])は、陸上の乗り物にも応用されている。

飛行中の吸入空気量を増大させる目的で機首に開口部を持つ空気取り入れ口は、[[第二次世界大戦]]前後の[[レシプロエンジン]]機にすでに見られたが、大戦中は出力増大の手法としてはスーパーチャージャーやターボチャージャーなど機械的な過給機が主流で、ラムエアインテークの概念のみで過給を行うことはあまり多くはなかった。

流入空気の速度によってエアインテーク(エアインレット)の形状は異なる。以下に代表的な例を挙げる<ref>{{cite book
流入空気の速度によってエアインテーク(エアインレット)の形状は異なる。以下に代表的な例を挙げる<ref>{{cite book
| last = Raymer
| last = Raymer
30行目: 42行目:
;円錐型
;円錐型
:円管の中心から円錐が突き出た形状で、空気は円錐と円管の間から流入する。この円錐を[[ショックコーン]]と言う。スパイク型、円形、軸対称型などとも呼ばれ、半円などのバリエーションもある。円錐型は[[MiG-21 (航空機)|MiG-21]]や[[SR-71 (航空機)|SR-71]]など、半円型は[[F-104 (戦闘機)|F-104]]などが採用した。
:円管の中心から円錐が突き出た形状で、空気は円錐と円管の間から流入する。この円錐を[[ショックコーン]]と言う。スパイク型、円形、軸対称型などとも呼ばれ、半円などのバリエーションもある。円錐型は[[MiG-21 (航空機)|MiG-21]]や[[SR-71 (航空機)|SR-71]]など、半円型は[[F-104 (戦闘機)|F-104]]などが採用した。

== 航空機 ==
[[File:Krzesiny 3RB.JPG|200px|thumb|left|F-16戦闘機のインテーク<br/>胴体および[[ストレーキ]](翼前縁延長部)の下にエアインテークを配置することにより、大きな[[迎角]]の飛行状態の際にも安定して空気が取り込まれる。]]
[[File:Front view of F-35C Lightning II of VX-23 on USS Eisenhower (CVN-69) in October 2015.JPG|thumb|F-35のインテーク]]
[[ファイル:MiG-15 RB2.jpg||thumb|[[ミコヤン設計局]] [[MiG-15 (航空機)|MiG-15]]。典型的なジェットエンジンのラムエアインテーク。]]
[[航空機]]、とりわけ[[ジェット機]]においてはエアインテークの数や配置、形状は[[エンジン]]や[[飛行機]]の性能に大きく影響する要素の1つである。航空機の用途によってエアインテークの設計も異なり、例えば空気の薄い高高度を飛行する航空機やと低高度を飛行する航空機とでは設計が異なる。

近年の戦闘機では、インレットの位置や形状の設計に[[ステルス性]]も考慮しており、例えば、[[F-117 (航空機)|F-117]][[攻撃機]]や[[B-2 (航空機)|B-2]][[爆撃機]]では、機体下面の[[レーダー反射断面積]]を小さくするために、エアインテークは主翼の上面に開口している。また、レーダー反射を増大させるファンブレードが正面から見えないように単発機でも敢えて左右に取り入れ口を設けた[[サーブ 39 グリペン]]や[[F-35 (戦闘機)|F-35]]といった例がある。F-35ではこれに加え、[[ダイバータレス超音速インレット]]と呼ばれる特殊なインテークを使い重量を減らしつつ、ステルス性を向上させている。

航空機では[[ピトー管]]が飛行中のラム圧の測定に利用され、[[大気圧]]との対比によって航空機の[[対気速度]]を測定するのに用いられている。

エンジンへ空気を導入する構造としてのラムエアインテークは、対気速度が高い[[ジェット機]]では標準的に用いられていて、ラム圧を積極的に利用することは[[ジェットエンジン]]には不可欠となっている。最高速度の頭打ちの要因となる開口部を減少させて空気抵抗を抑えつつも、より効率の良い吸入空気量を得るために[[流体力学]]を駆使したエアインテークの研究は古くから非常に盛んに行われた。そのうちの1つである[[NACAダクト]]([[:en:NACA_duct]])は、陸上の乗り物にも応用されている。

飛行中の吸入空気量を増大させる目的で機首に開口部を持つ空気取り入れ口は、[[第二次世界大戦]]前後の[[レシプロエンジン]]機にすでに見られたが、大戦中は出力増大の手法としてはスーパーチャージャーやターボチャージャーなど機械的な過給機が主流で、ラムエアインテークの概念のみで過給を行うことはあまり多くはなかった。


== 自動車 ==
== 自動車 ==
[[自動車]]のエアインテークは、エンジンルームや車室へ空気を取り入れるために車体に設けられた開口部を指す場合と、エンジンの吸気管など、空気を必要とする機器に直接接続された部品を指す場合がある。
[[File:4thLegacy.jpg|thumb|right|[[スバル・レガシィB4|レガシィB4]]のターボモデルに採用されている、インタークーラー冷却用エアインテーク(ボンネット中央)]]
[[File:Subaru wrx 2001 forward quarter medium.jpg|thumb|[[スバル・インプレッサ]] [[:en:Subaru Impreza WRX|WRX]]の上置きインタークーラー冷却用エアスクープ]]
[[image:Honda Indy Race Car (MIAS '10).jpg|thumb|巨大なエアインダクションポッドを持つ2010年仕様[[インディカー]]]]
[[ファイル:1973 pontiac trans am.jpeg|thumb|200px|1973年式[[ポンティアック・ファイヤーバード]]・[[ポンティアック・トランザム|トランザム]]の455CID'''ラムエアーIV'''エンジン車。ボンネット上の後ろ向きに開口部を持つ''リバースドシェイカースクープ''が特徴で、市販車両へのラムエアインテーク導入の最初期の例でもある。]]
[[自動車]]では車体に設けられたエアインテークからエンジンルームや空調に空気を送る。エンジンが車体の後ろ寄りに搭載される[[ミッドシップ]]や車体後部に搭載される車種は、車体横や後部上面にエアインテークが設けられている。[[過給機]]を持つ車種では、過給によって高温となった空気を冷やす[[インタークーラー]]へ直接空気を導くエアインテークが独立して設けられる場合もある。[[ブレーキ]]を冷却するための空気を取り入れるエアインテークが車体側面に設けられている場合がある。[[自動車]]の[[ボンネット_(自動車)|ボンネット]]上に取り付けられる例も多くあり、英語圏では特に'''フードスクープ'''(hood scoop)や'''ボンネットスクープ'''(bonnet scoop)と呼ぶ。単なる装飾目的でエアスクープに似せた部品が設けられることもしばしばあり、'''ダミースクープ'''とも呼ばれている。

[[File:Gtopetepf3a1.jpg|thumb|シェイカースクープの一例(1974年式[[ポンティアック・GTO]])]]
自動車の場合、エンジンルーム内に配置された吸気管を通過するうちに、吸入空気がエンジンルームの熱を受けることを避けるためにエアスクープを利用して吸気管路を短縮する場合もある。あるいは吸気系を改造した結果として空気取り入れ口をエンジンルームに設けざるを得ない場合に、その付近に外気を取り入れる目的でエアスクープを利用する場合もある。空気は温度を下げることで密度が高くなるので、エンジンの出力を向上することができる。同様に、[[カウル]]を持つ[[オートバイ]]にも、エンジンやラジエターから離れたカウル前面に取り入れ口を持つエアスクープを備えた車種があり、後のラムエアインテークへと発展していった。自動車用エンジンの吸気に用いられるエアスクープはエンジンに固定されていて、ボンネットに開けられた穴から突き出すデザインとなっているものもある。こうしたエアスクープはエンジンの揺動にあわせて、ボンネット上で著しく振動することから、[[シェイカースクープ]]([[:en:shaker scoop]])と呼ばれている。

[[ファイル:Trulli Brazil 2008.jpg|thumb|[[トヨタ・TF108]][[ヤルノ・トゥルーリ]]車、フォーミュラカーは古くからこのような巨大なエアインテークを用いた空力設計が行われていた。]]
[[フォーミュラ1]]や[[インディカー]]を始めとする[[モータースポーツ]]参加車両では、ラムエアインテークは今日でも極めてポピュラーな装備である。特に[[フォーミュラカー]]においてはレギュレーション(車両規定)によって、機械的な過給機の装着が禁止されている例が多いため、'''インダクションポッド'''などの大口径ラムエアインテークを装着することで、最高速度域での最大限の過給効果と効率的な外気導入を狙った空力設計が行われている。

市販車両では、1960年代に[[ポンティアック・GTO]]などの[[ディーラー]]オプションとして設定された。[[ゼネラルモーターズ|GM]]の商標で'''ラムエアー'''と名付けられ、[[ボンネット_(自動車)|ボンネット]]に設けられたエアインテークをキャブレターに直接接続する構造構造であった。1970年代の[[ポンティアック・ファイヤーバード]]の時代にオプション設定されたラムエアーIVでは、フロントウインドウの前方で空気の圧力が高くなることを積極的に利用するために、進行方向とは逆の向きに開口部が設けられたリバースドエアスクープから空気を取り入れる構造とされた。1970年代末から1980年代にかけて電子制御式[[燃料噴射装置]]で制御された[[ターボチャージャー]]や[[スーパーチャージャー]]が普及して一度姿を消したが、[[2004年]]に[[オーストラリア]]の[[ホールデン]]によってGTOが復活して以降、再びオプションとしてラムエアインテークを採用する例が表れた。

なお、[[アフターマーケット]]パーツの[[エアクリーナー]]の中には、純正エアクリーナーボックスやコールドエアインテークをすべて取り外す形態をとるものがあり、その中の一部に専用のインテークパイプと導風板を併用することでラムエアインテークの効果を期待するように設計されたものが存在する。このようなエアクリーナーを[[ショートラムエアインテーク]]([[:en:Short ram air intake]])と呼ぶ場合がある。

自動車で上置きインタークーラーを採用してボンネットにエアスクープを設ける組み合わせは、前置きインタークーラーに比較すると、前方で跳ね上げられた石([[:en:road debris|road debris]])などによってインタークーラーが損傷するリスクが低い点で、特に[[ラリー]]などのオフロードのモータースポーツで有利な場合がある。


エンジンが車体前方に搭載される多くの車種では[[フロントグリル]]からエンジンルームへ空気を取り込むが、エンジンが車体の後ろ寄りに搭載される[[ミッドシップ]]や車体後部に搭載される車種は、エンジンルームへ外気を導入するために、車体横や後部上面にエアインテークが設けられている。エンジンの吸気管はエンジンルーム内に配置されのが一般的だが、エンジンルーム内の熱の影響を少なくするために吸気管の入り口近くに外気を導入するために、[[ボンネット_(自動車)|ボンネット]]に開口部が設けられる場合もあり、'''フードスクープ'''({{Lang-en-us-short|hood scoop}})や'''ボンネットスクープ'''({{Lang-en-gb-short|bonnet scoop}})と呼ばれる。あるいは、吸気管の入り口の車体から外部に突出させて外気を直接吸入させる場合もあり、エンジンの揺動にあわせて振動することから'''シェイカースクープ'''([[:en:shaker scoop]])と呼ばれている。[[フォーミュラ1]]や[[インディカー]]を始め、エンジンが車体後方に搭載される[[モータースポーツ]]車両では、進行方向に開口部設けて走行風圧により積極的に空気を吸気管へと送る円筒形の部品が装備される場合が多く、'''エアインダクションポッド'''({{lang-en-short|air induction pod}})と呼ばれている。市販車両にも走行風圧を利用した吸気管が採用される場合があり、1960年代に[[ポンティアック・GTO]]などの[[ディーラー]]オプションとして設定された。[[ゼネラルモーターズ|GM]]の商標で'''ラムエアー'''と名付けられ、ボンネットに設けられたエアインテークをキャブレターに直接接続する構造構造であった。1970年代の[[ポンティアック・ファイヤーバード]]の時代にオプション設定されたラムエアーIVでは、フロントウインドウの前方で空気の圧力が高くなることを積極的に利用するために、進行方向とは逆の向きに開口部が設けられた'''リバースドエアスクープ'''({{lang-en-short|reversed air scoop}})から空気を取り入れる構造とされた。あるいはフロントグリルの直近に吸気管の開口部を設けて走行風圧を利用するラムエアインテークの採用例もある。
空冷式の[[インタークーラー]]を備えた自動車で、インタークーラーを車両前面の開口部付近に配置できない場合にエアスクープを利用して冷却用の外気を導入するものもある。上置きインタークーラーの場合にはボンネットに、前置きインタークーラーの場合にはバンパー若しくは、バンパー下のフロントスポイラーにエアスクープが設けられる。
{{main|インタークーラー}}


過熱した[[ブレキキャリパー]]や[[ブレーキローター]]を冷却する目的で利用さる例もある。車輪が車体で覆われていないフォーミュラカーではホイールの内側に独立した形状のものが取り付けられていほか、車輪が車体で覆われてい車両はフロトフェやリヤフェーに開口部を設けて用いられている。
[[インタクーラー]]やオイルクーラー、[[ブレーキ]]を冷却するために、こらに空気を導くエアンテクが独立して設けられる場合もあ。特、エム内の上部にイクーラーが配置される場合、ボンネットや屋根の後方エアスクープが設けられる場合がある。


[[ベンチレーター]]として外気を室内に取り込むエアインテークは、多くの車種ではフロントウインドウとボンネットの間の[[カウル]]と呼ばれる位置にあり、空力的にこの位置の静圧はほかの部分よりも高いため、開口部が車体進行方向に向いていなくても走行によって空気が流れ込む<ref>{{cite web|url=http://www.goo-net.com/knowledge/venitilator.html|title=ベンチレーター(venitilator) | 自動車用語辞典 | 中古車ならGoo-net(グーネット)|publisher=株式会社プロトコーポレーション|accessdate=2015-12-03}}</ref>。これとは別に、車体前面や屋根前方に直接的に外気を導入するエアインテークが採用される例もある。
[[File:Mazda_Porter_Cab.jpg|thumb|[[マツダ・ポーターキャブ]]のベンチレーター]]
自動車の空調装置の一つとして、外気を直接室内に取り込むために開閉式のエアスクープ([[ベンチレーター]])が採用された例もある。キャビン正面の中央部やウィンドシールドの下に設けられたもののほか、屋根の前端中央に備えられたものもある。


装飾目的でエアスクープに似せた部品がけられることもあり、'''ダミースクープ'''({{lang-en-short|dummy scoop}})とも呼ばれている。外気を導入する機能なく開口部のは閉されている。[[日本車]]では1970年代末から[[1980年代]]初頭に掛けて、[[ターボチャージャー]]搭載車両を中心にボンネットにダミースクープが設けられる例が見られ1980年代後半以降はリアフェンダーなどの車体側面に装着された車両が見られた。また、[[日産・シルビア|S12型シルビア]]など、エンジンや補機類エンジルームの高さに収まらない場合にダミースクープを設け高さを稼ぐ場合もあった。
[[File:MitsuStarion.JPG|thumb|ダミースクープの一例([[三菱・スタリオン]])]]
<gallery>
外気を導入する機能の目的とは別に、単なる装飾目的でエアスクープの形状をした部品がボディパネル上に取り付けられる場合もある。こうしたもの単に開口部のみが取り付けられ、実際にはその先は閉されているものがほとんどである。[[日本車]]では1970年代末から[[1980年代]]初頭に掛けて、[[ターボチャージャー]]搭載車両を中心にボンネットにダミースクープが設けられる例が見られた。ターボ車へのインタークーラー装着が一般化した1980年代後半以降は、ボンネットのダミースクープが廃れた一方で、リアフェンダーなどの車体側面に装着された車両が見られた。また、[[日産・シルビア|S12型シルビア]]など、エンジンがネットに収まらない場合などダミースクープを設けボンネットの高さを稼ぐ場合もあった。
File:Ferrari F40 in IMS parking lot.jpg|NACAダクト風エアインテーク([[フェラーリ・F40]]
{{-}}
File:4thLegacy.jpg|ボンネットに設けられたインタークーラー冷却用エアインテーク([[スバル・レガシィB4]])
image:Honda Indy Race Car (MIAS '10).jpg|[[インディカー]]のエアインダクションポッド(2010年仕様
ファイル:1973 pontiac trans am.jpeg|リバースドエアスクープのラムエアーIV(1973年式[[ポンティアック・トランザム]])
File:Gtopetepf3a1.jpg|シェイカースクープ(1974年式[[ポンティアック・GTO]])
File:Mazda_Porter_Cab.jpg|車体前面のベンチレーター([[マツダ・ポーターキャブ]]
File:MitsuStarion.JPG|thumb|ダミースクープ([[三菱・スタリオン]])
</gallery>


== オートバイ ==
== オートバイ ==
[[File:Kawasaki Ninja ZX-10R 2006.jpg|thumb|left|200px|[[カワサキ・ニンジャZX-10R]]では、ヘッドライト上部にラムエアシステム用のインテークが設けられている]]
[[File:Kawasaki Ninja ZX-10R 2006.jpg|thumb|left|200px|[[カワサキ・ニンジャZX-10R]]では、ヘッドライト上部にラムエアシステム用のインテークが設けられている]]
[[ファイル:Kawasaki ZX-6RR 2003TMS.jpg|thumb|200px|2003年式[[カワサキ・ニンジャZX-6R|カワサキ・ZX-6RR]]。ウインドシールド直下の穴がラムエアインテークである。]]
[[ファイル:Kawasaki ZX-6RR 2003TMS.jpg|thumb|200px|2003年式[[カワサキ・ニンジャZX-6R|カワサキ・ZX-6RR]]。ウインドシールド直下の穴がラムエアインテークである。]]
[[オートバイ]]ではエンジン吸気のエアインテークは、異物が進入しにくいシートやタンクの下などの位置に配置される場合や、積極的に空気を取り入れるために車体側面や前面に設けられる場合がある。
[[オートバイ]]ではエンジン吸気のエアインテークは、異物が進入しにくいシートやタンクの下などの位置に配置される場合や、積極的に空気を取り入れるために車体側面や前面に設けられる場合がある。[[カウル]]を持つ[[オートバイ]]にも、エンジンやラジエターから離れたカウル前面に取り入れ口を持つエアスクープを備えた車種があり、後のラムエアインテークへと発展していった


特に[[スーパースポーツ]]タイプやメガスポーツタイプの車種においては、走行風を利用してより多くの空気を取り込み、高速走行時の出力を向上させる'''ラムエアシステム'''が採用されている車種がある。エアインテークはアッパーカウルの下部や[[前照灯|ヘッドライト]]付近などに設けられ、風圧によって空気が吸気管へ流れ込む動きを助ける。
特に[[スーパースポーツ]]タイプやメガスポーツタイプの車種においては、走行風を利用してより多くの空気を取り込み、高速走行時の出力を向上させる'''ラムエアシステム'''が採用されている車種がある。エアインテークはアッパーカウルの下部や[[前照灯|ヘッドライト]]付近などに設けられ、風圧によって空気が吸気管へ流れ込む動きを助ける。

2015年12月3日 (木) 05:50時点における版

エアインテーク英語: air intake)は、空気取り入れる入り口で、エンジンなどの空気を利用する機械の吸気のほか、空気調和機、機器の冷却、室内の換気などの目的で外気を取り入れるための開口部である。エア・インレットair inlet)、あるいは日本語吸気口などとも表記される。形状によってはエアスクープ(: Air Scoop)と呼ばれる場合もある。

概要

エアインテークは機械の外から空気を取り込むための取り入れ口で、特に航空機や自動車などの輸送機械では風圧によりエアインテークへと空気が流れるように成形される場合が多い。より効果的に風圧を利用するために、車体などから突出して開口部を境界層[1]の外に出るように作られたものもある。

移動する乗り物などに生じる風圧を利用して、より効率的に空気を取り込むエアインテークをラムエアインテーク(: ram-air intake)と呼ぶ場合がある。ラムエア(: ram-air)は「衝突する空気」という意味で、空気密度の薄い上空を時速500km/h以上の速度で飛行するジェット機に用いられた。走行風を積極的に利用して吸気管内を流れる空気の抵抗を減らして[2]ポンピングロスを低減できるとして、自動車やオートバイなどような陸上輸送機器の分野にも応用され、レーシングカーや市販のオートバイで採用されている。

航空機

F-16戦闘機のインテーク
胴体およびストレーキ(翼前縁延長部)の下にエアインテークを配置することにより、大きな迎角の飛行状態の際にも安定して空気が取り込まれる。
F-35のインテーク
ミコヤン設計局 MiG-15。典型的なジェットエンジンのラムエアインテーク。

航空機、とりわけジェット機においてはエアインテークの数や配置、形状はエンジン飛行機の性能に大きく影響する要素の1つである。航空機の用途によってエアインテークの設計も異なり、例えば空気の薄い高高度を飛行する航空機やと低高度を飛行する航空機とでは設計が異なる。

近年の戦闘機では、インレットの位置や形状の設計にステルス性も考慮しており、例えば、F-117攻撃機B-2爆撃機では、機体下面のレーダー反射断面積を小さくするために、エアインテークは主翼の上面に開口している。また、レーダー反射を増大させるファンブレードが正面から見えないように単発機でも敢えて左右に取り入れ口を設けたサーブ 39 グリペンF-35といった例がある。F-35ではこれに加え、ダイバータレス超音速インレットと呼ばれる特殊なインテークを使い重量を減らしつつ、ステルス性を向上させている。

航空機ではピトー管が飛行中のラム圧の測定に利用され、大気圧との対比によって航空機の対気速度を測定するのに用いられている。

エンジンへ空気を導入する構造としてのラムエアインテークは、対気速度が高いジェット機では標準的に用いられていて、ラム圧を積極的に利用することはジェットエンジンには不可欠となっている。最高速度の頭打ちの要因となる開口部を減少させて空気抵抗を抑えつつも、より効率の良い吸入空気量を得るために流体力学を駆使したエアインテークの研究は古くから非常に盛んに行われた。そのうちの1つであるNACAダクト(en:NACA_duct)は、陸上の乗り物にも応用されている。

飛行中の吸入空気量を増大させる目的で機首に開口部を持つ空気取り入れ口は、第二次世界大戦前後のレシプロエンジン機にすでに見られたが、大戦中は出力増大の手法としてはスーパーチャージャーやターボチャージャーなど機械的な過給機が主流で、ラムエアインテークの概念のみで過給を行うことはあまり多くはなかった。

流入空気の速度によってエアインテーク(エアインレット)の形状は異なる。以下に代表的な例を挙げる[3]

NACAダクト(en:NACA duct
入口は長方形で、奧に行くにつれて横幅が増える形状を持つ。NACAフラッシュインレット(: flush inlet)、NACAスクープ(: scoop)などとも呼ばれる。NACAはアメリカ航空諮問委員会の略、NASAの前身で翼型などについて多くの基礎的・網羅的研究を行った組織。
ピトー型
ピトー管と同様の形状。ジェット旅客機エンジンの多くがエアインレットにピトー型を採用している。
2次元型
正面から見ると四角形、横から見るとくさび形のような形状で、Dインレットとも呼ばれる。コンコルドのような超音速輸送機や、F-14Su-27といった戦闘機などが採用する形状で、翼の下、胴体の左右に設けられることが多い。
ランプ型(en:Intake_ramp
ランプと呼ばれる板状のものを付加したエアインテーク。上記の2次元型と併用して2次元ランプ型と称する場合が多い。
円錐型
円管の中心から円錐が突き出た形状で、空気は円錐と円管の間から流入する。この円錐をショックコーンと言う。スパイク型、円形、軸対称型などとも呼ばれ、半円などのバリエーションもある。円錐型はMiG-21SR-71など、半円型はF-104などが採用した。

自動車

自動車のエアインテークは、エンジンルームや車室へ空気を取り入れるために車体に設けられた開口部を指す場合と、エンジンの吸気管など、空気を必要とする機器に直接接続された部品を指す場合がある。

エンジンが車体前方に搭載される多くの車種ではフロントグリルからエンジンルームへ空気を取り込むが、エンジンが車体の後ろ寄りに搭載されるミッドシップや車体後部に搭載される車種は、エンジンルームへ外気を導入するために、車体横や後部上面にエアインテークが設けられている。エンジンの吸気管はエンジンルーム内に配置されのが一般的だが、エンジンルーム内の熱の影響を少なくするために吸気管の入り口近くに外気を導入するために、ボンネットに開口部が設けられる場合もあり、フードスクープ(: hood scoop)やボンネットスクープ(: bonnet scoop)と呼ばれる。あるいは、吸気管の入り口の車体から外部に突出させて外気を直接吸入させる場合もあり、エンジンの揺動にあわせて振動することからシェイカースクープ(en:shaker scoop)と呼ばれている。フォーミュラ1インディカーを始め、エンジンが車体後方に搭載されるモータースポーツ車両では、進行方向に開口部設けて走行風圧により積極的に空気を吸気管へと送る円筒形の部品が装備される場合が多く、エアインダクションポッド(: air induction pod)と呼ばれている。市販車両にも走行風圧を利用した吸気管が採用される場合があり、1960年代にポンティアック・GTOなどのディーラーオプションとして設定された。GMの商標でラムエアーと名付けられ、ボンネットに設けられたエアインテークをキャブレターに直接接続する構造構造であった。1970年代のポンティアック・ファイヤーバードの時代にオプション設定されたラムエアーIVでは、フロントウインドウの前方で空気の圧力が高くなることを積極的に利用するために、進行方向とは逆の向きに開口部が設けられたリバースドエアスクープ(: reversed air scoop)から空気を取り入れる構造とされた。あるいはフロントグリルの直近に吸気管の開口部を設けて走行風圧を利用するラムエアインテークの採用例もある。

インタークーラーやオイルクーラー、ブレーキを冷却するために、これらに空気を導くエアインテークが独立して設けられる場合もある。特に、エンジンルーム内の上部にインタークーラーが配置される場合、ボンネットや屋根の後方にエアスクープが設けられる場合がある。

ベンチレーターとして外気を室内に取り込むエアインテークは、多くの車種ではフロントウインドウとボンネットの間のカウルと呼ばれる位置にあり、空力的にこの位置の静圧はほかの部分よりも高いため、開口部が車体進行方向に向いていなくても走行によって空気が流れ込む[4]。これとは別に、車体前面や屋根前方に直接的に外気を導入するエアインテークが採用される例もある。

装飾目的でエアスクープに似せた部品が設けられることもあり、ダミースクープ(: dummy scoop)とも呼ばれている。外気を導入する機能はなく開口部の奥は閉塞されている。日本車では1970年代末から1980年代初頭に掛けて、ターボチャージャー搭載車両を中心にボンネットにダミースクープが設けられる例が見られ、1980年代後半以降はリアフェンダーなどの車体側面に装着された車両が見られた。また、S12型シルビアなど、エンジンや補機類がエンジンルームの高さに収まらない場合にダミースクープを設けて高さを稼ぐ場合もあった。

オートバイ

カワサキ・ニンジャZX-10Rでは、ヘッドライト上部にラムエアシステム用のインテークが設けられている
2003年式カワサキ・ZX-6RR。ウインドシールド直下の穴がラムエアインテークである。

オートバイではエンジン吸気のエアインテークは、異物が進入しにくいシートやタンクの下などの位置に配置される場合や、積極的に空気を取り入れるために車体側面や前面に設けられる場合がある。カウルを持つオートバイにも、エンジンやラジエターから離れたカウル前面に取り入れ口を持つエアスクープを備えた車種があり、後のラムエアインテークへと発展していった。

特にスーパースポーツタイプやメガスポーツタイプの車種においては、走行風を利用してより多くの空気を取り込み、高速走行時の出力を向上させるラムエアシステムが採用されている車種がある。エアインテークはアッパーカウルの下部やヘッドライト付近などに設けられ、風圧によって空気が吸気管へ流れ込む動きを助ける。

オートバイにも走行風圧を積極的に利用してエンジン出力を向上させるエアインテークを装備する車種があり、ラムエアシステムフォースドエアインテーク (: foreced air intake)とも呼ばれる[5]

1980年代初頭には電子式燃料噴射装置とターボチャージャーを搭載する車種もいくつか存在したが、自動車とは対照的にほとんど普及しなかった。その後、1980年代のレーサーレプリカに分類される車種で、エンジンや排気系の熱を受けにくいカウル正面から吸気を導入するダクトが採用されるようになった。1990年代後半に、ラムエアシステムが市販車に採用されるようになった。

ラムエアインテークの効果は低速域では出力向上の効果はほとんどなく、ターボチャージャーやスーパーチャージャーほどの過給効果は見込めない。

脚注

  1. ^ 物体の表面に付近にある流れの遅い領域
  2. ^ AutoExe:機能別商品情報”. 株式会社オートエグゼ. 2014年3月28日閲覧。
  3. ^ Raymer, Daniel P. (1999) (English). Aircraft Design: A Conceptual Approach, 3rd ed.. Reston, Verginia: American Institute of Aeronautics and Astronautics, Inc.. pp. pp.236-256. ISBN 1-56347-281-3 
  4. ^ ベンチレーター(venitilator)”. 株式会社プロトコーポレーション. 2015年12月3日閲覧。
  5. ^ バイク用語辞典”. ヤマハ発動機株式会社. 2014年4月17日閲覧。

参考文献

関連項目