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「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」の版間の差分

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== 問題点:障害者自立支援法による福祉現場への影響 ==
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===2006年9月〜現在===
===2006年9月〜現在===
障害者自立支援法は、2006年4月から利用者負担の見直しが既に実施されており、2006年10月から新たな施設・事業体系への移行などを含め完全実施されている。しかし、公式に表明されているこの法律の狙いとは異なり、急激な制度変化によって、障害者福祉の現場に問題が発生している。現場では利用者の負担増→障害者の施設利用中止→施設への補助金が減る→サービスの低下、施設の閉鎖→利用者の行き場がなくなる、という悪循環が生じ、同法の理念に逆行するとの批判があり、「障害者自立『阻害』法」、「心中支援法」等と、批判する声もある。そのため、障害者団体から同法の見直し等を求める声がでている。
障害者自立支援法は、2006年4月から利用者負担の見直しが既に実施されており、2006年10月から新たな施設・事業体系への移行などを含め完全実施されている。しかし、公式に表明されているこの法律の狙いとは異なり、急激な制度変化によって、障害者福祉の現場に問題が発生している。現場では利用者の負担増→障害者の施設利用中止→施設への補助金が減る→サービスの低下、施設の閉鎖→利用者の行き場がなくなる、という悪循環が生じ、同法の理念に逆行するとの批判があり、「障害者自立『阻害』法」、「心中支援法」等と、批判する声もある。そのため、障害者団体から同法の見直し等を求める声がでている。

2009年6月16日 (火) 08:38時点における版

障害者自立支援法
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 なし
法令番号 平成17年法律第123号
種類 社会保障法
効力 現行法
成立 2005年10月31日
公布 2005年11月7日
施行 2006年4月1日
主な内容 障害者の自立に向けた支援
関連法令 身体障害者福祉法知的障害者福祉法精神保健福祉法児童福祉法
条文リンク 総務省法令データ提供システム
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障害者自立支援法(しょうがいしゃじりつしえんほう)とは、「障害者及び障害児がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができる」ようにすることを目的とする日本法律である。

従来の制度と比較して、障害に対する継続的な医療費の自己負担比率が、5%から10%に倍増した。狙いは、少子高齢化社会に向け、従来の支援費制度に代わり、障害者に費用の原則1割負担を求め、障害者の福祉サービスを一元化し、保護から自立に向けた支援にある。

2005年(平成17年)10月14日参議院本会議を通過。同年10月31日衆議院本会議において自由民主党公明党の賛成多数により可決、成立。2006年(平成18年)4月1日に一部施行、同年10月1日に本格施行。

法律立案者のねらい

  1. 障害者の福祉サービスを「一元化」
    サービス提供主体を市町村に一元化。障害種別(身体障害知的障害精神障害)にかかわらず障害者の自立支援を目的とした共通の福祉サービスは共通の制度により提供。
  2. 障害者がもっと「働ける社会」に
    一般就労へ移行することを目的とした事業を創設するなど、働く意欲と能力のある障害者が企業などで働けるよう、福祉側から支援。
  3. 地域の限られた社会資源を活用できるように「規制緩和
    市町村が地域の実情に応じて障害者福祉に取り組み、障害者が身近なところでサービスを利用できるよう、空き教室や空き店舗の活用も視野に入れて規制を緩和する。
  4. 公平なサービス利用のための「手続きや基準の透明化、明確化」
    支援の必要度合いに応じてサービスを公平に利用できるよう、利用に関する手続きや基準を透明化、明確化する。
  5. 増大する福祉サービス等の費用を皆で負担し支え合う仕組みの強化
    1. 利用したサービスの量や所得に応じた「公平な負担」
      障害者が福祉サービス等を利用した場合に、食費等の実費負担や利用したサービスの量等や所得に応じた公平な利用者負担を求める。
    2. 国の「財政責任の明確化」
      福祉サービス等の費用について、これまで国が補助する仕組みであった在宅サービスも含め、国が義務的に負担する仕組みに改める。

法律の概要

自立支援給付

  • 介護給付費 - 9割給付1割原則自己負担
    • 居宅介護
      • 障害者等につき、居宅において入浴、排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与すること
    • 重度訪問介護
      • 重度の肢体不自由者であって常時介護を要する障害者につき、居宅における入浴、排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜及び外出時における移動中の介護を総合的に供与すること
    • 行動援護
      • 知的障害又は精神障害により行動上著しい困難を有する障害者等であって常時介護を要するものにつき、当該障害者等が行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護、外出時における移動中の介護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与すること
    • 療養介護(医療に関するものは除く)
      • 医療を要する障害者であって常時介護を要するものとして厚生労働省令で定めるものにつき、主として昼間において、病院その他の厚生労働省令で定める施設において行われる機能訓練、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び日常生活上の世話の供与
    • 生活介護
      • 常時介護を要する障害者として厚生労働省令で定める者につき、主として昼間において、障害者支援施設その他の厚生労働省令で定める施設において行われる入浴、排せつ又は食事の介護、創作的活動又は生産活動の機会の提供その他の厚生労働省令で定める便宜を供与すること
    • 児童デイサービス
      • 障害児につき、肢体不自由児施設その他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、日常生活における基本的な動作の指導、集団生活への適応訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与すること
    • 短期入所
      • 居宅においてその介護を行う者の疾病その他の理由により、障害者支援施設その他の厚生労働省令で定める施設への短期間の入所を必要とする障害者等につき、当該施設に短期間の入所をさせ、入浴、排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与すること
    • 重度障害者等包括支援
      • 常時介護を要する障害者等であって、その介護の必要の程度が著しく高いものとして厚生労働省令で定めるものにつき、居宅介護その他の厚生労働省令で定める障害福祉サービスを包括的に提供すること
    • 共同生活介護
      • 障害者につき、主として夜間において、共同生活を営むべき住居において入浴、排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与すること
    • 施設入所支援
      • その施設に入所する障害者につき、主として夜間において、入浴、排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与すること
  • 特例介護給付費 - 9割給付1割原則自己負担
  • 訓練等給付費 - 9割給付1割原則自己負担
    • 自立訓練
      • 障害者につき、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、厚生労働省令で定める期間にわたり、身体機能又は生活能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与すること
    • 就労移行支援
      • 就労を希望する障害者につき、厚生労働省令で定める期間にわたり、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与すること
    • 就労継続支援
      • 通常の事業所に雇用されることが困難な障害者につき、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与すること
    • 共同生活援助
      • 地域において共同生活を営むのに支障のない障害者につき、主として夜間において、共同生活を営むべき住居において相談その他の日常生活上の援助を行うこと
  • 特例訓練等給付費 9割給付1割原則自己負担
以下のサービスにおいて食事の提供に要する費用、居住若しくは滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用又は創作的活動若しくは生産活動に要する費用で厚生労働省令で定める費用は支給対象外
  • サービス利用計画作成費
  • 高額障害福祉サービス費
  • 特定障害者特別給付費(一部施設入所者のうち低所得者に対し食費及び家賃を支給する制度)
  • 特例特定障害者特別給付費
  • 自立支援医療費 - 9割給付1割原則自己負担 (食事療養・生活療養については通常生活において必要な費用は除く)
  • 療養介護医療費 - 9割給付1割原則自己負担 (食事療養・生活療養については通常生活において必要な費用は除く)
  • 基準該当療養介護医療費 - 9割給付1割原則自己負担 (食事療養・生活療養については通常生活において必要な費用は除く)
  • 補装具費 - 9割給付1割原則自己負担 所得制限あり

地域生活支援事業

市町村が行うものとされている事業
  1. 障害者等が障害福祉サービスその他のサービスを利用しつつ、その有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、地域の障害者等の福祉に関する各般の問題につき、障害者等、障害児の保護者又は障害者等の介護を行う者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言その他の厚生労働省令で定める便宜を供与するとともに、障害者等に対する虐待の防止及びその早期発見のための関係機関との連絡調整その他の障害者等の権利の擁護のために必要な援助を行う事業
  2. 聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等その他の日常生活を営むのに支障がある障害者等につき、手話通訳等(手話その他厚生労働省令で定める方法により当該障害者等とその他の者の意思疎通を仲介することをいう。)を行う者の派遣、日常生活上の便宜を図るための用具であって厚生労働大臣が定めるものの給付又は貸与その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する事業
  3. 移動支援事業
  4. 障害者等につき、地域活動支援センターその他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、創作的活動又は生産活動の機会の提供、社会との交流の促進その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する事業
都道府県が行うものとされる事業
地域生活支援事業として、相談業務等のうち、特に専門性の高い相談支援事業その他の広域的な対応が必要な事業として厚生労働省令で定める事業を行うものとする。

退院支援施設

日本の精神病棟は世界的にも多く、他国と比べると異例である。精神障害者の中には長期入院が続き、中には社会的な入院患者もいる。そういった人たちのための、退院支援施設を作ることになった。また、施設は病棟の外部だけではなく、内部にも作れる。「これは社会的入院患者を覆い隠す手段だ」と、多くの障害者団体からの反対を受けているが、2007年4月1日から施行された。

ピアサポート強化事業

当事者組織や当事者の関係できる部分を市区町村単位で助成する仕組み。

手続

介護給付費や訓練等給付費等市町村に対して申請して支給決定を受ける必要があり、審査会における判定に基づいて障害判定区分を認定し、その障害判定区分、その障害者等の介護を行う者の状況、障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向等を勘案して支給の要否を決定する。なお、これらの処分に不服がある者は都道府県知事に審査請求をすることができ、都道府県は不服審査会を設けることができる。これらの処分についての取消訴訟は審査請求に対する裁決を経た後でなければ、提起することができない(審査請求の日から3ヶ月を経ても裁決が出されない場合等は訴訟を提起できる)。

多くの病院において、手続に必要な書類は「申請書」「診断書」「健康保険証」「所得の状況を確認できるもの」と案内されているが、「所得の状況を確認できるもの」は住民税の支払額に関する資料であり、源泉徴収票などでは手続きを拒否されるケースが多い。本法律施行時に現場レベルでの混乱を避けるために、「所得の状況を確認できるもの」がなくとも「一定以上の所得がある」とみなして手続きを行い、「みなし」であることの説明がされないケースが多かったため受給者の間に誤解が生じており、法律施行後1年を経た2007年上旬現在、更新手続においてのトラブルが見受けられる。

問題点:障害者自立支援法による福祉現場への影響

2006年9月〜現在

障害者自立支援法は、2006年4月から利用者負担の見直しが既に実施されており、2006年10月から新たな施設・事業体系への移行などを含め完全実施されている。しかし、公式に表明されているこの法律の狙いとは異なり、急激な制度変化によって、障害者福祉の現場に問題が発生している。現場では利用者の負担増→障害者の施設利用中止→施設への補助金が減る→サービスの低下、施設の閉鎖→利用者の行き場がなくなる、という悪循環が生じ、同法の理念に逆行するとの批判があり、「障害者自立『阻害』法」、「心中支援法」等と、批判する声もある。そのため、障害者団体から同法の見直し等を求める声がでている。

障害者の急激な自己負担の増加

  • 応能負担(福祉サービスを利用する際に、所得に応じて利用料を負担すること。)から応益負担(福祉サービスを利用する際に、所得とは関係なく一律定率で負担すること。定率負担とも言う。)への移行による障害者の経済的負担増。従来は所得に応じ極めて低い負担で済んだが、介護保険制度と同様の原則1割の自己負担となった。
応益負担の裏付けの為、同法では障害者の就労支援を謳っているものの、就労支援の方は一部企業を除き、遅々として進んでいない。また、多様なサービス(つまり多額の利用費)を要する重度障害者ほど就労など、所得確保の機会が少ない傾向にあり、負担が先行しているのが現状と言える。
  • 通所施設の利用料負担-作業所等の通所施設を利用すると、作業に対する報酬として、平均で見ると月額約1万円程度の「工賃」(厳密には労働に対する賃金とは異なる。)が支給される。従来、通所施設の利用料は一部の施設を除きゼロであった為、支給される工賃を小遣いにすることをはげみに、「働きがい」を感じる通所障害者が多かった。ところが、自立支援法の施行後は、市県民税課税世帯で月約3万円の利用料と食費が請求されることとなり、結果として作業所等で働くために、差引き2万円の自己負担が発生するようになる本末転倒の状況が発生している(一部の施設では、自己負担分を施設の内部留保から持ち出しをしたり、自己負担を免除しているところがある。)。このことは月額約66,000円(2級の場合。1級の場合は月額約82,000円が2ヶ月毎に入ってくる)の障害年金と作業所からの工賃に収入源が限られている通所障害者にとっては痛手であり、少なくない障害者が「働きがい」を失い、または、自己負担に耐えられないために、通所施設の利用を中止するようになっている。これでは、引きこもり生活の質の低下に繋がりかねないと懸念されている。
無論、中には障害年金以上の額の工賃を得ることができる作業所もあるが、その多くが軽度の障害者で構成された作業所であり、比較的需要の多い都市部である。作業内容が限られてしまう重度障害者の場合は1万円にも満たない工賃しか得ることができず、大きな問題となっている。これについて政府において暫定的な措置を講じるとしているものの恒久的なものとなっておらず、依然として問題は残っている。
負担増への批判に対しては日本の財政難もあり、伸び続ける福祉の費用を賄い、制度を持続可能なものにして行くには、自己負担は避けられないとの意見もある。
  • 精神障害者の精神疾患に関する通院医療は、以前は精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第32条(通院医療費公費負担制度)によって0.5割の負担(一部自治体は異なる。後述)であった。障害者自立支援法によって、世帯所得による上限はあるものの、基本的には1割負担となり負担増となった。

現場の実情から乖離した施設基準による障害者施設の経営困難や廃止

  • 障害者施設はこれまで登録人数に応じて補助金を受けてきた。今回、障害者自立支援法により、報酬単価設定に当たっては利用率94.5%を想定して、金額が設定された。しかし、実際の現場を見ると、精神障害者通所施設では利用率は60%程度が多く、実情と乖離している。この為、収入が減少して、経営困難に陥る所もある。激変緩和措置として、利用率80%とみなして補助金を支払う措置はあるが、それでも不十分な水準であり、施設の経営は困難となっており、施設職員の給与引き下げや人員削減が多く見られている。これに対しては、施設の一層の経営努力や施設間競争も必要ではないかとの意見もある。
  • また、利用日数に応じて補助金が支払われる仕組みとなった。つまり、帰宅(外泊)や入院をすると施設を利用していないということで施設への報酬が減ってしまう。その為、中には止むを得ず帰宅を減らすように利用者とその家族に協力してもらっている入所施設もある。結果として施設存続の為に利用者が存在し、帰宅もままならなくなるという「自立」とは正反対の実態も浮かび上がっている。一方、日割り計算によって利用者側も帰宅をすることで利用費が抑えられるのだが、帰宅を増やすと施設そのものが無くなってしまうと言う危機感から帰宅を手控える、つまり利用費を負担せざるを得なくなっている。
通所施設の場合も出来高払い(実際の利用者の障害程度と人数×利用日数)で支払われるようになった。利用予定日に利用者が休んだ場合、その分報酬が減ってしまうため、その日の職員の出勤数に対する報酬が少なく、赤字となってしまうことも少なくない。
入所、通所限らず、お盆の時期、年末年始は帰宅、利用を控える場合が多いため、8月、12月〜翌年1月の収入は激減してしまう。また、月単位で同じ利用状況=同じ報酬であったとしても、利用者が別々に一日ずつ利用をしない場合と利用者全員が同じ日に1日利用しない場合とでは職員の配置が大きく変わってしまう。当然、前者のほうが職員の人件費が掛かってしまうが、そういった状況に対する救済措置は現在採られていない。
  • グループホームの設置基準は、6人規模が標準とされ、それより少人数のグループホームは経営が成り立たなくなった。この為、栃木県佐野市社会福祉法人「ブローニュの森」が精神障害者のグループホーム4カ所(31人分)を閉鎖する方針を固めるなど、閉鎖する施設が現れている。
  • 利用者による利用料の未納が増え、経営を圧迫するとの指摘もある。しかし、収入が決して多いとはいえない障害者から徴収出来るのか、サービス停止により利用者の行き場がなくなる、更に生活を圧迫させるのではないかと言う視点から、二の足を踏まざるを得ない。
  • 同法第29条及び介護給付費等の請求に関する省令(厚生労働省令第170号)の規定により、2007年10月から市町村が行う事業者への介護給付費や訓練等給付費の支払い業務が全面的に国民健康保険団体連合会に委託された。これにより、事業者は受給者が在住する市町村ごとに請求書(紙)を送付していたものが、インターネットを使用した国民健康保険団体連合会への電子請求へと切り替わることとなった。市町村の請求窓口が一本化されることにより事業者の請求事務の軽減化が図れるはずであったが、国民健康保険団体が作成し事業者に配布した電子請求ソフトやシステムに不備・不具合があり、請求データの送信ができない事業所が多く発生してしまった。また、市町村が入力・管理する受給者台帳や、都道府県が入力・管理する事業者台帳に多くの誤入力があり、正しい請求データを送信できた場合でもエラーとされる事態が続出した。多くの事業所で正しい給付費が支払われない事態が起こっており大混乱となっている。厚生労働省は介護給付費等の請求に関する省令の附則第2条の規定により、電子請求以外の請求方法は原則認めない方針を打ち出しており、この混乱は長期化する恐れがある。

障害程度区分の研究や準備不足の問題

  • サービスを受けるための障害程度区分の判定基準は、介護保険制度における高齢者の判定基準をそのまま使用し、障害者での調査や研究は行われていない。この為、脳卒中などとよく似た身体的な障害がある場合には、障害の程度は比較的的確に判定されるが、身体的な障害のない知的障害精神障害の場合には、障害の程度が重度であるのに、「身辺自立している」として軽度と判定され、必要なサービスが受けられなくなるのではないかと懸念されている。特に入所サービスの場合、7段階の判定(0~6)で4以上ないと受けられず、身体的な「介助」よりも精神的な「見守り」が必要な知的・精神障害者の入所は厳しいとの見方がある。2006年現在は判定度が低くても経過措置で継続して入所サービスを受けられるが、経過措置が過ぎるとサービスを受けられなくなってしまう。
障害の程度によって受けられるサービスが異なってしまうため、入所、デイサービスの利用によって自立度が高まると高度のサービスを受けられなくなってしまうジレンマが生じてしまう。特に日常生活のことは自立できているが、社会的な自立が困難な障害者にはその影響が大きい。
  • これに対しては、介護保険判定における痴呆度の二次判定による修正実績などが既にあるため、対応可能との意見もある。また、千葉県我孫子市では知的・精神的障害者への判定をより的確にするため、3品以上の買い物が自力で出来るか、危険に対しての認知、回避は出来るか等、独自の判定基準を設けている。ただ、サービスを利用しているからこそ状態が安定する障害者や程よい家族関係を保てるケースも有り、そこまで考慮されるかについては悲観的にならざるを得ない。
  • 障害程度区分の判定において、判定度が高いほど高い報酬が施設に支払われる仕組みになっている。その為、入所が適当と判定されても報酬・利用費以上の負担(金銭的・身体的・精神的等)が見込まれる場合は入所を拒まれる等、経営環境が厳しくなる施設側による利用者の選りすぐりが懸念される。同様に、判定度が4の場合入所利用が継続して可能であるが、報酬が少ないため入所を拒まれるケースも想定される。
  • そもそも、区分によって受けられるサービスに制限が掛かってしまうことは、障害者自身が必要なサービスを受ける自己決定権を奪っているとの批判もある。

地方自治体の独自補助とそれによる地域格差の拡大

  • 以上のような障害者自立支援法によってもたらされた障害者福祉の変化を緩和するために、障害者対策に熱心な首長がいる自治体や、財政的に豊かな自治体では、自己負担や施設の経営難に対する独自の補助が開始された。一方こうした補助のない自治体も少なくない。この為、自治体間での格差が発生している。
  • 従前の精神障害者の通院医療費公費負担制度による0.5割の負担について、東京都など一部の自治体では独自の補助によって自己負担分が全額補助されていた。自立支援法施行後の1割負担についても、1割負担分を自治体が独自に補助する地域がある。例えば、大阪府国民健康保険加入を条件として1割負担分を府が補助する。つまり、自立支援法施行前からあった地域ごとの負担格差が施行後さらに拡大し、自立支援法が掲げる「公平な負担」という目標に逆行すると言う結果となっている。
  • 施設入所している障害児においては利用料は従来どおり無料の「措置」と利用費を払わなければならない「契約」に分かれたが、自治体(児童相談所)によっては措置扱いを積極的に行う自治体とそうでない自治体の格差が激しい(詳しくは後述)。
  • もっとも、自治体間格差の問題は、地方自治に関する別次元の問題が強く関係する。つまり、この問題の議論の為には、地方の財政状態や財源に関する近時の改革(三位一体改革参照)の行方なども併せて考慮する必要がある。

障害児入所施設における問題

  • 障害児入所施設においては児童福祉法の改正に合わせ、2006年10月1日より同法の適用となった。それ以前は児童相談所が入所が適当がどうか判定していたのだが
  • 保護者の経済的な理由、家庭の事情(保護者に養育能力がない)
  • 家庭での養育を続けた場合、親子関係の維持が困難になる           
  • 当該児の障害が重い
  • 養育できる(すべき)人がいない
  • 当該児に虐待、ネグレクト(育児放棄・養育放棄)の疑いがある
等の理由のため「家庭での養育が困難」として、入所判定が出た児童は全員児童福祉の観点から「措置入所」という扱いを受け、入所にかかる費用、学校教材費、医療費がほぼ無料であった。しかし、同法適用に伴い、児童相談所の再判定により「措置継続」と「契約利用」に分かれた。契約利用においては成人施設同様、利用料を払っての入所となり、医療費等も原則負担となる(自治体によっては補助、あるいは指定病院は無料という形もある)。同一施設内で同じように暮らしているにもかかわらず、医療費も含め利用料を払わざるを得ない家庭と払わなくてもすむ家庭が混在することに両者の軋轢、職員の予算執行に関わる職務の増大が懸念される。また、デイサービスなど施設利用、あるいは何らかのサービスを受けている在宅障害児においても負担が増えた。
  • また、措置の基準が厚生労働省より示されているものの明確ではなく、結果、判断する児童相談所の多くが当該児との面会や家庭環境調査等を行わず措置と契約に分けたため施設、保護者の混乱や判定のバラつきが見られる。
  • そもそも所得がなく、保護者による「保護」が必要な児童全般において、障害児も障害者と同じように利用の際は対価を支払うという自立支援法の枠組みに組み込まれ、「自立」を促されるようになった(2006年10月1日の児童福祉法改正により、児童福祉施設の中で障害児施設のみが入所にかかる実費負担が必要になった)というのは児童福祉の観点から大きく逸脱するものとして関係者から非難の声が上がっている。
  • 虐待、ネグレクトされている疑いのある児童の場合、措置継続になる可能性が高いが、その一方、熱心に保護者が面会・外泊など行い、施設入所させているものの非常によくコンタクトを取る家庭であっても契約利用となっている。子供に対し無関心な親は無料で、真剣に考えている親は有料であることに不公平感が生じるケースもある。こうした問題点から「児童福祉の理念に反している。障害児は児童じゃないのか。」等の声が現場関係者、保護者から挙がっている。
  • もっとも、入所児童の利用負担に対し、以前は保護者の経済力、家庭の状況に関わりなく利用費、医療費、学費がほぼ無料であったことから、在宅で障害児を看ている家庭からすると負担面で相当優遇されていたことから、(不本意な形とはいえ)ある程度是正されたという見方も出来なくはない。
  • 過齢児の問題
障害児施設は児童福祉施設であり、18歳以上(慣例として高校・高等部卒業まで、通所利用の場合は大抵18歳になった時点で利用出来なくなるケースが多い)の継続入所が原則認められていないのだが、成人施設が見つからない等、次の進路が決まらない場合、暫定的に継続して入所サービスを受けている場合もある。そのような「過齢児」は少なくなく、施設によっては大半を過齢児が占め、児童施設として成り立たないでいる所もある(児童施設は通常、学校があるため、登校日の職員の配置を薄くしているが、加齢児がいることで児童・加齢児双方の支援体制が十分に取れなくなってしまうケースがある)。
同法成立により、入所サービスを受ける基準が厳しくなった為、過齢児の次の進路決定がさらに厳しくなると見られる。その結果、児童施設であるにもかかわらず18歳以上の利用者が残り続け、18歳未満の障害児の利用も困難になっていくという可能性もあり、スムーズに過齢児の次の進路が見つかるような方策が必要と思われる。
また、次の進路が決まった18歳以上の障害者についても、20歳まで障害年金が支給されない為、それまでの経費負担が増大するケースもある。特に就労が困難な障害者の場合は保護者の経済力が頼りとなってしまう。

対象外障害者問題

  • 「障害者自立支援法」と言えども全ての障害者が対象では無く、現段階では三障害(身体・知的・精神)のみである。この三障害に該当しない人達、発達障害情緒障害等の人達で、単一障害者は支援されないケースが目立つ。三障害以外の人達で重複障害がある人は適用となるが、現在、対象外にも支援の手を差し伸べて欲しいと、障害者団体を通じ国に働き掛けをしている所である。

以上のような問題点がある為、2006年秋の第165回国会には、民主党から、自己負担1割の凍結を柱にした改正案が提出され、地方自治体や地方議会からも、見直しを求める意見書の提出も相次いでいる。更に、法案に賛成した障害者中央5団体も、大幅な見直しを与党に要求するに至っている。これらを受けて、2006年11月下旬には、与党の自民党・公明党が利用者負担の見直しに合意する等、10月の本格施行から2ヶ月を待たずして、障害者自立支援法は大幅な見直しが行われる見通しとなった。 2006年12月1日には自民、公明両党は増大する負担軽減のため、2008年度末まで1200億円の予算請求をすることで合意し、障害者だけではなく経営環境が厳しくなった事業者等の支援にも充てられる。 しかし、両党は障害者自立支援法そのものの見直しを行う気はないとしており、問題点は根本から解決に向かうわけではない。

法案成立までの経緯

第162回通常国会
2005年2月10日、衆議院に提出、審議が始まる。衆院審議の過程で与党が修正提案を行い、修正後の7月13日に衆議院本会議で可決された。この時、与党は賛成したが野党は反対した(附帯決議は全会一致で可決)。そのまま参議院に送られ、審議が開始されたが、8月8日に衆議院が解散したため、参議院での審議未了のまま廃案となった。
第162回通常国会における法案に対する衆議院修正には、次のようなものがある。
  • 目的規定の修正
    この法律による障害福祉サービスに係る給付その他の支援は、障害者基本法の基本的理念にのっとり行われることが法律の目的規定に明記された。
  • 自立支援医療の施行期日の変更
    自立支援医療に関する規定の施行期日が、2005年10月1日から2006年1月1日に変更された。
  • 検討
    この法律の施行後3年を目途として行われるこの法律の規定についての検討に、障害者等の範囲の検討を含むことを明記し、さらに就労の支援を含めた障害者等の所得の確保に係る施策の在り方についての検討規定を追加することが検討された。
第163回特別国会
2005年10月4日、参議院に提出、審議が始まる。10月14日に参議院本会議で、10月31日に衆議院本会議で可決され、法案が成立した。
第162回通常国会に提出された法案からの変更点は、次のようなものである。
  • 目的規定の修正
    「障害者基本法の基本的理念にのっとり」という文が追加された。
  • 検討規定の修正、追加
    「障害者等の範囲」について検討することが明記され、「障害者等の所得の確保」に係る検討規定が新たに追加された。
  • 施行期日の変更
    利用者負担に係る改正事項について、施行日が2006年1月1日から4月1日に変更された。

関連項目

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