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== 事件経緯 ==
== 事件経緯 ==
Aは事件当時、室蘭市[[白鳥台 (室蘭市)|白鳥台]]一丁目<ref name="北海道新聞20010607"/><ref name="読売新聞20010318"/>の団地で家族とともに暮らしていた{{Sfn|片岡健|2024|p=29}}。知人たちによればAは成績優秀で友人も多く、また可愛らしい風貌と評されており、中学生のころはファンクラブも結成されていたという{{Sfn|片岡健|2024|p=30}}。また事件当時は、自宅近くにあったパン屋の支店でアルバイトをしていた<ref name="北海道新聞20010607"/>{{Sfn|片岡健|2024|p=32}}。Aが事件当時在学していた室蘭栄高校は2001年3月5日に期末試験を終え、Aが失踪した6日からは入試などのため3連休になっていた<ref name="読売新聞20010318">『読売新聞』2001年3月18日東京朝刊札幌社会面35頁「室蘭で高1女子が行方不明 買い物帰り?6日から=北海道」(読売新聞北海道支社)</ref>。失踪当時のAの服装は、ベージュのブレザーと紺のジーンズ、チェックのマフラーで、ピアスと銀の指輪を着けていた<ref name="読売新聞20010318"/>。また靴は緑色の革靴(サイズは23.5&nbsp;cm)である<ref name="読売新聞20010318"/>。
Aは事件当時、室蘭市[[白鳥台 (室蘭市)|白鳥台]]一丁目<ref name="北海道新聞20010607"/><ref name="読売新聞20010318"/>の団地で家族とともに暮らしていた{{Sfn|片岡健|2024|p=29}}。知人たちによればAは成績優秀で友人も多く、また可愛らしい風貌と評されており、中学生のころはファンクラブも結成されていたという{{Sfn|片岡健|2024|p=30}}。また事件当時は、自宅近くにあったパン屋の支店でアルバイトをしていた<ref name="北海道新聞20010607"/>{{Sfn|片岡健|2024|p=32}}。Aが事件当時在学していた室蘭栄高校は2001年3月5日に期末試験を終え、Aが失踪した6日からは入試などのため3連休になっていた<ref name="読売新聞20010318">『読売新聞』2001年3月18日東京朝刊札幌社会面35頁「室蘭で高1女子が行方不明 買い物帰り?6日から=北海道」(読売新聞北海道支社)</ref>。失踪当時のAの服装は、ベージュのブレザーと紺のジーンズ、チェックのマフラーで、ピアスと銀の指輪を着けていた<ref name="読売新聞20010318"/>。また靴は緑色の革靴(サイズは23.5&nbsp;[[センチメートル|cm]])である<ref name="読売新聞20010318"/>。


Aは失踪当日の6日昼過ぎ、白鳥台一丁目の自宅から外出し<ref name="読売新聞20010318"/>、近くの「白鳥台中央」バス停({{ウィキ座標|42.37818714232241|||N|140.93971200312936|||E||座標}})で12時30分発の市街地ターミナル行きバスに乗車する姿を友人に目撃されている<ref name="読売新聞20210305">『読売新聞』2021年3月5日北海道朝刊社会B面26頁「室蘭の○○○○さん不明 足取りつかめず20年 道警「どんな情報でも寄せて」=北海道」(読売新聞北海道支社 牟田口輝)</ref>。この外出は、自宅から約7.5&nbsp;[[キロメートル|km]]離れた室蘭市[[知利別町]]にあるパン屋の本店で<ref name="北海道新聞20010607"/>、オーナーからコーヒーの淹れ方を教えてもらうことが目的であり、Aは昼前に「午後1時過ぎに店に行きます」と電話していた{{Sfn|片岡健|2024|p=30}}。しかしAの自宅近くのバス停からは、パン屋の本店近くまで直行するバスがあるにもかかわらず、Aは遠回りになるバスに乗ってり、その不自然さが指摘されている{{Sfn|鈴木毅|2001|p=151}}。Aは13時5分に「東町2丁目」バス停({{ウィキ座標|42.34579142938331|||N|141.02601398421982|||E||座標}})で下車したものの<ref name="読売新聞20210305"/>、約束の時間である同日13時にはパン屋の本店には現れず{{Sfn|片岡健|2024|p=30}}、同店から約1.5&nbsp;km離れた<ref>『北海道新聞』2017年3月6日朝刊第16版第3社会・小説面28頁「【室蘭】女子高生不明16年 情報提供呼びかけ」(北海道新聞社) - 縮刷版266頁。</ref>同市[[東町 (室蘭市)|東町]]の「室蘭[[サティ (チェーンストア)|サティ]]」({{ウィキ座標|42.34507628416519|||N|141.02619736979202|||E||座標}}、現:[[イオン (企業)|イオン]]室蘭店)化粧品売り場にいたことが確認されている<ref name="読売新聞20210305"/>。同日13時4分と同26分には、それぞれ店内に設置された防犯カメラ映像にAの姿が記録されているが<ref>『読売新聞』2006年2月27日北海道夕刊社会面13頁「室蘭の女子高生不明から5年 直前の映像初公開 室蘭署=北海道」(読売新聞北海道支社)</ref>、このようにパン屋本店を訪ねる約束の時間にAがサティにいた理由は不明である{{Sfn|片岡健|2024|p=31}}。
Aは失踪当日の6日昼過ぎ、白鳥台一丁目の自宅から外出し<ref name="読売新聞20010318"/>、近くの「白鳥台中央」バス停({{ウィキ座標|42.37818714232241|||N|140.93971200312936|||E||座標}})で12時30分発の市街地ターミナル行きバスに乗車する姿を友人に目撃されている<ref name="読売新聞20210305">『読売新聞』2021年3月5日北海道朝刊社会B面26頁「室蘭の○○○○さん不明 足取りつかめず20年 道警「どんな情報でも寄せて」=北海道」(読売新聞北海道支社 牟田口輝)</ref>。この外出は、自宅から約7.5&nbsp;[[キロメートル|km]]離れた室蘭市[[知利別町]]にあるパン屋の本店で<ref name="北海道新聞20010607"/>、オーナーからコーヒーの淹れ方を教えてもらうことが目的であり、Aは昼前に「午後1時過ぎに店に行きます」と電話していた{{Sfn|片岡健|2024|p=30}}。しかしAの自宅近くのバス停からは、パン屋の本店近くまで直行するバスがあるにもかかわらず、Aは遠回りになるバスに乗ってり、その不自然さが指摘されている{{Sfn|鈴木毅|2001|p=151}}。Aは13時5分に「東町2丁目」バス停({{ウィキ座標|42.34579142938331|||N|141.02601398421982|||E||座標}})で下車したものの<ref name="読売新聞20210305"/>、約束の時間である同日13時にはパン屋の本店には現れず{{Sfn|片岡健|2024|p=30}}、同店から約1.5&nbsp;km離れた<ref>『北海道新聞』2017年3月6日朝刊第16版第3社会・小説面28頁「【室蘭】女子高生不明16年 情報提供呼びかけ」(北海道新聞社) - 縮刷版266頁。</ref>同市[[東町 (室蘭市)|東町]]の「室蘭[[サティ (チェーンストア)|サティ]]」({{ウィキ座標|42.34507628416519|||N|141.02619736979202|||E||座標}}、現:[[イオン (企業)|イオン]]室蘭店)化粧品売り場にいたことが確認されている<ref name="読売新聞20210305"/>。同日13時4分と同26分には、それぞれ店内に設置された防犯カメラ映像にAの姿が記録されているが<ref>『読売新聞』2006年2月27日北海道夕刊社会面13頁「室蘭の女子高生不明から5年 直前の映像初公開 室蘭署=北海道」(読売新聞北海道支社)</ref>、このようにパン屋本店を訪ねる約束の時間にAがサティにいた理由は不明である{{Sfn|片岡健|2024|p=31}}。


それとほぼ同じころ、サティ北側の路上{{Efn2|この地点はA宅から約7&nbsp;km離れた場所で、JR[[東室蘭駅]]に近い<ref name="読売新聞20010406"/>。}}で高校の友人2人がAとすれ違い、Aから「どこにいくの」と声をかけられたが{{Efn2|Aは道路の向かいにいた同級生に声をかけていた<ref name="読売新聞20010406北海道"/>。}}<ref name="読売新聞20210305"/>、これがAの最後の目撃情報である<ref name="北海道新聞20240307"/>。Aはサティに立ち寄った後、近くの「東町2丁目」バス停から中央町・工大循環線のバスに乗車{{Efn2|13時31分発車<ref name="読売新聞20210305"/>。}}<ref name="読売新聞20230307"/>、13時40分ごろ<ref name="読売新聞20210305"/>、知利別町一丁目の「東通」バス停({{ウィキ座標|42.355372711798886|||N|141.01844529610776|||E||座標}})で下車したと見られる<ref name="読売新聞20230307">『読売新聞』2023年3月7日北海道朝刊社会B面30頁「高1不明22年 情報提供を 室蘭署 買い物客に呼びかけ=北海道」(読売新聞北海道支社)</ref>。このバス停ではAを含め、計12人の乗客が下車している<ref>『読売新聞』2007年3月6日北海道朝刊社会A面35頁「女子高生不明から6年 室蘭署が情報提供呼びかけ=北海道」(読売新聞北海道支社)</ref>。
それとほぼ同じころ、サティ北側の路上{{Efn2|この地点はA宅から約7&nbsp;km離れた場所で、JR[[東室蘭駅]]に近い<ref name="読売新聞20010406"/>。}}で高校の友人2人がAとすれ違い、Aから「どこにいくの」と声をかけられたが{{Efn2|Aは道路の向かいにいた同級生に声をかけていた<ref name="読売新聞20010406北海道"/>。}}<ref name="読売新聞20210305"/>、これがAの最後の目撃情報である<ref name="北海道新聞20240307"/>。Aはサティに立ち寄った後、近くの「東町2丁目」バス停から中央町・工大循環線のバスに乗車{{Efn2|13時31分発車<ref name="読売新聞20210305"/>。}}<ref name="読売新聞20230307"/>、13時40分ごろ<ref name="読売新聞20210305"/>、知利別町一丁目の「東通」バス停({{ウィキ座標|42.355372711798886|||N|141.01844529610776|||E||座標}})で下車したと見られる<ref name="読売新聞20230307">『読売新聞』2023年3月7日北海道朝刊社会B面30頁「高1不明22年 情報提供を 室蘭署 買い物客に呼びかけ=北海道」(読売新聞北海道支社)</ref>。このバス停ではAを含め、計12人の乗客が下車している<ref>『読売新聞』2007年3月6日北海道朝刊社会A面35頁「女子高生不明から6年 室蘭署が情報提供呼びかけ=北海道」(読売新聞北海道支社)</ref>。

2024年7月1日 (月) 10:00時点における版

室蘭女子高生失踪事件
地図
Aが失踪直前に下車した「東通」バス停(室蘭市知利別町一丁目)[1]
場所 日本の旗 日本: 北海道室蘭市
座標
北緯42度21分19秒 東経141度01分06秒 / 北緯42.355372711798886度 東経141.01844529610776度 / 42.355372711798886; 141.01844529610776座標: 北緯42度21分19秒 東経141度01分06秒 / 北緯42.355372711798886度 東経141.01844529610776度 / 42.355372711798886; 141.01844529610776
日付 2001年平成13年)3月6日
13時30分ごろ(最後の目撃情報)[2] (UTC+9)
概要 女子高生がアルバイト先のパン屋へ向かう途中で消息を絶った[3]
行方不明者 1人
被害者 女子高生A(当時16歳:室蘭栄高校1年生)[3]
犯人 不明
対処 北海道警が捜査中(未解決
管轄 北海道警察捜査一課室蘭警察署[4]
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室蘭女子高生失踪事件(むろらんじょしこうせいしっそうじけん)は、2001年平成13年)3月6日日本北海道室蘭市で発生した未解決失踪事件[5]室蘭栄高校の1年生だった女子高生A(当時16歳)がアルバイト先のパン屋へ行くと言って自宅を出て以降、行方不明になった事件である[5]

メディアで何度も取り上げられた有名な未解決事件であり[6]、Aの行方を追っている北海道警察には2002年(平成14年)以降、事件発生から23年となる2024年(令和6年)3月までに290件の情報提供がなされているが、事件解決には至っていない[7][8]

事件経緯

Aは事件当時、室蘭市白鳥台一丁目[9][10]の団地で家族とともに暮らしていた[6]。知人たちによればAは成績優秀で友人も多く、また可愛らしい風貌と評されており、中学生のころはファンクラブも結成されていたという[11]。また事件当時は、自宅近くにあったパン屋の支店でアルバイトをしていた[9][12]。Aが事件当時在学していた室蘭栄高校は2001年3月5日に期末試験を終え、Aが失踪した6日からは入試などのため3連休になっていた[10]。失踪当時のAの服装は、ベージュのブレザーと紺のジーンズ、チェックのマフラーで、ピアスと銀の指輪を着けていた[10]。また靴は緑色の革靴(サイズは23.5 cm)である[10]

Aは失踪当日の6日昼過ぎ、白鳥台一丁目の自宅から外出し[10]、近くの「白鳥台中央」バス停(座標)で12時30分発の市街地ターミナル行きバスに乗車する姿を友人に目撃されている[2]。この外出は、自宅から約7.5 km離れた室蘭市知利別町にあるパン屋の本店で[9]、オーナーからコーヒーの淹れ方を教えてもらうことが目的であり、Aは昼前に「午後1時過ぎに店に行きます」と電話していた[11]。しかしAの自宅近くのバス停からは、パン屋の本店近くまで直行するバスがあるにもかかわらず、Aは遠回りになるバスに乗っており、その不自然さが指摘されている[13]。Aは13時5分に「東町2丁目」バス停(座標)で下車したものの[2]、約束の時間である同日13時にはパン屋の本店には現れず[11]、同店から約1.5 km離れた[14]同市東町の「室蘭サティ」(座標、現:イオン室蘭店)化粧品売り場にいたことが確認されている[2]。同日13時4分と同26分には、それぞれ店内に設置された防犯カメラ映像にAの姿が記録されているが[15]、このようにパン屋本店を訪ねる約束の時間にAがサティにいた理由は不明である[16]

それとほぼ同じころ、サティ北側の路上[注 1]で高校の友人2人がAとすれ違い、Aから「どこにいくの」と声をかけられたが[注 2][2]、これがAの最後の目撃情報である[7]。Aはサティに立ち寄った後、近くの「東町2丁目」バス停から中央町・工大循環線のバスに乗車[注 3][1]、13時40分ごろ[2]、知利別町一丁目の「東通」バス停(座標)で下車したと見られる[1]。このバス停ではAを含め、計12人の乗客が下車している[19]

Aは13時42分と46分の2回、バス停およびバス停から約25 m離れたアルバイト先のパン屋の本店(座標)の近くで[20]、交際相手の少年[注 4]からかかってきた電話をPHSで受信していた[16]。1回目の電話は「下(市街地)[注 5]に着いた」という内容で[2]、2回目の電話は約8秒間であり[9]、「今ちょっと無理だから、後でかけ直すね」という内容だったが、Aはそれを最後に消息不明になっている[2]。このため、「東通」バス停からパン屋の本店へ向かうまでの間に何らかの事件に巻き込まれて失踪したものと思われ[16]、またバス停は交通量の多い幹線道路に面している上、周辺には多数の商店があるが、後の北海道警察による聞き込み捜査でも目撃情報は得られていない[21]。これらの電話の際、Aの様子は緊迫したものではなかったという[22]。なお、Aの持っていたPHSは同日夕方から電源が切れている[17]

捜査

北海道警の管轄警察署である室蘭警察署はAの家族から捜索願を受け[10]、自分の意志で家出した可能性があるか否かを調べるため、家族や高校関係者への聞き込みを行った[23]。その結果、Aは家族関係が良好であり、数週間先の予定もノートに記すなど[23]、家出する動機が見当たらなかったため、室蘭署はAが事件・事故に巻き込まれた可能性もあると見て[24]、失踪翌日の3月7日から捜査対策室を設置して行方を捜した[10]

同月17日[10]、室蘭署と道警捜査一課は公開捜査を開始した[3]。道警は失踪から1か月となる4月5日までに捜査員約60人体制で捜査を続け、チラシ6万枚を配布した[18]。道警捜査一課と室蘭署は同年9月6日までの半年間で1万人超[22]、2002年3月5日までの1年間で延べ14300人の捜査員を動員し、180件の情報提供を得たが、有力な情報は得られなかった[4]。道警になされた情報提供の件数は、2006年2月までに約270件[25]、2020年(令和2年)3月2日時点で435件[26]におよぶが、事件からの年数経過とともに情報提供の件数も減少傾向にある[注 6][25]。2002年から2023年3月までに全国からなされた情報提供(計273件)のうち、約4割はAに似た女性を見かけたというものだったため、捜査員が裏付け捜査を行ったが、解決には至らなかった[1]。特に2004年3月までに提供された情報の中には「千葉県内の飲食店で、似た人が働いている」などの情報もあったが、その人物はAとは別人だった[27]

その後も室蘭署内に「捜査対策室」が設置され、2011年3月時点では専従の署員7人が[28]、2014年3月時点では専従捜査員6人が捜査を続けていた[29]。2021年(令和3年)10月には室蘭署がAの家族から同意を得た上で、警察庁科学警察研究所の加齢顔画像作成システムを活用して現在の容姿を推定した新たな画像を作成し、情報提供呼び掛けに利用している[30]。Aが最後に目撃された「東町2丁目」バス停には2021年3月時点で、事件の情報提供を呼びかける立て看板が設置されている[2]。なお、事件当時にAが家族とともに暮らしていた団地は2024年時点で既に閉鎖されている[31]

被疑者

道警は、Aが「サティ」で最後に目撃されてからPHSで最後に会話するまでの間にAに接触した人物が捜査の鍵を握ると見て調べを進めた[9]。犯人説として、Aのアルバイト先である当時30歳代のパン屋の男性オーナー(本店の店長)[16]、Aが最後に乗車していたバスの運転手、ストーカー、恋人などの説が浮上し[32]、また北朝鮮による拉致説も囁かれていたが[33]、北海道警は特にオーナーに強い嫌疑をかけており、マスコミに対してもオーナーへの嫌疑を強く匂わせるような発表をしていた[32]。このような警察発表からオーナーのもとには事件後、報道陣が殺到しており、中にはオーナーを露骨に犯人視して執拗に取材するメディアもあったという[32]

週刊新潮』は事件後、オーナーが24時間体制で警察の監視下に置かれ、マスコミも彼に疑いを向けていた一方、オーナー本人は報道関係者向けに配布した文書で失踪との関連を強く否定していたと報じていたが、同誌の記事には「元女子従業員」や「女子従業員」のコメントとして、オーナーはパートの既婚女性と不倫関係にあったり、若いアルバイトの女性従業員に対しセクハラ的な言動をしていたりなど、女性従業員との接し方に問題があった人物であることを窺わせるような内容を掲載していた[34][35]。一方でオーナーはパン屋の本店だけでなく、Aのアルバイト先だった支店も経営してはいたが[16]、その支店の店長は彼とは別人であり、支店長は同誌の取材に対し、オーナーからAがストーカー被害に遭って悩んでいると聞いていたが、直接の上司である自分はそのような話は聞いていないという旨を証言していた[34][12]。また同誌では「新聞記者」による、オーナーは事件当日の13時30分に店を出て15時に帰宅したと述べており、Aの失踪時間帯にはアリバイがないというコメントも掲載されていた[12]

その一方でオーナー本人は、Aにコーヒーの淹れ方を指導するため本店で待っていたが、13時30分になってもAが来なかったため店を出[23]、アリバイがなかったとされる時間帯は自宅にいたと主張し、同居していた母親もその主張に沿う証言をしていた[12]。『週刊文春』や『週刊ポスト』によれば、道警はオーナーの自宅・庭、自動車などを捜索し[36]、そのアリバイについても調べたが[23]、失踪事件に関連する手がかりは全く発見できなかったといい、オーナーは逮捕されていない[12]。事件発生時、事件を取材した全国紙記者は八木澤高明に対し、パン屋のオーナーは閉店後に他の土地に移ったが、警察は更地になった店の跡地にAの遺体が埋まっているのではないかと疑い、重機で掘り返したものの、事件に関連するものは何も出てこなかったと述べている[37]

学校側の対応

室蘭栄高校は室蘭署が公開捜査を開始して以降、同月23日の終業式までに生徒たちへの経過説明を行った他、父母にも春休み中の子供への助言と情報提供を喚起した[38]

Aは失踪後の2001年4月、失踪時点で在学していた1年4組と同じ担任の2年4組にクラス配置された[39]。これは室蘭栄高校が、Aが元気に戻ってくることを考慮したものであり、同校はA宅に教科書を届け、いつでも授業に復帰できるよう体制を整えていた[39]。なお、Aは同月12日に17歳の誕生日を迎えている[18]。Aは2003年(平成15年)3月に高校を卒業する見込みだったが、2年生の出席日数が不足しているという理由から3年生に進級せず、失踪当時の同級生たちが卒業した同年4月以降も2年4組に在学中の扱いになっていた[40]。2004年3月時点でも、高校は通学再開に備えてAの机と靴ロッカーを用意していた[27]。失踪から20年が経過した2021年(令和3年)3月時点でも、Aは同校に休学中のまま在学している扱いになっている[2]

事件後

インターネット上では事件から23年が経過した2024年時点でも、SNSに事件を考察する記事が多数掲載されたり、関連動画がアップロードされるなどしており、注目度が高い事件である[6]。片岡健はこの事件について、失踪したAが美少女であることに加え、失踪経緯も謎が多いことから、2024年時点でも注目を集めている事件であると評している[6]

パン屋のオーナーの知人は、事件前のオーナーは室蘭市内に2店舗(本店とAのアルバイト先である支店)を構え、年商は1億円以上に達していたが、強い嫌疑をかけられたことが原因で売上が9割以上減少し、2004年(平成16年)時点で支店は閉店に追い込まれたと証言している[23]。またオーナーの母親は2002年(平成14年)時点で、道警の事情聴取や自宅・車などの捜索に協力して何も出てこなかったにもかかわらず、道警やマスコミから息子への疑惑の目が向けられ続けた結果、店は資金繰りに困窮し、財産も差し押さえられて裁判所の管理下にあると述べている[33]。事件から10年後の2011年2月3日に放送された『スーパーJチャンネル』(テレビ朝日系列)によれば、オーナーは事件後に多額の債務を抱えて閉店し、自己破産したという[31]。片岡はこの報道の真偽を検証した結果として、『官報』ではオーナーが自己破産したという事実は確認できなかったが、彼が経営していたパン屋は本店も、Aのアルバイト先だった支店も2024年時点で既に閉店しており、また彼が別の場所で開業した飲食店も2023年(令和5年)2月に閉店したが、店の公式Twitterにおける閉店の挨拶[注 7]に対し、「〔A〕さんをどこに隠したんですか?」という誹謗中傷のリプライ[注 8]が投稿されていたと述べている[31]

事件を取り上げたテレビ番組

脚注

注釈

  1. ^ この地点はA宅から約7 km離れた場所で、JR東室蘭駅に近い[17]
  2. ^ Aは道路の向かいにいた同級生に声をかけていた[18]
  3. ^ 13時31分発車[2]
  4. ^ 高校の同級生[9]
  5. ^ Aの住んでいた白鳥台は高台の上にある地域であったため、パン屋の本店がある繁華街を「下」と呼んでいたという[16]
  6. ^ 2004年は25件、2005年は7件と著しく減少していた[25]
  7. ^ 該当ツイート:@Renri0419 (2023年1月23日). "【閉店のお知らせ】". 2024年6月30日時点のオリジナルよりアーカイブX(旧Twitter)より2024年6月30日閲覧
  8. ^ @ararepiko (2023年7月31日). "誹謗中傷の該当ツイート". 2024年6月30日時点のオリジナルよりアーカイブX(旧Twitter)より2024年6月30日閲覧

出典

  1. ^ a b c d 『読売新聞』2023年3月7日北海道朝刊社会B面30頁「高1不明22年 情報提供を 室蘭署 買い物客に呼びかけ=北海道」(読売新聞北海道支社)
  2. ^ a b c d e f g h i j k 『読売新聞』2021年3月5日北海道朝刊社会B面26頁「室蘭の○○○○さん不明 足取りつかめず20年 道警「どんな情報でも寄せて」=北海道」(読売新聞北海道支社 牟田口輝)
  3. ^ a b c 北海道新聞』2001年3月24日朝刊第16版第2社会面38頁「【室蘭】室蘭の女子高生失跡 依然手掛かりなく 事件性も視野に捜査 情報求めチラシも」(北海道新聞社) - 縮刷版1164頁。
  4. ^ a b 読売新聞』2002年3月6日東京朝刊北海道社会面A面25頁「室蘭の女子高生不明から1年 情報180件、手掛かり少なく=北海道」(読売新聞北海道支社
  5. ^ a b 室蘭 女子高校生行方不明から23年 警察が情報提供呼びかけ」『北海道 NEWS WEB』NHK札幌放送局、2024年3月6日。オリジナルの2024年6月19日時点におけるアーカイブ。2024年6月19日閲覧。
  6. ^ a b c d 片岡健 2024, p. 29.
  7. ^ a b 『北海道新聞』2024年3月7日朝刊第16版第4社会面23頁「【室蘭】女子高生不明23年 情報提供呼び掛け 室蘭署」(北海道新聞社)
  8. ^ 松本英仁「女子高生行方不明から23年 室蘭署が情報提供呼びかけ」『朝日新聞デジタル朝日新聞北海道支社、2024年3月7日。オリジナルの2024年6月20日時点におけるアーカイブ。2024年6月20日閲覧。
  9. ^ a b c d e f 『北海道新聞』2001年6月7日朝刊第16版第3社会面31頁「【室蘭】室蘭の女子高生 行方不明3カ月 有力情報なく捜査暗礁に 電話直前の接触者カギ」(北海道新聞社) - 縮刷版345頁。
  10. ^ a b c d e f g h 『読売新聞』2001年3月18日東京朝刊札幌社会面35頁「室蘭で高1女子が行方不明 買い物帰り?6日から=北海道」(読売新聞北海道支社)
  11. ^ a b c 片岡健 2024, p. 30.
  12. ^ a b c d e 片岡健 2024, p. 32.
  13. ^ 鈴木毅 2001, p. 151.
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参考文献

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  • 八木澤高明「第3章 殺ったのはおまえだ > File #046 美人女子高生が忽然と消えた日 室蘭・女子高生失踪事件[2001/3/6] 「バイト先の店長」を24時間マーク だが物的証拠は何も出なかった」『日本の「未解決事件」100の聖域 最新情報と新たなミステリー』(第1刷発行)宝島社、2018年3月12日、93頁。ISBN 978-4800282262国立国会図書館書誌ID:028824157全国書誌番号:23034610 
  • 片岡健「室蘭女子高生失踪事件 「今は話せないから後でかけ直すね」 これが最後の言葉だった……」『昭和の不思議101 2024年夏の男祭号』44号、大洋図書〈ミリオンムック〉、2024年7月15日、28-33頁。ISBN 978-4813048442 


外部リンク