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「百鬼夜行絵巻」の版間の差分

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{{Otheruses||[[熊本県]][[八代市]]の松井文庫所蔵の妖怪絵巻|百鬼夜行絵巻 (松井文庫)}}
'''百鬼夜行絵巻'''(ひゃっき やぎょう えまき)は、日本の[[絵巻物]]の一種である。代表作とされてきたのは、[[京都市|京都]][[大徳寺]]山内の[[塔頭]]、[[一休宗純]]ゆかりの[[真珠庵]]に所蔵される「百鬼夜行図」([[重要文化財]]、真珠庵本)である。
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'''百鬼夜行絵巻'''(ひゃっきやぎょうえまき、ひゃっきやこうえまき)は、[[日本]]の[[絵巻物]]である。多数の作品が現存しており、代表的な作品は[[京都市|京都]][[大徳寺]]山内の[[塔頭]]・[[真珠庵]](しんじゅあん)に所蔵される『'''百鬼夜行図'''』<ref name="tosa">絵巻自体に[[明治]]時代に貼付されたとされる短冊状の紙片に ≪百鬼夜行図 土佐光信筆 真珠庵≫ とあることによる。『日本絵巻大成』25 能恵法師絵詞・福富草紙・百鬼夜行絵巻 [[中央公論社]] [[1979年]]、130頁。ISBN 4-12-402285-9。</ref>([[重要文化財]]。『百鬼夜行絵巻』、'''真珠庵本'''と称される)である。


[[画像:Hyakki-Yagyo-Emaki Tsukumogami 1.jpg|right|thumb|380px|『百鬼夜行絵巻』 作者不詳(室町時代)]]
== 概要 ==
== 概要 ==
百鬼夜行絵巻とは、その名の通り、「[[百鬼夜行]]」のさまを描いた絵巻物の総称である。但し、その名称は、現の研究者等が名付けたものあって、当初よりの名称ではなのため百鬼夜行さまあるし得な場合は、同様の図が描かれた絵巻であったとしても、「妖怪絵巻」名付けられている場合も見受けられる。
百鬼夜行絵巻とは、妖怪たちが行列をする「[[百鬼夜行]]」(ひゃっきやぎょう、ひゃっきやこう)のさまを描いたとされる複数の絵巻物の総称である。[[室町時]]から[[明治]]・[[大正]]年間頃ま数多く制作されおり国内外を問わず多くの機関・個人によって所蔵されている。当初より、数種絵巻が存在してて、れが模写・転写される間に様々なパターンを構成し今日に伝わったものなのではないか考えられている<ref name="syusei" /><ref name="emaki" /><ref name="tanaka"/>。制作された時代から名称・総称が固されてたわけでなくまったく同様の図が描かれた絵巻であったとしても、「百鬼ノ図」「妖怪絵巻」など別の題名が名付けられている場合も見受けられる。


「百鬼夜行」という言葉が使われているが、『[[今昔物語集]]』などの説話集に見られる[[平安時代]]の人々に恐れられていた[[鬼]]や異形の者が行列をする「百鬼夜行」と、本作品に見られる「百鬼夜行」とされる行列は同一のものではなく、別のイメージであると考えられている<ref name="tanaka">田中貴子 「百鬼夜行絵巻はなおも語る」、『図説百鬼夜行絵巻をよむ』[[河出書房新社]]、1999年、17 - 33頁。ISBN 978-4-309-76103-9。</ref>。また、作品中に登場する妖怪たちは、器物の妖怪たちが中心となっている点に大きな特徴があるが、百鬼夜行絵巻に描かれるのは、器物だけであるとは限らず、器物以外の[[動物]]や[[植物]]なども描かれており、鳥獣草木器物戯画絵巻という性格から作品を鑑賞することも出来、『[[鳥獣人物戯画]]』(後年の類例が乏しい)や『[[付喪神絵巻]]』との関係もあるのではないかとも考えられている<ref name="emaki">[[小松茂美]]「百鬼夜行絵巻の謎」(『日本絵巻大成』25 能恵法師絵詞・福富草紙・百鬼夜行絵巻) [[中央公論社]] [[1979年]]、126 - 137頁。ISBN 4-12-402285-9。</ref>。
国の内外を問わず、各地に所蔵される絵巻であるが、著名なのは、真珠庵本である。[[室町時代]]の絵巻で、[[土佐光信]]筆と伝承されている。そこに描かれるのは、[[付喪神]]と呼ばれる器物の妖怪たちが中心である。


[[近代]]以後、[[田中一松]]などによる紹介<ref name="syusei">『日本絵巻物集成』1 伴大納言絵詞・随身庭騎図・清水寺縁起・華厳五十五処絵巻・長谷雄卿双紙・百鬼夜行図 [[雄山閣]] [[1929年]] 49-54頁</ref>にはじまり、展覧会・書籍などを通じて最もその存在が流布されているのは真珠庵に所蔵されている『百鬼夜行図』(『百鬼夜行絵巻』)である。真珠庵本は[[室町時代]](16世紀)の制作であり、[[土佐派]]の画家・[[土佐光信]](とさ みつのぶ)の筆であると伝承されているが確証はない<ref name="tosa"/>。また、真珠庵本がすべての百鬼夜行絵巻の祖型であるというわけではなく、室町時代・あるいはそれ以前に存在した「百鬼夜行絵巻」を手本として制作された作品のうちのひとつであると考えられている<ref name="syusei" /><ref name="emaki" /><ref name="tanaka" />。[[21世紀]]現在でも、複数伝存している百鬼夜行絵巻のうち、どの系統のものが最も古い形を残し、祖型を保っているのか、その前後関係はまだ研究途上にある。
但し、百鬼夜行絵巻に描かれるのは、真珠庵本に見られるような付喪神だけではなく、他の本では、動物の変化した妖怪なども描かれており、当初より、数種の絵巻が存在していて、それが模写・転写されて、今日に伝わっているものと考えられている。

『本朝画図品目』など[[江戸時代]]に編まれた絵画の伝存や所蔵先を記した文献には、[[土佐光重]]による[[明徳]]年間(1390-93年)頃と考えられる1巻、[[近衛家]]に[[土佐経隆]](藤原経隆)によって[[正和]]5年(1316年)描かれたとされる奥書きをもつ百鬼夜行絵巻が伝来していたことを記しているが、現在存否は確認はされておらずどのような内容であったかは不詳である。[[黒川真頼]]、[[古川躬行]](1810-1883年)は、土佐経隆は12世紀の人物なので14世紀に描かれている点を考えると画家名は疑わしい<ref name="kurokawa">[[黒川真頼]] [https://dl.ndl.go.jp/pid/991263/1/152 『黒川真頼全集』第2, 176-177頁 ,国書刊行会,明治43]</ref>と『増補考古画譜』で考察を示しており、後者の画家名はあくまでも仮託であったと考えられる<ref>田中貴子『百鬼夜行の見える都市』新曜社 1994年、191-195頁。ISBN 4-7885-0480-4。</ref><ref name="zinbo2" />。

=== 詞書の存在 ===
絵巻物に描かれた内容や物語を示す詞書(ことばがき)が付けられていることはほとんどなく、妖怪たちがどのような事をしているのか正確な内容は不明である。そのため、本作品がどのように受容され、鑑賞されていたかもはっきりはしていない<ref name="emaki" />。

詞書を持つ百鬼夜行絵巻は非常に珍しく、わずかながら数点([[ニューヨーク公共図書館]]所蔵作品など)詞書のあるものが確認されている。詞書の内容には、[[治承|治承年間]]([[1177年]]から[[1181年]])の末に[[福原京|福原]]に都が移り、持主を失って荒れ果ててしまった屋敷に異形たちが現われた、とある。構成などに異同があるものの、真珠庵系統の絵巻物とほぼ同様の妖怪が描かれている。これらが真珠庵系統の絵巻物の原典となった祖型に元々あったものであるのか、後になってから付け加えられたのかはまだ不明である<ref name="tanaka" />。


== 主な作例 ==
== 主な作例 ==
[[File:Hyakki Yako 1.jpg|thumb|700px|center|百鬼夜行絵巻の例]]
[[File:Hyakki Yako 1.jpg|thumb|777px|百鬼夜行絵巻の例 [[国際日本文化研究センター]]蔵『百鬼夜行絵巻』(部分) 真珠庵本との順番の違いが確認できる。]]
百鬼夜行絵巻と総称されているが、まったく同じ図柄のものも存在すれば、描かれる妖怪の順番の違うもの、全く違うものなど複数の系統が存在している。確認される伝存作品のなかでは真珠庵の蔵品が最も古い<ref>名倉ミサ子「[http://publications.nichibun.ac.jp/region/d/NSH/series/kosh/2015-01-30/s001/s016/pdf/article.pdf 鍋と釜――『百鬼夜行絵巻』に見る神事の位相]」([[国際日本文化研究センター]]『怪異・妖怪文化の伝統と創造──ウチとソトの視点から』 2015年 119頁)</ref>部類にあたり、『本朝画図品目』などの文献上にのみ確認が出来るそれ以前の時代(14世紀・[[鎌倉時代]]の末や[[南北朝時代 (日本)|南北朝時代]])の製作であるとされる作品がどのような図柄であったものかはいまだ明確ではない<ref name="zinbo2">真保亨、撮影 金子桂三 『妖怪絵巻』[[毎日新聞社]] [[1978年]] 232頁</ref>。
* [[京都市]]・[[大徳寺]][[真珠庵]]蔵本 - [[室町時代]]、伝[[土佐光信]]画([[重要文化財]])

* [[アメリカ合衆国|アメリカ]]・[[ニューヨーク公共図書館]]蔵本
* 百鬼夜行絵巻(紙本着色百鬼夜行図) [[室町時代]]・伝[[土佐光信]]。[[大徳寺]][[真珠庵]]蔵([[重要文化財]])
* 京都市・[[国際日本文化研究センター]]蔵本
* 京都市・[[京都市立大学]]蔵
* 百鬼夜行絵巻 [[原在中]]。[[大阪市立]]蔵
* 百鬼夜行絵巻 [[大阪市立美術館]]蔵 - 真珠庵本と同じ図様だが唐櫃からはじまるなど妖怪の配列順に違いがある<ref>田中貴子『百鬼夜行の見える都市』[[新曜社]] 1994年、200頁。ISBN 4-7885-0480-4。</ref><ref>『図説百鬼夜行絵巻をよむ』[[河出書房新社]]、1999年、65 - 72頁。ISBN 978-4-309-76103-9。</ref>。
* [[東京都]][[港区 (東京都)|港区]]・[[大倉集古館]]蔵本
* 百鬼夜行絵巻 [[国際日本文化研究センター]]蔵。真珠庵本と同じ図様だが妖怪の配列順に違いがある<ref>[[国立歴史民俗博物館]]ほか編 『百鬼夜行の世界』 [[角川学芸出版]]、2009年、54頁。ISBN 978-4-04-621467-6。</ref>。(図を参照)
* [[姫路市]]・[[兵庫県立歴史博物館]]蔵本
* 百鬼夜行図 江戸時代前期・狩野洞雲。[[国立歴史民俗博物館]]蔵。『[[百怪図巻]]』などに登場する[[髪切り]]・[[ふらり火]]などが登場している<ref>[[国立歴史民俗博物館]]ほか編 『百鬼夜行の世界』 [[角川学芸出版]]、2009年、18頁。ISBN 978-4-04-621467-6。</ref>。
* 東京都[[台東区]]・[[東京国立博物館]]蔵本
* 百鬼夜行絵巻(スペンサー本、百鬼夜行物語絵巻)スペンサー・コレクション。[[ニューヨーク公共図書館]]([[アメリカ合衆国]])蔵 - 詞書が存在する。
* [[アイルランド]][[チェスター・ビーティ図書館]]蔵
* 百鬼夜行絵巻(す本) 江戸時代中期。[[国立国会図書館]]蔵 - スペンサーコレクションと同じく詞書が存在することから「す」本と呼ばれる。
* 百鬼夜行絵巻 [[東京国立博物館]]蔵 - 真珠庵本に先行する別系統の絵巻物であると考えられる<ref>『図説百鬼夜行絵巻をよむ』[[河出書房新社]]、1999年、57 - 64頁。ISBN 978-4-309-76103-9。</ref>。
* 百鬼ノ図(百鬼夜行絵巻)江戸時代前記・伝[[土佐吉光]]。国際日本文化研究センター蔵。上記の東京国立博物館蔵の絵巻と登場妖怪が重なっている<ref>[[国立歴史民俗博物館]]ほか編 『百鬼夜行の世界』 [[角川学芸出版]]、2009年、24頁。ISBN 978-4-04-621467-6。</ref>。
* 百鬼夜行絵巻 国立歴史民俗博物館蔵。同上。
* 百鬼夜行絵巻 [[田中訥言]][[チェスター・ビーティ図書館]]([[アイルランド]])
* 百鬼夜行絵巻 江戸時代後期([[18世紀]])。[[京都市立芸術大学]]蔵 - 真珠庵系統とは全く異なる。[[動物]]や[[植物]]なども多く登場する<ref name="tanaka"/>。
* 百鬼夜行絵巻 江戸時代後期。[[大倉集古館]]蔵 - 上記の京都市立芸術大学所蔵の絵巻と共通している妖怪が見られる<ref>[[国立歴史民俗博物館]]ほか編 『百鬼夜行の世界』 [[角川学芸出版]]、2009年、58頁。ISBN 978-4-04-621467-6。</ref>。
* 百鬼夜行絵巻(百鬼夜行図、異本百鬼夜行図) [[文政]]12年([[1829年]])。東京国立博物館蔵 - [[住吉如慶]]が住吉家に伝来した絵巻物を写した写本。器物名の書き込みなどがある<ref name="kurokawa" /><ref name="tanaka"/><ref>[[国立歴史民俗博物館]]ほか編 『百鬼夜行の世界』 [[角川学芸出版]]、2009年、42頁。ISBN 978-4-04-621467-6。</ref>。
* [https://iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/repo/s/hyakki/page/home 百鬼夜行図] - 東京大学総合図書館所蔵。奥書によれば、室町時代の画家・土佐行秀の画を蔭山源広迢が写したものとある。
* 百鬼夜行図屏風 [[原在中]]。百鬼夜行図を描いた[[屏風]](びょうぶ)。大倉集古館蔵

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* [[田中貴子 (国文学者)|田中貴子]] 『百鬼夜行の見える都市』([[新曜社]]、1994年、ISBN 978-4-7885-0480-6。[[ちくま学芸文庫]]、[[2002年]]、ISBN 978-4-480-08731-7)
* [[小松茂美]]「『百鬼夜行絵巻』の謎」(『日本絵巻大成』25 )([[中央公論社]]、[[1979年]])
* [[田中貴子 (国文学者)|田中貴子]]百鬼夜行絵巻はなおも語る」『図説百鬼夜行絵巻をよむ』)([[河出書房新社]]、[[1999年]])
* 田中貴子 「百鬼夜行絵巻はなおも語る」『図説 百鬼夜行絵巻をよむ』 [[河出書房新社]]、[[1999年]]、新版2007年、2017年 ISBN 978-4309762654
* 名倉ミサ子「『百鬼夜行絵巻』の行列と舞楽法会」(『伝承文学研究 61』三弥井書店、2012年) 真珠庵本の行列の構成が舞楽四箇法要と似ているという視点から考察している。
* [[湯本豪一]]著『江戸の妖怪絵巻』(『光文社新書』)([[光文社]]、[[2003年]])
* 湯本豪一著『百鬼夜行絵巻:妖怪たちが騒ぎだす[[]]、[[2005]])
* [[国立歴史民俗博物館]]ほか編 『百鬼夜行の世界 [[角川芸出版]]、2009 ISBN 978-4-04-621467-6
* 解説[[田中一松]]『日本絵巻物集成 1』 伴大納言絵詞・随身庭騎図・清水寺縁起・華厳五十五処絵巻・長谷雄卿双紙・百鬼夜行図 [[雄山閣]] [[1929年]]
* [[小松和彦]]著『百鬼夜行絵巻の謎』(『[[集英社新書]]』ビジュアル版012V)([[集英社]]、[[2008年]])
* 『妖怪絵巻』 解説真保亨、撮影金子桂三、[[毎日新聞社]] [[1978年]]
* 『日本絵巻大成 25』 能恵法師絵詞・福富草紙・百鬼夜行絵巻 [[中央公論社]] [[1979年]] ISBN 4-12-402285-9
* 普及版『続 日本の絵巻 27』 能恵法師絵詞・福富草紙・百鬼夜行絵巻 中央公論社 [[1993年]] ISBN 978-4-12-402907-9


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[百鬼夜行]]
* [[百鬼夜行]]
* [[百怪図巻]]
* [[百鬼夜行絵巻 (松井文庫)]]
* [[化物草紙]]
* [[付喪神絵巻]]


== 外部リンク ==
{{DEFAULTSORT:ひやつきやきようえまき}}
{{Commonscat|Hyakki Yako Emaki}}
[[Category:日本美術史]]
* [[国立国会図書館]]デジタルアーカイブ 百鬼夜行絵巻 {{NDLJP|2540972}} 詞書の存在する作品。
[[Category:室町時代の文化]]
* [http://kikyo.nichibun.ac.jp/emakimono/select.php 絵巻物一覧 百鬼夜行絵巻](国際日本文化研究センターのサイト。百鬼夜行絵巻の全体を閲覧可能)
[[Category:絵巻]]
*[https://www.shikoku-np.co.jp/feature/kotohira/66/index.htm 金比羅宮 美の世界第66話 生田久一「百鬼夜行絵巻」:小松和彦 2004年7月18日]
[[Category:妖怪に関する文献]]
*{{Wayback|url=http://mytown.asahi.com/iwate/news.php?k_id=03000230604280001 |title=蔵出し~県立博物館のお宝 台所道具がモチーフ 「百鬼夜行絵巻」:川向富貴子 2006年04月28日 |date=20060827125459}}
*[http://akakutemarukkoi.yu-nagi.com/ 百鬼夜行絵巻の赤い妖怪 :新・妖怪党 2010年08月15日]
*[https://da.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/portal/collection/hyakki 百鬼夜行図] - 東京大学総合図書館所蔵


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[[Category:妖怪絵巻]]

2024年8月24日 (土) 08:02時点における最新版

真珠庵蔵『百鬼夜行絵巻』(部分) 伝土佐光信(室町時代)

百鬼夜行絵巻(ひゃっきやぎょうえまき、ひゃっきやこうえまき)は、日本絵巻物である。多数の作品が現存しており、代表的な作品は京都大徳寺山内の塔頭真珠庵(しんじゅあん)に所蔵される『百鬼夜行図[1]重要文化財。『百鬼夜行絵巻』、真珠庵本と称される)である。

概要

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「百鬼夜行絵巻」とは、妖怪たちが行列をする「百鬼夜行」(ひゃっきやぎょう、ひゃっきやこう)のさまを描いたとされる複数の絵巻物の総称である。室町時代から明治大正年間頃まで数多く制作されており、国内外を問わず多くの機関・個人によって所蔵されている。当初より、数種の絵巻が存在していて、それが模写・転写される間に様々なパターンを構成し、今日に伝わったものなのではないかと考えられている[2][3][4]。制作された時代から名称・総称が固定されていたわけではなく、まったく同様の図が描かれた絵巻であったとしても、「百鬼ノ図」「妖怪絵巻」など別の題名が名付けられている場合も見受けられる。

「百鬼夜行」という言葉が使われているが、『今昔物語集』などの説話集に見られる平安時代の人々に恐れられていたや異形の者が行列をする「百鬼夜行」と、本作品に見られる「百鬼夜行」とされる行列は同一のものではなく、別のイメージであると考えられている[4]。また、作品中に登場する妖怪たちは、器物の妖怪たちが中心となっている点に大きな特徴があるが、百鬼夜行絵巻に描かれるのは、器物だけであるとは限らず、器物以外の動物植物なども描かれており、鳥獣草木器物戯画絵巻という性格から作品を鑑賞することも出来、『鳥獣人物戯画』(後年の類例が乏しい)や『付喪神絵巻』との関係もあるのではないかとも考えられている[3]

近代以後、田中一松などによる紹介[2]にはじまり、展覧会・書籍などを通じて最もその存在が流布されているのは真珠庵に所蔵されている『百鬼夜行図』(『百鬼夜行絵巻』)である。真珠庵本は室町時代(16世紀)の制作であり、土佐派の画家・土佐光信(とさ みつのぶ)の筆であると伝承されているが確証はない[1]。また、真珠庵本がすべての百鬼夜行絵巻の祖型であるというわけではなく、室町時代・あるいはそれ以前に存在した「百鬼夜行絵巻」を手本として制作された作品のうちのひとつであると考えられている[2][3][4]21世紀現在でも、複数伝存している百鬼夜行絵巻のうち、どの系統のものが最も古い形を残し、祖型を保っているのか、その前後関係はまだ研究途上にある。

『本朝画図品目』など江戸時代に編まれた絵画の伝存や所蔵先を記した文献には、土佐光重による明徳年間(1390-93年)頃と考えられる1巻、近衛家土佐経隆(藤原経隆)によって正和5年(1316年)描かれたとされる奥書きをもつ百鬼夜行絵巻が伝来していたことを記しているが、現在存否は確認はされておらずどのような内容であったかは不詳である。黒川真頼古川躬行(1810-1883年)は、土佐経隆は12世紀の人物なので14世紀に描かれている点を考えると画家名は疑わしい[5]と『増補考古画譜』で考察を示しており、後者の画家名はあくまでも仮託であったと考えられる[6][7]

詞書の存在

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絵巻物に描かれた内容や物語を示す詞書(ことばがき)が付けられていることはほとんどなく、妖怪たちがどのような事をしているのか正確な内容は不明である。そのため、本作品がどのように受容され、鑑賞されていたかもはっきりはしていない[3]

詞書を持つ百鬼夜行絵巻は非常に珍しく、わずかながら数点(ニューヨーク公共図書館所蔵作品など)詞書のあるものが確認されている。詞書の内容には、治承年間1177年から1181年)の末に福原に都が移り、持主を失って荒れ果ててしまった屋敷に異形たちが現われた、とある。構成などに異同があるものの、真珠庵系統の絵巻物とほぼ同様の妖怪が描かれている。これらが真珠庵系統の絵巻物の原典となった祖型に元々あったものであるのか、後になってから付け加えられたのかはまだ不明である[4]

主な作例

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百鬼夜行絵巻の例 国際日本文化研究センター蔵『百鬼夜行絵巻』(部分) 真珠庵本との順番の違いが確認できる。

百鬼夜行絵巻と総称されているが、まったく同じ図柄のものも存在すれば、描かれる妖怪の順番の違うもの、全く違うものなど複数の系統が存在している。確認される伝存作品のなかでは真珠庵の蔵品が最も古い[8]部類にあたり、『本朝画図品目』などの文献上にのみ確認が出来るそれ以前の時代(14世紀・鎌倉時代の末や南北朝時代)の製作であるとされる作品がどのような図柄であったものかはいまだ明確ではない[7]

脚注

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  1. ^ a b 絵巻自体に明治時代に貼付されたとされる短冊状の紙片に ≪百鬼夜行図 土佐光信筆 真珠庵≫ とあることによる。『日本絵巻大成』25 能恵法師絵詞・福富草紙・百鬼夜行絵巻 中央公論社 1979年、130頁。ISBN 4-12-402285-9
  2. ^ a b c 『日本絵巻物集成』1 伴大納言絵詞・随身庭騎図・清水寺縁起・華厳五十五処絵巻・長谷雄卿双紙・百鬼夜行図 雄山閣 1929年 49-54頁
  3. ^ a b c d 小松茂美「百鬼夜行絵巻の謎」(『日本絵巻大成』25 能恵法師絵詞・福富草紙・百鬼夜行絵巻) 中央公論社 1979年、126 - 137頁。ISBN 4-12-402285-9
  4. ^ a b c d e f 田中貴子 「百鬼夜行絵巻はなおも語る」、『図説百鬼夜行絵巻をよむ』河出書房新社、1999年、17 - 33頁。ISBN 978-4-309-76103-9
  5. ^ a b 黒川真頼 『黒川真頼全集』第2, 176-177頁 ,国書刊行会,明治43
  6. ^ 田中貴子『百鬼夜行の見える都市』新曜社 1994年、191-195頁。ISBN 4-7885-0480-4
  7. ^ a b 真保亨、撮影 金子桂三 『妖怪絵巻』毎日新聞社 1978年 232頁
  8. ^ 名倉ミサ子「鍋と釜――『百鬼夜行絵巻』に見る神事の位相」(国際日本文化研究センター『怪異・妖怪文化の伝統と創造──ウチとソトの視点から』 2015年 119頁)
  9. ^ 田中貴子『百鬼夜行の見える都市』新曜社 1994年、200頁。ISBN 4-7885-0480-4
  10. ^ 『図説百鬼夜行絵巻をよむ』河出書房新社、1999年、65 - 72頁。ISBN 978-4-309-76103-9
  11. ^ 国立歴史民俗博物館ほか編 『百鬼夜行の世界』 角川学芸出版、2009年、54頁。ISBN 978-4-04-621467-6
  12. ^ 国立歴史民俗博物館ほか編 『百鬼夜行の世界』 角川学芸出版、2009年、18頁。ISBN 978-4-04-621467-6
  13. ^ 『図説百鬼夜行絵巻をよむ』河出書房新社、1999年、57 - 64頁。ISBN 978-4-309-76103-9
  14. ^ 国立歴史民俗博物館ほか編 『百鬼夜行の世界』 角川学芸出版、2009年、24頁。ISBN 978-4-04-621467-6
  15. ^ 国立歴史民俗博物館ほか編 『百鬼夜行の世界』 角川学芸出版、2009年、58頁。ISBN 978-4-04-621467-6
  16. ^ 国立歴史民俗博物館ほか編 『百鬼夜行の世界』 角川学芸出版、2009年、42頁。ISBN 978-4-04-621467-6

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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