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== 分布 ==
== 分布 ==
別名の通り[[北アメリカ]]原産で、日本では[[明治時代]]初期以降に各地で繁殖している[[帰化植物]]である。
別名の通り[[北アメリカ]]原産で、日本では[[明治時代]]初期以降に各地で繁殖している[[帰化植物]]である{{sfn|金田初代|2010|p=188}}。市街地の空き地や造成地、庭などで見られる{{sfn|金田初代|2010|p=188}}


== 形態・生態 ==
== 形態・生態 ==
高さは2m前後に達する。茎は無毛で赤く、根は太く長い。葉は大きく、秋になると紅葉する。
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6月から9月にかけて白色ないし薄紅色の花からなる花穂を枝先に付け、夏季に扁平な果実を付けた後に初秋に黒熟す。熟した果実は柔らかく、潰すと赤紫色の果汁が出る。この果汁は強い[[染料]]で、衣服や皮膚に付くとなかなか落ちない。この特性のため、[[アメリカ合衆国]]では'''ポークウィード'''(Pokeweed)<ref>Poke は、かつて赤色染料の原料として用いられていた多年草の Puccoon に由来する。また weed は雑草のことである。</ref>や'''インクベリー'''(Inkberry)などとも呼ばれてる。
花期は初夏からにかけて(6 - 9月){{sfn|金田初代|2010|p=188}}。白色ないし薄紅色の花からなる花穂を枝先に付け、花後は扁平な果実を付けた果穂となって垂れ下がり、初秋に黒紫色に熟す{{sfn|金田初代|2010|p=188}}。熟した果実は柔らかく、潰すと赤紫色の果汁が出る。この果汁は強い[[染料]]で、衣服や皮膚に付くとなかなか落ちない。この特性のため、[[アメリカ合衆国]]では'''ポークウィード'''(Pokeweed)<ref group="注">Poke は、かつて赤色染料の原料として用いられていた多年草の[[パクーン]](Puccoon)に由来する。また weed は雑草のことである。</ref>や'''インクベリー'''(Inkberry)などとも呼ばれており、{{要出典範囲|date=2023年9月|簡易的なインクの代わりに使用され}}


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ファイル:ヨウシュヤマゴボウ 未熟な果実.JPG|未成熟果
File:Pokeweed fruit.JPG|未成熟果
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File:ヨウシュヤマゴボウ 未熟な果実.JPG|成熟果
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== 毒性 ==
== 毒性 ==
ヨウシュヤマゴボウは[[有毒植物]]で、全体にわたって[[毒]]があり、果実も有毒である。毒性は、根>葉>果実の順であるが、果実中の種子は毒性が高い。[[ブルーベリー]]と間違って果実を誤食する事故もあり、注意が必要である<ref>2006年10月27日に[[テレビ東京]]系列で放送されたテレビ番組『[[おはスタ]]』において、[[ブルーベリー]]と紹介した植物が実はヨウシュヤマゴボウだったことが発覚し、翌週の同番組の放送において司会を務める[[山寺宏一]]が謝罪した上で誤食しないように注意を呼びかけた。</ref>
ヨウシュヤマゴボウは[[有毒植物]]で、全体にわたって[[毒]]があり、果実も有毒である。毒性は、根>葉>果実の順であるが、果実中の種子は毒性が高い{{sfn|金田初代|2010|p=188}}


毒成分は、[[アルカロイド]]である[[フィトラッカトキシン]](phytolaccatoxin)、[[サポニン]]である[[フィトラッカサポニン]](phytolaccasaponins)、[[アグリコン]]である[[フィトラッキゲニン]](phytolaccigenin)などである。また、根には[[硝酸カリウム]]が多く含まれる。
毒成分は、[[アルカロイド]]である[[フィトラッカトキシン]](phytolaccatoxin)、[[サポニン]]である[[フィトラッカサポニン]](phytolaccasaponins)、[[アグリコン]]である[[フィトラッキゲニン]](phytolaccigenin)などである。また、根には[[硝酸カリウム]]が多く含まれる。


誤食すると、2時間ほど経過後に強い嘔吐や下痢が起こり、摂取量が多い場合はさらに[[中枢神経]]麻痺から痙攣や意識障害が生じ、最悪の場合には呼吸障害や[[心臓麻痺]]を引き起こして死に至る。幼児の場合は、種子を破砕した果汁を誤飲すると、果実数粒分でも重篤な症状を引き起こしうるために十分な警戒を要する。
誤食すると、2時間ほど経過後に強い[[嘔吐]][[下痢]]が起こり、摂取量が多い場合は[[瞳孔]]を開き、強い興奮状態、精神錯乱から、さらに[[中枢神経]]麻痺から[[痙攣]]や意識障害が生じ、最悪の場合には呼吸障害や[[心臓麻痺]]を引き起こして死に至る{{sfn|金田初代|2010|p=188}}。幼児の場合は、種子を破砕した果汁を誤飲すると、果実数粒分でも重篤な症状を引き起こしうるために十分な警戒を要する。


根や種子には、植物[[タンパク質]]の一種であるポークウィードマイトジェン(PWM: Pokeweed Mitogen)、ポークウィード抗ウイルスタンパク質(PAP: Pokeweed Anti-viral Protein)などが含まれる。これらの物質も毒性をもつが、同時に有用な薬理作用をもつものと期待され、研究が進められている。
根や種子には、植物[[タンパク質]]の一種であるポークウィードマイトジェン(PWM: Pokeweed Mitogen)、ポークウィード抗ウイルスタンパク質(PAP: Pokeweed Anti-viral Protein)などが含まれる。これらの物質も毒性をもつが、同時に有用な薬理作用をもつものと期待され、研究が進められている。


アメリカ合衆国ではかつて着色料として安価なワインなどに用いられたが、毒性を持つために現在は使用されていない。また、かつては主に[[アラバマ州]]などの南部地域において、若芽を茹でこぼして毒を抜いた上で食用にするところもあり([[ソウルフード]]を参照)、1969年に[[トニー・ジョー・ホワイト]]が発表したヒット曲ポーク・サラダ・アニー("Polk Salad Annie")』の"Polk" とは、豚肉(Pork)ではなく本種のことを指している<ref>[https://southernspaces.org/2011/mess-poke Adams, Alison. "A Mess Of Poke". Southern Spaces.] 2011年10月17日記事</ref>。
アメリカ合衆国ではかつて着色料として安価なワインなどに用いられたが、毒性を持つために現在は使用されていない。また、かつては主に[[アラバマ州]]などの南部地域において、若芽を茹でこぼして毒を抜いた上で食用にするところもあり([[ソウルフード]]を参照)、[[トニー・ジョー・ホワイト]]が1968年に発表したヒット曲「[[ポーク・サラダ・アニー]](Polk Salad Annie)」の"Polk" とは、豚肉(Pork)ではなく本種のことを指している<ref>[https://southernspaces.org/2011/mess-poke Adams, Alison. "A Mess Of Poke". Southern Spaces.] 2011年10月17日記事</ref>。


== 食用の「山ごぼう」との違い ==
== 食用の「山ごぼう」との違い ==
味噌漬けなどに加工して売られている山菜の「山ごぼう」は、本種または近縁の在来種[[ヤマゴボウ]]とは全く異なる、[[キク科]]に属する[[アザミ]]の一種である[[モリアザミ]]か野菜の[[ゴボウ]]の根であり、類縁関係は遠い。
味噌漬けなどに加工して売られている山菜の「山ごぼう」は、本種または近縁の在来種[[ヤマゴボウ]]とは全く異なる、[[キク科]]に属する[[アザミ]]の一種である[[モリアザミ]]か野菜の[[ゴボウ]]の根であり、類縁関係は遠い。

== 取り上げた作品 ==
*「インクベリー (feat. [[初音ミク]])」(ルシノ)
*「[[ポーク・サラダ・アニー]]」([[トニー・ジョー・ホワイト]]) - 上記参照。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
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== 参考文献 ==
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
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* [[有毒植物]]
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* [[帰化植物]]
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== 外部リンク ==
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* [https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000079871.html ヨウシュヤマゴボウ] - 厚生労働省
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2024年8月16日 (金) 04:07時点における最新版

ヨウシュヤマゴボウ
ヨウシュヤマゴボウ
ヨウシュヤマゴボウ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
: ナデシコ目 Caryophyllales
: ヤマゴボウ科 Phytolaccaceae
: ヤマゴボウ属 Phytolacca
: ヨウシュヤマゴボウ P. americana
学名
Phytolacca americana L. (1753)[1]
和名
ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡)、アメリカヤマゴボウ
英名
Pokeweed
  • P. a. var. americana
  • P. a. var. rigida

ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡、学名: Phytolacca americana)はヤマゴボウ属多年草。別名はアメリカヤマゴボウ[2]

分布

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別名の通り北アメリカ原産で、日本では明治時代初期以降に各地で繁殖している帰化植物である[2]。市街地の空き地や造成地、庭などで見られる[2]

形態・生態

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多年生の草本[2]。高さは1 - 2メートル (m) 前後に達する[2]は直立して無毛で赤く[2]、根は太く長い。は大きな卵状楕円形で、無毛でやわらかく[2]、秋になると紅葉する。

花期は初夏から秋にかけて(6 - 9月)[2]。白色ないし薄紅色の花からなる花穂を枝先に付け、花後は扁平な果実を付けた果穂となって垂れ下がり、初秋に黒紫色に熟す[2]。熟した果実は柔らかく、潰すと赤紫色の果汁が出る。この果汁は強い染料で、衣服や皮膚に付くとなかなか落ちない。この特性のため、アメリカ合衆国ではポークウィード(Pokeweed)[注 1]インクベリー(Inkberry)などとも呼ばれており、簡易的なインクの代わりに使用される[要出典]

毒性

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ヨウシュヤマゴボウは有毒植物で、全体にわたってがあり、果実も有毒である。毒性は、根>葉>果実の順であるが、果実中の種子は毒性が高い[2]

毒成分は、アルカロイドであるフィトラッカトキシン(phytolaccatoxin)、サポニンであるフィトラッカサポニン(phytolaccasaponins)、アグリコンであるフィトラッキゲニン(phytolaccigenin)などである。また、根には硝酸カリウムが多く含まれる。

誤食すると、2時間ほど経過後に強い嘔吐下痢が起こり、摂取量が多い場合は瞳孔を開き、強い興奮状態、精神錯乱から、さらに中枢神経麻痺から痙攣や意識障害が生じ、最悪の場合には呼吸障害や心臓麻痺を引き起こして死に至る[2]。幼児の場合は、種子を破砕した果汁を誤飲すると、果実数粒分でも重篤な症状を引き起こしうるために十分な警戒を要する。

根や種子には、植物タンパク質の一種であるポークウィードマイトジェン(PWM: Pokeweed Mitogen)、ポークウィード抗ウイルスタンパク質(PAP: Pokeweed Anti-viral Protein)などが含まれる。これらの物質も毒性をもつが、同時に有用な薬理作用をもつものと期待され、研究が進められている。

アメリカ合衆国ではかつて着色料として安価なワインなどに用いられたが、毒性を持つために現在は使用されていない。また、かつては主にアラバマ州などの南部地域において、若芽を茹でこぼして毒を抜いた上で食用にするところもあり(ソウルフードを参照)、トニー・ジョー・ホワイトが1968年に発表したヒット曲「ポーク・サラダ・アニー(Polk Salad Annie)」の"Polk" とは、豚肉(Pork)ではなく本種のことを指している[3]

食用の「山ごぼう」との違い

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味噌漬けなどに加工して売られている山菜の「山ごぼう」は、本種または近縁の在来種ヤマゴボウとは全く異なる、キク科に属するアザミの一種であるモリアザミか野菜のゴボウの根であり、類縁関係は遠い。

取り上げた作品

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脚注

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注釈

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  1. ^ Poke は、かつて赤色染料の原料として用いられていた多年草のパクーン(Puccoon)に由来する。また weed は雑草のことである。

出典

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参考文献

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  • 金田初代、金田洋一郎(写真)『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年9月24日、188頁。ISBN 978-4-569-79145-6 
  • 佐竹義輔ほか編『日本の野生植物 草本2 離弁花類』平凡社、1982年。ISBN 4-582-53502-X 
  • 『牧野日本植物大図鑑』「北隆館」

関連項目

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外部リンク

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