を

を 教科書体

書き順

日本語

• 平仮名
• 五十音図: わ行 お段
• いろは順: 12番目　るの次、わの前
• 字源: 遠の草体
• 片仮名:ヲ
• ローマ字: o

発音

• IPA(?): /o/又はIPA: /ɰo/
• 歴史的には/o/音と独立に、/ɰo/音を表していたと考えられるが、近世においては区別なく前者の発音となった。ただし現代でも（長野県や愛媛県など）地方によっては/ɰo/音の発音が優勢なところもある。
• 現代仮名遣いにおいては助詞としてのみ用いられる。

助詞

を

1. 目的語を表す格助詞。
   1. 動作や作用の対象・目的であることを表す。
      • 花瓶を壊（こわ）す。
      • 本を読（よ）む。
   2. 知覚的行為の対象であることを表す。
      • 映画を見る。
      • 遠くで人の声を聞いた。
   3. 感情を伴う行為の対象であることを表す。
      • 合格を喜ぶ。
      • 理不尽をなげく。
   4. 「する」を含む熟語中での形式的な対象であることを表す。
      • けがをする。病気をする。
      • 損をする。得をする。
      • 変な顔をする。
   5. 授受やそれに類する行為の対象であることを表す。
      • おみやげをもらう/くれる/あげる。
      • 英語を教わる/教える。
      • お寿司をごちそうになる/ごちそうする。
      • 金を借りる/貸す。
      • 荷物をあずかる/あずける。
      • 秘伝をさずかる/さずける。
   6. 能格動詞^(wp)の他動詞としての対象であることを表す。
      • これで放送を終わります。
      • 学校を変わった。
      • 席を移る。部署を移る。
      1. 将棋用語では駒の動きに関して拡張的に用いられることがある。
         • 玉を逃げる。角を上がる。桂を跳ねる。銀を立つ。歩を成る。
      2. 俳句などの文芸でも拡張的な用法が見られる。
         • 松の戸や春を薫るは宿の妻（正岡子規）
   7. 変化の対象であることを表す。
      • 空き地を花壇に変える。
      • 子供を僧侶にする。
   8. 動作や作用が及んだ結果となることを表す。
      • お湯を沸かす。（←水を沸かしてお湯にする）
      • ご飯を炊く。（←米を炊いてご飯にする）
      • 嫁をもらう。（←娘をもらって嫁にする）
      • 養子をむかえる。（←人をむかえて養子にする）
      • 公用車を購入する。（←自動車を買って公用車にする）
      • 穴を掘る。（←地面を掘って穴を作る）
   9. 所有するものに動作や作用が及ぶ受身の文、いわゆる「所有の受身文」の動作対象を表す。
      • 足を踏まれる。
      • 金をとられる。
      • 成績をほめられる。
   10. いわゆる「迷惑の受身文」の動作対象を表す。
       • 隣にビルを建てられて日当たりが悪くなった。
   11. 自動詞の使役表現における行為主体を表す。
       • お客さんを爆笑させた。
       • 車を走らせる。
2. 起点を表す格助詞。
   1. 出るやそれに類する動詞で、移動の起点を表す。から。
      • 7時には家（いえ）を出（で）る。
      • 車を下りる。
      • 危機を脱する。
      • 道を外れる。 道をそれる。
   2. やめるやそれに類する動詞で、異動、処分などの起点や所属元を表す。
      • 役職を離れる。職を退く。
      • 会社を定年になる。会社を首になる。
      • 組織を除名される。
      • 学校を停学になる。
      • グループをぬける。
      • 担当をはずれる。
      • 学校をやすむ。
      • 大学をおちる/すべる/不合格になる。
   3. 時期を示す際の起点を表す。
      • 今をさかのぼること30余年前。
      • その年を隔たるはるか後代。
3. 経路を表す格助詞。
   1. 通過する場所を表す。
      • 坂（さか）を登（のぼ）る。
      • 川を下る。
      • 世界を旅する。
      • 空を飛ぶ。
      • 川が平野を流れる。
      • 道を急ぐ。
   2. 相対的な位置や順序を表す。
      • 右側（みぎがわ）を歩（ある）く。
      • 前を行く。
      • 三番手を走っている。
      • 四番を打つ。
   3. 動作・作用が継続する時間・期間を表す。
      • 激動の時代を生（い）きる。
      • 毎日をのんびり過ごす。
      • 生涯を神に仕える。
      • 5回を投げて被安打3、失点1だった。
      • 春の日を鼓のひものゆるみけり（正岡子規）
   4. 状況を表す。
      • 雪中を行軍する。
      • 逃げようとしたところをつかまる。
      • 路上で倒れているのを発見された。
      • 一点差をしのぎきる。
      • そこをなんとかお願いできませんか。
      1. 「ものを」「ところを」「のを」などの形で、逆接のニュアンスを持つ接続助詞のように用いられることがある。
         • すんでのところを助かった。
         • そのままでうまくいくものを余計なことをしてだめにしてしまった。
      2. 後悔や失意などを表す終助詞のように用いられることもある。
         • あんなことがなければきっとつつがなく暮らしていたものを。
4. 方向や目標などを表す。
   1. 方向を表す。
      • 東を向く。
   2. 目標とすべき地点や時点、出来事などを表す。
      • 期日を遅れて支払う。
      • もう大阪を過ぎた。
      • 台風を前に備える。
      • 一二を争う。
5. 時間・距離などの比較差を表す。
   • 資本主義史において当時他国に二十年を先んじていた英国（服部之総「尊攘戦略史」）
   • 欧米から十年を遅れて本格的に普及しはじめた。

用法

一つの単文の中で、をは一つしか使われない。従って目的語と経路のをは共存できない。

• 馬（うま）を通（とお）す。
• 門（もん）を通す。
• *馬を門を通す。（誤り）

移動の起点を表すをは、終点を表すにと共存しない。

• 森（もり）を出る。
• 草原（くさはら）に出る。
• *森を草原に出る。（誤り）

派生語

• てにをは
• をば
• をして

翻訳

同様の機能を有する語

• スペイン語: a ^(es) (前置詞；目的語が人の場合のみ)
• 中国語: 把 ^(zh)
• 朝鮮語: 을 ^(ko) (ŭl)（パッチムのある場合）、를 ^(ko) (rŭl)（パッチムのない場合）
• ビルマ語: ကို ^(my) (kui)
• ヘブライ語: את‎ ^(he)

文字コード

• Unicode
  • 16進: 3092 を
  • 10進: 12434 を