30-30クラブ
30-30クラブ(the 30-30[1] club)は、メジャーリーグベースボールにおいて、シーズンに30本以上の本塁打と30個以上の盗塁を同時に記録した選手達をいう。パワーとスピードの両方を兼ね備えた者のみが達成可能な記録である。
概要
編集第1号は1922年のケン・ウィリアムズだが、当時はベーブ・ルースに代表されるようにパワーベースボール全盛の時代で、この記録はあまり重要性を持たず、その後30年以上にわたって達成者がいなかった。
1969年から1978年にかけて、ボビー・ボンズが5度達成し、この記録のパイオニアとも言える存在となった。そして、1983年にデール・マーフィーがこの記録を達成してMVPを獲得した頃から注目されるようになった。
その後、パワーとスピードを兼ね備えた選手がもてはやされることとなり、先述マーフィーは史上6人目(11回目)の達成者であったが、1987年から2021年にかけての35年間で、37人が延べ54回達成している。
また、40本塁打40盗塁を達成した選手を示す「40-40クラブ」(the 40-40 club)もあり[2]、1988年のホセ・カンセコがその第1号である[2]。2024年シーズン終了時点で6人の達成者がおり[2]、このうちアルフォンソ・ソリアーノは二塁打も40本を超えている。また、2024年9月19日に大谷翔平はMLB史上初の50本塁打50盗塁を達成した。
なおNPBでは2023年シーズン終了時点で40本塁打40盗塁を達成した選手は存在していない[3](40本塁打40盗塁に最も近づいたのは、1987年に記録した秋山幸二の43本塁打38盗塁[3][4])。
30-30達成者
編集2023年シーズン終了時点での「30-30クラブ」達成者は下記の通り。なお、「40-40クラブ」(40本塁打40盗塁)達成者については、表内で太字掲載している。
達成順 |
年度 |
受賞選手 |
回数 |
所属チーム |
本塁打 |
盗塁 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1922 | ケン・ウィリアムズ | セントルイス・ブラウンズ[注 1] | 39 | 37 | |
2 | 1956 | ウィリー・メイズ | ニューヨーク・ジャイアンツ | 36 | 40 | |
3 | 1957 | ウィリー・メイズ | 2度目 | ニューヨーク・ジャイアンツ | 35 | 38 |
4 | 1963 | ハンク・アーロン | ミルウォーキー・ブレーブス | 44 | 31 | |
5 | 1969 | ボビー・ボンズ | サンフランシスコ・ジャイアンツ | 32 | 45 | |
6 | 1970 | トミー・ハーパー | ミルウォーキー・ブルワーズ | 31 | 38 | |
7 | 1973 | ボビー・ボンズ | 2度目 | サンフランシスコ・ジャイアンツ | 39 | 43 |
8 | 1975 | ボビー・ボンズ | 3度目 | サンフランシスコ・ジャイアンツ | 32 | 30 |
9 | 1977 | ボビー・ボンズ | 4度目 | カリフォルニア・エンゼルス | 37 | 41 |
10 | 1978 | ボビー・ボンズ | 5度目 | シカゴ・ホワイトソックス →テキサス・レンジャーズ |
31 | 43 |
11 | 1983 | デール・マーフィー | アトランタ・ブレーブス | 36 | 30 | |
12 | 1987 | ダリル・ストロベリー | ニューヨーク・メッツ | 39 | 36 | |
13 | 1987 | エリック・デービス | シンシナティ・レッズ | 37 | 50 | |
14 | 1987 | ハワード・ジョンソン | ニューヨーク・メッツ | 36 | 32 | |
15 | 1987 | ジョー・カーター | クリーブランド・インディアンス | 32 | 31 | |
16 | 1988 | ホセ・カンセコ | オークランド・アスレチックス | 42 | 40 | |
17 | 1989 | ハワード・ジョンソン | 2度目 | ニューヨーク・メッツ | 36 | 41 |
18 | 1990 | バリー・ボンズ | ピッツバーグ・パイレーツ | 33 | 52 | |
19 | 1990 | ロン・ガント | アトランタ・ブレーブス | 32 | 33 | |
20 | 1991 | ハワード・ジョンソン | 3度目 | ニューヨーク・メッツ | 38 | 30 |
21 | 1991 | ロン・ガント | 2度目 | アトランタ・ブレーブス | 32 | 34 |
22 | 1992 | バリー・ボンズ | 2度目 | ピッツバーグ・パイレーツ | 34 | 39 |
23 | 1993 | サミー・ソーサ | シカゴ・カブス | 33 | 36 | |
24 | 1995 | バリー・ボンズ | 3度目 | サンフランシスコ・ジャイアンツ | 33 | 31 |
25 | 1995 | サミー・ソーサ | 2度目 | シカゴ・カブス | 36 | 34 |
26 | 1996 | バリー・ボンズ | 4度目 | サンフランシスコ・ジャイアンツ | 42 | 40 |
27 | 1996 | バリー・ラーキン | シンシナティ・レッズ | 33 | 36 | |
28 | 1996 | ダンテ・ビシェット | コロラド・ロッキーズ | 31 | 31 | |
29 | 1996 | エリス・バークス | コロラド・ロッキーズ | 40 | 32 | |
30 | 1997 | バリー・ボンズ | 5度目 | サンフランシスコ・ジャイアンツ | 40 | 37 |
31 | 1997 | ジェフ・バグウェル | ヒューストン・アストロズ | 43 | 31 | |
32 | 1997 | ラリー・ウォーカー | コロラド・ロッキーズ | 49 | 33 | |
33 | 1997 | ラウル・モンデシー | ロサンゼルス・ドジャース | 30 | 32 | |
34 | 1998 | アレックス・ロドリゲス | シアトル・マリナーズ | 42 | 46 | |
35 | 1998 | ショーン・グリーン | トロント・ブルージェイズ | 35 | 35 | |
36 | 1999 | ジェフ・バグウェル | 2度目 | ヒューストン・アストロズ | 42 | 30 |
37 | 1999 | ラウル・モンデシー | 2度目 | ロサンゼルス・ドジャース | 33 | 36 |
38 | 2000 | プレストン・ウィルソン | フロリダ・マーリンズ | 31 | 36 | |
39 | 2001 | ボビー・アブレイユ | フィラデルフィア・フィリーズ | 31 | 36 | |
40 | 2001 | ホセ・クルーズ・ジュニア | トロント・ブルージェイズ | 34 | 32 | |
41 | 2001 | ブラディミール・ゲレーロ | モントリオール・エクスポズ | 34 | 37 | |
42 | 2002 | アルフォンソ・ソリアーノ | ニューヨーク・ヤンキース | 39 | 41 | |
43 | 2002 | ブラディミール・ゲレーロ | 2度目 | モントリオール・エクスポズ | 39 | 40 |
44 | 2003 | アルフォンソ・ソリアーノ | 2度目 | ニューヨーク・ヤンキース | 38 | 35 |
45 | 2004 | ボビー・アブレイユ | 2度目 | フィラデルフィア・フィリーズ | 30 | 40 |
46 | 2004 | カルロス・ベルトラン | カンザスシティ・ロイヤルズ → ヒューストン・アストロズ |
38 | 42 | |
47 | 2005 | アルフォンソ・ソリアーノ | 3度目 | テキサス・レンジャーズ | 36 | 30 |
48 | 2006 | アルフォンソ・ソリアーノ | 4度目 | ワシントン・ナショナルズ | 46 | 41 |
49 | 2007 | デビッド・ライト | ニューヨーク・メッツ | 30 | 34 | |
50 | 2007 | ジミー・ロリンズ | フィラデルフィア・フィリーズ | 30 | 41 | |
51 | 2007 | ブランドン・フィリップス | シンシナティ・レッズ | 30 | 32 | |
52 | 2008 | グレイディ・サイズモア | クリーブランド・インディアンス | 33 | 38 | |
53 | 2008 | ハンリー・ラミレス | フロリダ・マーリンズ | 33 | 35 | |
54 | 2009 | イアン・キンズラー | テキサス・レジャーズ | 30 | 31 | |
55 | 2011 | マット・ケンプ | ロサンゼルス・ドジャース | 39 | 40 | |
56 | 2011 | ライアン・ブラウン | ミルウォーキー・ブルワーズ | 33 | 33 | |
57 | 2011 | ジャコビー・エルズベリー | ボストン・レッドソックス | 32 | 39 | |
58 | 2011 | イアン・キンズラー | 2度目 | テキサス・レジャーズ | 32 | 30 |
59 | 2012 | マイク・トラウト | ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム | 30 | 49 | |
60 | 2012 | ライアン・ブラウン | 2度目 | ミルウォーキー・ブルワーズ | 41 | 30 |
61 | 2018 | ホセ・ラミレス | クリーブランド・インディアンス | 39 | 34 | |
62 | 2018 | ムーキー・ベッツ | ボストン・レッドソックス | 32 | 30 | |
63 | 2019 | ロナルド・アクーニャ・ジュニア | アトランタ・ブレーブス | 41 | 37 | |
64 | 2019 | クリスチャン・イエリッチ | ミルウォーキー・ブルワーズ | 44 | 30 | |
65 | 2021 | セドリック・マリンズ | ボルチモア・オリオールズ | 30 | 30 | |
66 | 2023 | ロナルド・アクーニャ・ジュニア | 2度目 | アトランタ・ブレーブス | 41 | 73 |
67 | 2023 | フリオ・ロドリゲス | シアトル・マリナーズ | 32 | 37 | |
68 | 2023 | フランシスコ・リンドーア | ニューヨーク・メッツ | 31 | 30 | |
69 | 2023 | ボビー・ウィット・ジュニア | カンザスシティ・ロイヤルズ | 30 | 49 | |
70 | 2024 | 大谷翔平 | ロサンゼルス・ドジャース | 54 | 59 | |
71 | 2024 | ホセ・ラミレス | 2度目 | クリーブランド・ガーディアンズ | 39 | 41 |
72 | 2024 | ボビー・ウィット・ジュニア | 2度目 | カンザスシティ・ロイヤルズ | 32 | 31 |
エピソード他
編集- ポジション別に見ると、外野手の達成者が圧倒的に多く、投手、捕手は0。指名打者は大谷翔平のみ。内野手は下記の通り。
- 一塁手…ジョー・カーター(一塁84試合・外野62試合の兼任)、ジェフ・バグウェル
- 二塁手…アルフォンソ・ソリアーノ(4回目の2006年のときは外野手)、ブランドン・フィリップス、イアン・キンズラー
- 三塁手…トミー・ハーパー、ハワード・ジョンソン、デビッド・ライト、ホセ・ラミレス
- 遊撃手…バリー・ラーキン、アレックス・ロドリゲス、ジミー・ロリンズ、ハンリー・ラミレス、フランシスコ・リンドーア、ボビー・ウィット・ジュニア(2回達成、遊撃手で複数回は史上初)
- 最多はボビーとバリーのボンズ親子で各5回。以下、ソリアーノ4回、ハワード・ジョンソンが3回。2回は2023年時点で10人。
- ボンズ親子は現時点で唯一の親子での達成者でもある。
- 「50-50クラブ」は2024年シーズンの大谷翔平まで達成者がいなかった。2023年シーズンまでに、異なる年度で50盗塁、50本塁打を片方ずつ達成しているのは下記の2人のみ。
- バリー・ボンズ(1990年に53盗塁、2001年に73本塁打。)
- ブレイディ・アンダーソン(1992年に53盗塁、1996年に50本塁打。)
- 「30-50クラブ」(30本塁打50盗塁)は4人達成者がいる(1987年のエリック・デービス、1990年のバリー・ボンズ、2023年のロナルド・アクーニャ・ジュニア、2024年の大谷翔平)。
- その逆の「50-30」(50本塁打30盗塁)は長らく達成者がいなかったが、2024年シーズンに大谷翔平が達成した(それまでは、「30-30」達成者の中では1997年のラリー・ウォーカーの49本塁打が最多だった)。
- 「50-20」は達成者が5人おり、ウィリー・メイズ、ブレイディ・アンダーソン、ケン・グリフィー・ジュニア、アレックス・ロドリゲス、大谷翔平が達成している。
- 「40-30」は達成者が12人おり15度達成されている。
- 「30-40」は達成者が18人おり23度達成されている。
- 表には含まれないが、「20-80」の達成者は2人(3回)いる。
- リッキー・ヘンダーソン(1985年:24本塁打80盗塁、1986年:28本塁打87盗塁)
- エリック・デービス(1986年:27本塁打80盗塁)
- 同じチームで同一シーズンに複数の「30-30」達成者が出たのは下記の2チーム(詳細は上表参照)。
- 1987年のニューヨーク・メッツ(ダリル・ストロベリー、ハワード・ジョンソン)。
- 1996年のコロラド・ロッキーズ(ダンテ・ビシェット、エリス・バークス)。
- 1991年、ハワード・ジョンソンは30-30と同時に30失策を記録した(史上初、現在まで唯一[注 2])。
- ナ・リーグ所属チームの選手が多く、2023年までの達成者の中で、ア・リーグ所属チームの選手は19人がのべ22回達成しているのみである。(アルフォンソ・ソリアーノがニューヨーク・ヤンキース・テキサス・レンジャーズ時代に1人で3回達成している。シーズン途中にリーグをまたいで移籍した1978年のボビー・ボンズと2004年のベルトランは除く。)
- 2011年のカーティス・グランダーソンは史上初の40本塁打、10三塁打、25盗塁を達成した。
- 2012年のマイク・トラウトは史上初の新人での達成者となった。
- 2024年の大谷翔平は史上初の指名打者での達成者となった。また、30-30達成時108試合は史上最速だった。
- 2024年ボビー・ウィット・ジュニアが2回目を達成、遊撃手で複数回は史上初。
関連項目
編集脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ “ドジャース・大谷翔平、日本人選手初の『30-30』達成 マルチ安打&自身初1試合3盗塁の大暴れ”. news.yahoo.co.jp. BASEBALLKING (2024年8月4日). 2024年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月4日閲覧。
- ^ a b c “40-40 club: 40 steals, 40 homers in a season”. MLB.com. (2020年4月10日) 2023年9月28日閲覧。
- ^ a b “メジャーですら4人、阪神1位佐藤40-40の期待”. 日刊スポーツ. (2020年10月27日) 2020年12月1日閲覧。
- ^ “走れぬ大砲が野球をつまらなくする? 「トリプル3」どころか「40本-40盗塁」を追う大リーガーを見習え”. 産経ニュース. (2015年10月10日) 2020年12月1日閲覧。
- ^ 1963年、33本塁打41盗塁
- ^ 1980年、31本塁打39盗塁
- ^ 1987年、43本塁打38盗塁。1990年、35本塁打51盗塁
- ^ 2001年、30本塁打44盗塁
- ^ 2019年、35本塁打33盗塁