デキストリン
デキストリン (dextrin、糊精) は、デンプン[1]またはグリコーゲン[2]の加水分解で得られる低分子量の炭水化物の総称である。α-グルコースがα-(1→4) または α-(1→6)グリコシド結合によって重合した分子構造である。多糖類に分類され、デンプンとマルトースの中間にあたる。
デキストリン | |
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識別情報 | |
CAS登録番号 | 9004-53-9 |
PubChem | 62698 |
ChemSpider | NA |
UNII | 2NX48Z0A9G |
E番号 | E1400 (追加化合物) |
KEGG | C00721 |
特性 | |
化学式 | (C6H10O5)n |
外観 | 白または黄色の粉末 |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
種類
編集デキストリンは、DE(デキストロース当量値,en:dextrose equivalent)と呼ばれる、デンプンの糖化率を示す尺度により分類されている。
DE(デキストロース当量値)は、ブドウ糖の還元力を100とした場合の相対的な尺度で、0に近いほどデンプンに近い特性、100に近いほどブドウ糖に似た特性を表している。経験的に、120/DE はデンプン分解物の重合度(DP)を表し、平均分子量の指標とみなせる。
デキストリンは、(デキストロース当量値)によって、以下のように分類されている。
- 粉あめ(DE 20~40程度、重合度3~6)
- マルトデキストリン(DE 10~20程度、重合度6~10)
- デキストリン(DE 10 以下、重合度12以上)
特にDEが低いものは、溶解性の低さ、冷蔵や冷凍融解時の老化による白濁や沈殿、あるいは粉臭などの問題点がある。
デキストリンを短時間低温加熱したものを可溶性デンプンという。また、環状構造を持つデキストリンを環状デキストリンという。
性質
編集構造中に多数のヒドロキシ基を持つため水溶性である。ただし、分子量の増加とともに水への溶解性は低下していく(難溶性デキストリン)。ヨウ素デンプン反応では、赤色・小豆色に呈色する。生体内では、アミラーゼによってマルトースに分解され、最終的にグルコースとなるが、一部、アミラーゼによって分解しにくい成分があり、これを精製して得られる難消化性デキストリンは、整腸作用と食後血糖上昇抑制作用があることが報告されている[3]。
利用
編集デキストリンの種類によって用途は異なるが,粉状化粧品の固形化や、エキスの顆粒化、粘度の調整、皮膚への吸着剤、花火の結合剤として用いられている。食品にも用いられ、飲料の粘度の調整や、便秘解消を目的とした健康食品にも利用されている。
関連項目
編集脚注
編集- ^ An Introduction to the chemistry of plants - Vol II: Metabolic processes, P. Haas and T. G. Hill, London (Longmans, Green & Co.), 1913; pages 123-127
- ^ Salway, JG. Medical Biochemistry at a Glance. Second Edition. Malden, MA (Blackwell Publishing), 2006; page 66
- ^ 大隈一裕、松田功、勝田康夫、岸本由香、辻啓介「難消化性デキストリンの開発」『Journal of applied glycoscience』第53巻第1号、日本応用糖質科学会、2006年1月20日、65-69頁、NAID 10016738765。
外部リンク
編集- デキストリン - 素材情報データベース<有効性情報>(国立健康・栄養研究所)