コブミカン
コブミカン[2](瘤蜜柑、学名: Citrus hystrix)は、タイ、マレーシア原産[3]の柑橘類の1種である。
コブミカン | ||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
コブミカンの果実
| ||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
| ||||||||||||||||||||||||||||||
学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Citrus hystrix DC.[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
コブミカン(瘤蜜柑) プルット スワンギ | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Kaffir lime Makrud lime |
別名にスワンギ (swangi)[2]、プルット (purut)。英語ではカフィア・ライム (kaffir lime) とも呼ばれるが、ライム (Citrus aurantifolia) は別種である(種の認定を厳しくした場合も[4])。
香りがよいため東南アジア料理でよく使われ、裏庭の灌木として広く栽培されている。
特徴
編集緑色の果実をつけ、枝には棘がある。
他の多くのミカン属の植物同様に葉柄部分の左右に翼(よく)があるが、葉柄部分と葉身部分の大きさの差があまり無いため、葉全体が二段になっているように見える。この葉は強い芳香を持ち、煮込み料理用ハーブとして使われる。
緑色の実はそのごつごつとした外観とおよそ4cmほどの小さなサイズが特徴である。
栽培
編集鉢植えにも向く。
日本でも関東以西で、冬季の霜や雪に遭わなければ屋外で栽培が可能である。
東南アジアの各国から生の果実や枝を検疫を受けずに日本国内に持ち込むことは防疫上禁止されている。
名称
編集コブミカンの各国での名称:
- ミャンマー: シャウッ・ヌ (shauk-nu、ရှောက်နု ビルマ語発音: [ɕaʊʔ.nṵ][5]), shauk-waing
- カンボジア: クローイ・サウイ (krauch soeuch、ក្រូចសើច); 葉は スラック・クローイ・サウイ (ស្លឹកក្រូចសើច)
- 中国: 箭葉橙(jiànyèchéng)、馬蜂柑(mǎfēnggān)、泰國青檸(広東語 Taai3gwok3 ching1ning4)、泰國柑(閩南語 Thai-kok-kam)
- マレーシア: リマウ・プルッ (limau purut)
- インドネシア: ジェルク・プルット jeruk purut, ジェルク・リモ (jeruk limo), ジェルク・サンバル (jeruk sambal)
- フィリピン: スワンギ (swangi)
- ベトナム: チャプ (trấp)
- スリランカ: kahpiri dehi, odu dehi, kudala-dehi
- タイ: マクルー (makrùut、มะกรูด); 葉のことは「バイマクルー」という[6]。
- ラオス: makgeehoot
- マダガスカル: コンバヴァ (combava, combawa, cumbava, cumbaba)
"The Oxford Companion to Food" (ISBN 0-19-211579-0) ではカフィア・ライムの呼称を避け、マクルード・ライム (makrud lime) という呼称を支持している。カフィア (kaffir) には黒人や異教徒を指す侮辱的な意味があり、この植物をカフィア・ライムと呼ぶ明確な理由もないからである(このため、南アフリカではこの植物を「K-ライム」と呼んでいる)。しかしながら、世界的にはカフィア・ライムという呼称の方が広く使われている。
利用
編集料理
編集砂時計のような形状の葉はさわやかな香りがあり、クルウングと呼ばれるペーストのベースとなり、タイ料理、ラオス料理、カンボジア料理で広く使われる。タイ料理ではトムヤムクンやグリーンカレーなどに使われる[6]。またインドネシア料理(特にバリ島、ジャワ島)でもポピュラーで、サユール・アサム(「酸っぱいスープ」の意味)等で使われ、またインドネシア産ベイ・リーフと共に鶏料理、魚料理に使われる。マレー料理やミャンマー料理でも見ることができる。
生のまま、あるいは乾燥させて使うが、冷凍保存したものもある。
果実の外皮はレユニオン島やマダガスカル島でクレオール料理によく使われ、お酒やスパイスド・ラムの香りづけにも使われる。
医療
編集果汁と果皮はインドネシアの医療で使用される。このため、この果実はインドネシアではジェルク・オバット(「薬のミカン」という意味)と呼ばれることがある。果皮から取れる油には強い殺虫効果がある。また近年の研究で、コブミカンの葉は複素環アミン類等の変異原物質に対して強い抗変異原性を示すことが明らかになっており、発がんリスクを低減できると考えられている[7]。
その他の利用
編集脚注
編集- ^ “TPL, treatment of Citrus hystrix DC.”. The Plant List; Version 1. (published on the internet). Royal Botanic Gardens, Kew and the Missouri Botanical Garden (2010年). March 9, 2013閲覧。
- ^ a b 熱帯植物研究会 編『熱帯植物要覧』(第4版)養賢堂、1996年、231頁。ISBN 4-924395-03-X。
- ^ 山岡彬雄 (2009), “柑橘類”, 世界大百科事典, 2009年改定新版, 平凡社
- ^ スウィングル、ホジソンいずれの分類でも
- ^ Myanmar-English Dictionary. Rangoon: Dept. of the Myanmar Language Commission, Ministry of Education, Union of Myanmar. (1993)
- ^ a b 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日、98頁。ISBN 978-4-415-30997-2。
- ^ :中原和彦 コブミカン(Citrus hystrix)の葉に含まれる抗変異原物質フラノクマリンの同定 国際農林水産業研究成果情報 第17 号(2009年度)-122013年6月19日閲覧
参考文献
編集外部リンク
編集- 植物防疫法施行規則:植物防疫所