カジノ (映画)
『カジノ』(Casino)は1995年のアメリカ合衆国の犯罪映画。監督マーティン・スコセッシ、主演ロバート・デ・ニーロ。ある天才賭博師を通じて、まだマフィアの支配下にあった1970年代から80年代のラスベガスを描いている。
カジノ | |
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Casino | |
監督 | マーティン・スコセッシ |
脚本 |
ニコラス・ピレッジ マーティン・スコセッシ |
原作 |
ニコラス・ピレッジ 『カジノ』 |
製作 | バーバラ・デ・フィーナ |
出演者 |
ロバート・デ・ニーロ シャロン・ストーン ジョー・ペシ |
音楽 | ロビー・ロバートソン |
撮影 | ロバート・リチャードソン |
編集 | セルマ・スクーンメイカー |
製作会社 |
ユニバーサル・ピクチャーズ Syalis D.A. レジョンド・アントルプリズ デ・フィーナ/キャッパ |
配給 |
ユニバーサル・ピクチャーズ ユニバーサル/UIP |
公開 |
1995年11月22日 1996年4月20日 |
上映時間 | 178分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
製作費 | $52,000,000 |
興行収入 | $116,112,375[1] |
ニコラス・ピレッジのノンフィクション『カジノ』を原作とし、大部分を事実・実話に基づいている。本作と同じくスコセッシ監督、デ・ニーロ及びペシ出演、ピレッジ原作で映画化された1990年作『グッドフェローズ』の成功を受けて製作されたスコセッシの「モブ・マフィアもの」第2弾という位置づけである[要出典]。
モデルになった人物は、フランク・"レフティ"・ローゼンタール(以下"レフティ"、映画では"エース")。レフティはベガスに来る以前には故郷のシカゴで有名なブックメーカー(ノミ屋)だったが、シカゴ、マイアミを経て1960年代末にベガスに移り住み、友人の紹介でラスベガス・ストリップを代表するカジノ「スターダスト(映画では"タンジール")」での仕事に就く。
レフティは、物語同様、実質的なボスの座に就いていたが、犯罪歴のあるレフティにはカジノ経営のライセンス発給を受ける事が困難であった。そこで、雇われ社長としてアレン・グリック(映画では"フィリップ・グリーン")が表向きの社長を務めることになった。
やがてカジノを任されるようになったレフティはますます出世した。
一方、シカゴ時代からの幼馴染のアンソニー・"トニー"・スピロトロ(映画では"ニッキー・サントロ")は、レフティの出世に刺激されて自分もベガスに移り住み、レフティの築いた地上の楽園を崩壊へと導いていくのだった。
ストーリー
編集1970年代。予想屋のサム・ロススティーン(通称エース)はその極めて高い的中率によってシカゴマフィアのボス達からも信頼されていた。 彼等は影響力を持つ全米トラック運転手組合を迂回することで、ラスベガスの巨大カジノ「タンジール」を所有し、その利益を掠め取ることで多額の利益を得ることを決めた。 そこで、ギャンブルを知り尽くした男としてエースを実質的な運営責任者に据えるのであった。エースはカジノ運営に必要な免許を持っていなかったが、見事に才覚を発揮しカジノ経営で多大な利益を挙げた。このエースの働きぶりにマフィアのボスらは満足し、またエース自身も地元の名士として知られる存在になっていった。 エースは高級娼婦のジンジャーに一目惚れするが彼女はポン引きなどの小悪党であるレスターに惚れていた。自由奔放なジンジャーだが、結婚して幸せな結婚生活を送れば次第に二人の愛が育まれるとプロポーズする。またエースの金を狙うレスターもジンジャーにエースとの結婚を勧めた。 こうしてエースとジンジャーの二人は結婚し、娘も誕生した。だが、ジンジャーが本当に好きなのはエースの「お金」だった。一方、シカゴのボスらは粗暴なニッキーをエースのボディーガードとしてラスベガスへ派遣する。ニッキーの悪漢ぶりを知るエースは彼の存在を危惧していたが、予想通りニッキーは暴走を始め、ベガスのノミ屋にみかじめ料を要求したりタンジール内でも仲間とイカサマを働き、横暴に振る舞うようになった。 ニッキーはエースから警告を受けるがこれを無視し、結果、警察からカジノへの出入りを一切禁止される。 ニッキーはやむを得ず、カジノにいた時に構築した情報網で上手く荒稼ぎすると、その金で表向きはレストランを経営し始めた。さらに故郷から弟や仲間を呼び寄せて強盗をするようになった。 ジンジャーはレスターに大金を渡すためにエースにお金をせびり続け、レスターとの関係が切れていなかったことがバレてしまう。 エースは見せしめにレスターを痛めつける。 また、エースは敏腕さと徹底的な管理システムで無能な従業員らを解雇するが、その中に地元有力者の息子が居て恨みを買う。やり過ぎなニッキー達によってタンジールに対する監視の目もキツくなり、マフィアのボス達への上納金も減り始めていた。そこでマフィアのボスらは、アンダーボスのピスカーノをカジノへ送り込み様子を探らせる。 タンジールの表向きの社長であったフィリップ・グリーンが女性と揉め事を起こして金の件で訴えられ、法廷でカジノの帳簿の提出を迫れた。マフィアへの横流しが発覚を恐れたニッキーは女性を殺害し、それによってエースまでもFBIの監視対象となってしまう。 エースはカジノ運営の免許を獲得するため奔走し始めるが、一方でニッキーはカジノの運営の邪魔者を次々と殺害しはじめ、カジノ運営の障害となっていく。 さすがのマフィアのボスたちもニッキーを問題視する。 結局、エースの免許申請は、ニッキー達のせいもあり不当に拒否される。怒ったエースは散々カジノで優待していた政治家たちを罵り、さらに自らテレビ番組を製作して、政治家や有力者を糾弾し始める。 マフィアのボスから譴責を受けたエースはニッキーのせいだと訴え、それを知ったニッキーはエースを罵り、2人の仲は険悪になる。 やがてジンジャーがレスターと寄りを戻そうと、エースに離婚と多額の慰謝料請求を主張し、エースはプライベートでも苛立ち始める。 酒や麻薬に溺れた始めたジンジャーはニッキーとも愛中になるが、すぐにマフィアのボス達の耳に入る。そうとは知らないジンジャーはついにエースの暗殺をニッキーにさせようとするが、無碍に断られ自暴自棄となる。 ジンジャーは家の金庫から金や宝石を持ち出して逃げようとするが、FBIに捕まる。これを皮切りに既にマフィア関係者らに盗聴や張り込みをしていたFBIはカジノの帳簿を抑えるなど、一斉検挙作戦に出た。 逮捕を逃れるため、マフィアのボスらは次々に命令を出して、カジノの関係者らの口封じを実行していく。 海外へ逃亡していたニッキーは弟と共に惨殺される。 ジンジャーはロサンゼルスで麻薬を過剰に摂取し死んだ。 そしてエースが自動車に乗ってエンジンをかけると、コンソールから発火し爆弾が破裂する。
キャスト
編集※括弧内は日本語吹替
- サム・“エース”・ロススティーン:ロバート・デ・ニーロ(津嘉山正種)
- ジンジャー・マッケンナ:シャロン・ストーン(勝生真沙子)
- ニコラス・“ニッキー”・サントロ:ジョー・ペシ(樋浦勉)
- レスター・ダイアモンド:ジェームズ・ウッズ(田中正彦)
- ビリー・シャーバート:ドン・リックルズ(島香裕)
- アンディ・ストーン:アラン・キング(宝亀克寿)
- フィリップ・グリーン:ケヴィン・ポラック(伊藤和晃)
- リモ・ガッジ:パスクァーレ・カヤーノ(藤本譲)
- パット・ウェッブ:L・Q・ジョーンズ(水野龍司)
- フランク・マリーノ:フランク・ヴィンセント(手塚秀彰)
- ドミニク・サントロ:フィリップ・スリアーノ(星野充昭)
- アーティ・ピスカーノ:ヴィニー・ヴェラ(福田信昭)
- ジョン・ナンス:ビル・アリソン(中博史)
- ドナルド・“ドン”・ウォード:ジョン・ブルーム
- チャーリー・“クリーン・フェイス”・クラーク:リチャード・リール(中博史)
- ヴィンセント・ボレリ:ジョセフ・リガノ(天田益男)
- K・K・イチカワ:ノブ・マツヒサ
- 本人役:オスカー・グッドマン(幹本雄之)
- ハリソン・ロバーツ上院議員:ディック・スマザーズ
エピソード
編集- ニッキーを演じたジョー・ペシは、モデルになったトニー・スピロトロと偶然にも体格が酷似しており(ペシは身長158 cm、スピロトロは157 cm)、関係者の中には本人と間違えてしまう者も出るほどだった。
- シャロン・ストーン演じるジンジャーもジェリー・マクギーという実在する人物で、ベガスの古豪カジノ「トロピカーナ」でレフティと出会いシーザーズ・パレスで挙式した。
- 「スターダスト」は、IBT(全米トラック運転手組合チームスターズ)の会長ジミー・ホッファが握る年金基金6200万ドルの融資を受けたアレン・グリックが経営した4軒のカジノのうちのひとつ。
- 原作者のニコラス・ピレッジは、レフティに取材を申し込んだが当初は拒否される。後に映画化するにあたり、デ・ニーロが主演すると発表されるとレフティは喜んで取材を受け入れた。
- レフティらマフィア関係者の弁護を担当したオスカー・グッドマンは、彼本人が実名で演じている。彼は1999年から2011年までラスベガスの市長を務めた。
- 映画の撮影に使われたカジノ「リビエラ」はモデルになったレフティの勤めていた「スターダスト」の向かい側に位置し、映画の中では「タンジール」という架空の名前になっている。
- 劇中で何度か描かれているデ・ニーロが乗ったキャデラックが爆破されるシーンは実際にあった出来事で、レフティ自身奇跡的に助かった。
- 劇中に登場する日本人ギャンブラーK・K・イチカワは、山梨県の不動産業兼貸金業『柏木商事』社長・柏木昭男がモデルである。やくざ顔負けの荒っぽい手法による地上げで財を成し[2]、カジノでの賭けの積極さから「戦士」と呼ばれたが、1992年1月3日に自宅兼事務所で何者かに約20カ所をメッタ刺しにされて殺害された。犯人は見つからず2007年に時効。この映画では、アメリカで有名となった料理人「ノブ・マツヒサ」こと松久信幸がイチカワを演じている。
- 映画のエンディングテーマは、ホーギー・カーマイケルの"STARDUST"という曲である。
ベガスと登場人物(本人)のその後
編集- レフティは1988年に過去の些細な犯罪歴が原因でベガスから追放されたが、後に本人曰く「変装して何度か行った」と告白している。2008年に、78歳で死去。死後、彼と妻のジェリーはFBIに協力する情報提供者だったことが明らかになった[3][4]。
- ジェリー・マクギーは、薬物過剰摂取が原因で1982年にロサンゼルスで死亡。
- IBTの会長ジミー・ホッファは1975年に自宅を出たきり行方不明、1982年に死亡認定される。
- シカゴ・アウトフィットのボスのジョゼフ・アイウッパ(映画では"リモ・ガッジ")は、1986年に懲役28年の有罪判決を受け服役、89歳で出獄。1997年老衰で死去。
- ニッキーとドミニクのサントロ兄弟の殺害シーンは、実際の事件を基にしている。アンソニー・スピロトロとマイケルは、1986年6月にインディアナ州のジョゼフ・アイウッパが所有していたハンティングロッジに近いベンソンビルの住宅へ呼び出され、地下室で殴打された挙句に近辺のトウモロコシ畑で生き埋めにされ殺害された(映画では、トウモロコシ畑へ直接呼び出されてバットにより殺害、埋められている)。この事件の実行犯ら14人が2005年になって起訴され、2007年までに有罪判決を受けている。
- スターダストは2006年に営業停止、2007年に爆破解体。スターダストを運営していたBOYD Gaming社の再開発プロジェクト「エシュロン・プレイス」が不況の影響で建設工事が中断。当初2010年開業予定だったが、2009年度時点で工事再開の見通しが立っていなかった。2013年3月にゲンティン・グループに売却。「リゾート・ワールド・ラスベガス」として2021年6月24日に開業。
- リビエラは2009年に約400万ドルの利払いの債務不履行に陥る。破産手続きが取られながらも営業を続けたが、2015年5月に閉鎖されている。
原作
編集- 『カジノ』 ニコラス・ピレッジ著、広瀬順弘訳、ハヤカワ文庫NF 1996年 ISBN 978-4150502003
作品の評価
編集Rotten Tomatoesによれば、批評家の一致した見解は「一部の視聴者にはマーティン・スコセッシ監督にとって安全牌のような印象を与えるかもしれない、おなじみの物語にもかかわらず、傑出したキャストによる印象的な熱意と華麗な演技のおかげで『カジノ』は成果をあげている。」であり、64件の評論のうち高評価は80%にあたる51件で、平均して10点満点中7.17点を得ている[5]。 Metacriticによれば、17件の評論のうち、高評価は13件、賛否混在は3件、低評価は1件で、平均して100点満点中73点を得ている[6]。
出典
編集- ^ “Casino” (英語). Box Office Mojo. 2020年8月6日閲覧。
- ^ 「「トランプ」が“世界最高のギャンブラー”と褒め称えた「山梨の不動産王」の正体」『週刊新潮』2016年3月17日号。
- ^ “‘Lefty’ Rosenthal was an FBI snitch” (英語). Las Vegas Review-Journal (2008年10月31日). 2024年4月10日閲覧。
- ^ “Las Vegas’ first female FBI agent was master of disguise” (英語). Las Vegas Review-Journal (2015年10月22日). 2024年4月10日閲覧。
- ^ “Casino (1995)” (英語). Rotten Tomatoes. 2020年8月6日閲覧。
- ^ “Casino Reviews” (英語). Metacritic. 2020年8月6日閲覧。