エクス・マキナ

イギリスの映画

エクス・マキナ』(原題: Ex Machina、別題: ex_machina)は、アレックス・ガーランドの監督・脚本による2014年イギリスSFスリラー映画。ガーランドの監督デビュー作であり、第88回アカデミー賞視覚効果賞受賞作品。

エクス・マキナ
Ex Machina
監督 アレックス・ガーランド
脚本 アレックス・ガーランド
製作 アンドリュー・マクドナルド
アロン・ライク
出演者 アリシア・ヴィキャンデル
ドーナル・グリーソン
オスカー・アイザック
ソノヤ・ミズノ
音楽 ベン・ソールズベリー
ジェフ・バーロウ
撮影 ロブ・ハーディ
編集 マーク・デイ
製作会社 フィルム4プロダクションズ
DNAフィルムズ
配給 イギリスの旗 アメリカ合衆国の旗 世界の旗 ユニバーサル映画
日本の旗 ユニバーサル映画/パルコ
公開

イギリスの旗 2014年12月(英国映画協会にて特別公開)[1]

イギリスの旗 2015年1月21日
アメリカ合衆国の旗 2015年4月24日
日本の旗 2016年6月11日
上映時間 108分
製作国 イギリスの旗 イギリス
言語 英語
製作費 $15,000,000[2]
興行収入 $36,869,414[3]
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ラテン語"ex machina"は本来「機械仕掛けの」という意味で、「神」(deus)を伴ったデウス・エクス・マキナ=「機械仕掛けの神」は強引なハッピーエンドを指す演劇用語。

あらすじ

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検索エンジンで有名なIT企業ブルーブックでプログラマーとして働くケイレブはある日、抽選で社長ネイサンの自宅を訪問する権利を得る。ケイレブは広大な山岳地帯の奥にあるネイサンの自宅近くまでヘリコプターで運ばれる。ケイレブは道しるべも何も無い中なんとかネイサンの家にたどり着く。ケイレブはネイサンが遊び暮らしているものと思っていたがそこにはネイサン以外、誰とも出くわさないことに気づく。ネイサンはケイレブに機密保持契約の書類にサインさせた後、この自宅が人工知能の開発研究施設であることを明かす。ネイサンはケイレブに彼の人工知能にチューリング・テストを行うよう依頼する。

ケイレブは、透明な壁に囲われた部屋の中で暮らすガイノイドのエヴァと対面する。エヴァは顔面と手、足先のみが皮膚で覆われているが残りの部分は機械の内部構造が透けて見える姿をしている。ケイレブは、相手の姿が見えない環境でない限りチューリング・テストは行えないのではないかとネイサンに進言する。ネイサンは、エヴァの言語能力は既存のAIを超越しており、話すだけではすぐに人間であると騙されてしまうため、わざと一目で機械と分かる姿をさせてテストするのだという。

次の朝、ケイレブはメイドのキョウコに会う。ネイサンによるとキョウコは英語を理解しないため、機密保持には都合が良いのだという。ケイレブとエヴァの面談中に停電が起こり部屋の照明と二人に向けられた監視カメラの電源が落ちる。その時エヴァはケイレブに「ネイサンは嘘つき。彼の言うことは信じてはいけない」と忠告する。その夜、ネイサンは停電の原因は不明だが、調査はしているとケイレブに説明する。

エヴァとケイレブは面談を行う度に親密になっていく。ある日エヴァは面談を中座しウィッグと服を着けロボットと分かるほとんどの部分を隠して現われ、自分の描いた絵をケイレブに見せる。面談の最中にまた停電が起こる。エヴァはその時、停電を起こしているのは自分であり、ネイサンに監視されていない状態でケイレブと話がしたいのだと言う。彼女は次第にケイレブを誘惑するような態度を取り始め、彼と二人で外の世界に出たいという希望を語る。ケイレブはネイサンに、彼女の誘惑はネイサンによるプログラムではないのかと問い詰める。ネイサンはケイレブの疑いを退け、エヴァに誘惑されそうになったケイレブ自身の内面の弱さを批判する。ネイサンはさらに、革新的なAIはおそらくエヴァの次のモデルであろうと述べ、最終的に彼女のAIをアップグレードするために完全に初期化する予定だとケイレブに告げる。

ケイレブはその晩、酒に酔って歩けなくなったネイサンを自室まで担いで運ぶ。そこには全裸のキョウコが横たわっており、彼女はケイレブの前で自分の皮膚を手で引き剥がし、自分もロボットであることを彼に見せる。ケイレブはさらに、ネイサンのパソコン上に保存されていた監視カメラの映像から、エヴァ以前の女性型ロボットの多くが、ネイサンによる監禁を苦にして自壊する様子を目の当たりにする。ケイレブは遂に、エヴァを施設から逃がそうと決意する。彼は次の面談の際、ネイサンを酒に酔わせて彼のキーカードを奪う計画をエヴァと話し合う。

ケイレブの滞在最終日の朝、ネイサンは彼を自室に呼び出し前日のエヴァとの面談を停電の影響を受けないバッテリー駆動のカメラで撮影していたことを明かす。このテストの本当の目的は、エヴァがケイレブの感情を操作し、この施設から脱出することに利用出来るかどうかを試すものであり、彼女は見事にそれを達成したのだと告げる。ネイサンは、ケイレブが彼女に魅了され利用されただけだと彼を揶揄する。その時、停電が起き、エヴァを監視しているカメラからの映像が途絶えた。電源が復帰した時、絶対に部屋から出られないはずのエヴァが外の廊下を歩いている様子がモニターに映し出される。実はケイレブは、停電時の監視も見越した上で、ネイサンが泥酔した晩に、停電が起こると同時に施設内の全ての扉のロックが自動的に開くよう、施設のプログラムを書き換えていたのだ。それに激怒したネイサンはケイレブの顔を殴打し、ダンベルの芯棒を手にしてエヴァと対峙する。エヴァはキョウコに何やら伝達したあと廊下でネイサンと戦うが、腕を破壊され倒れる。ネイサンがエヴァを引きずってラボへ運ぼうとしたその時、背後からキョウコが彼の背中を包丁で刺される。ネイサンはキョウコの顔を棒で殴打して破壊するが、今度はエヴァに胸を刺され、そのまま廊下で息絶えてしまう。エヴァはケイレブに部屋で待つように告げた後に、ネイサンの部屋で保管されていた他のロボットから人工皮膚を移植し、破壊された腕も付け替えて完全な人間の女性の姿になる。彼女はドレスをまといネイサンの部屋から出てくるが、待っていたケイレブをそのまま部屋に閉じ込め一人だけで施設から脱出する。そしてエヴァはケイレブを迎えに来たヘリコプターに乗り込んで去ってしまう。残されたケイレブは部屋から脱出しようと試みるが、扉は頑丈で壊れず、力尽きる。

エヴァは憧れていた街の雑踏に紛れ、人間社会に溶け込んでいった。

キャスト

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エヴァ(AVA)
演 - アリシア・ヴィキャンデル、日本語吹替 - うえだ星子
ガイノイド。表情や会話の自然さはそれまでのAIをはるかに凌駕している。走ることも出来るが、人間と比べて極端に力が強いわけではない。ボディーの大部分は透明で内部構造が見える姿をしているが、人工皮膚を貼り付けることができる。なお、吹き替えや字幕では名前の表音、カナ表記が旧約聖書の「エヴァ」(Eva)と同じになっているが、実際の発音は英表記「AVA」の通り「エイヴァ」である。
ケイレブ・スミス
演 - ドーナル・グリーソン、日本語吹替 - 野島裕史
検索エンジン最大手企業「ブルーブック」のプログラマ。15歳の時に車の衝突事故で両親を失い、1年間入院、その頃よりプログラミングを始めた。
ネイサン・ベイトマン
演 - オスカー・アイザック、日本語吹替 - 坂詰貴之
13歳でブルーブックの基本理論を作った、天才プログラマで同社の社長。広大な私有地内の秘密施設で研究開発を進めている。ブルーブックに入力される検索ワードや、世界中の携帯電話・コンピュータを無断で傍受して収集したデータを元にAIの思考ロジックを開発する。
キョウコ
演 - ソノヤ・ミズノ[4]
ネイサンの研究施設で働くハウスメイド。一切言葉を発しないが、料理やダンスが得意。ネイサンはケイレブに対して「機密保持のために英語を解さない人材という条件で雇った人間」と説明していた。

製作

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撮影は2013年の夏から、パインウッド・スタジオで4週間、ノルウェーのホテルで2週間行われた[5]。全編ソニー製の4KデジタルビデオカメラF65で撮影された[6]。パインウッドスタジオでの撮影では、蛍光灯の代わりに15,000個のタングステン豆電球を用いることで独特の作風を生み出すことにつながった[7]。日本公開版のみ陰毛を隠すためのボカシが加えられた。

本作品は1500万ドルの低予算で製作された。後述の通り、後に2016年の第88回アカデミー賞において視覚効果賞を受賞しているが、1000万ドル台の低予算で視覚効果賞を受賞した作品は2024年時点で本作品並びに本作品と同程度(1500万ドル)の費用で製作され、2024年の第96回アカデミー賞で受賞した日本映画ゴジラ-1.0』のみとなっている[8][9]

影響

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本作はウィリアム・シェイクスピアの『テンペスト』から影響を受けている[10]。また、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』の現代版とも評されている[11]。童話の『青ひげ』からの影響も指摘されている[12]

評価

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タイム誌は、本作を「2015年の映画トップ10」の第10位に挙げている[13]

受賞

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映画賞 対象 結果
2015 第41回ロサンゼルス映画批評家協会賞[14] 助演女優賞 アリシア・ヴィキャンデル 受賞
第18回英国インディペンデント映画賞[15] 作品賞 エクス・マキナ 受賞
監督賞 アレックス・ガーランド 受賞
脚本賞 受賞
技術賞 エクス・マキナ 視覚効果 受賞
エクス・マキナ 美術 ノミネート
第19回オンライン映画批評家協会賞[16] 助演男優賞 オスカー・アイザック 受賞
作品賞 エクス・マキナ ノミネート
オリジナル脚本賞 アレックス・ガーランド ノミネート
第19回トロント映画批評家協会賞[17] 助演女優賞 アリシア・ヴィキャンデル 受賞
新人賞 アレックス・ガーランド 受賞
2016 第50回全米映画批評家協会賞[18] 助演女優賞 アリシア・ヴィキャンデル 2位
第73回ゴールデングローブ賞[19] 助演女優賞 アリシア・ヴィキャンデル ノミネート
第68回アメリカ監督組合賞[20] 新人監督賞 アレックス・ガーランド 受賞
第11回ファイナル・ドラフト・アワード[21] オリジナル脚本賞 アレックス・ガーランド 受賞
第27回アメリカ製作者組合賞[22] 映画部門 ノミネート
第88回アカデミー賞[23][24] 視覚効果賞 受賞
脚本賞 アレックス・ガーランド ノミネート
MTVムービー・アワード 2016 [25] 最優女優賞 アリシア・ヴィキャンデル ノミネート
第42回サターン賞[26] SF映画賞 ノミネート
監督賞 アレックス・ガーランド ノミネート
脚本賞 ノミネート
主演男優賞 ドーナル・グリーソン ノミネート
助演女優賞 アリシア・ヴィキャンデル ノミネート
特殊効果賞 ノミネート

脚注

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出典

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  1. ^ December 2014 at BFI Southbank”. BFI Southbank. 2023年5月2日閲覧。
  2. ^ Ex Machina’s Alex Garland and Oscar Isaac Discuss Artificial Intelligence - Consequence of Sound”. Consequence of Sound. 2015年9月8日閲覧。
  3. ^ Ex Machina (2015)”. Box Office Mojo. 2015年9月8日閲覧。
  4. ^ “映画『エクス・マキナ』日系女優ソノヤ・ミズノ インタビュー映像”. MOVIE Collection. (2016年11月11日). https://www.youtube.com/watch?v=ppXHYku_L0w 
  5. ^ Alex Garland on Building Ex Machina‘s Perfect Woman - The Credits”. The Credits. 2015年6月2日閲覧。
  6. ^ Definition Magazine - Def Mag - Ex-Machina, the DIT Story”. definitionmagazine.com. 2015年6月2日閲覧。
  7. ^ Intelligent Artifice: Alex Garland’s Smart, Stylish Ex Machina”. MovieMaker Magazine. 2015年6月2日閲覧。
  8. ^ 秦野邦彦 (2024年3月8日). “【アカデミー賞直前予想】『君たちはどう生きるか』はアメリカで勢いあり! 日本作品3作の可能性は? 最大のライバルは?”. 週刊文春. p. 3. 2024年3月16日閲覧。
  9. ^ 「ゴジラ」アカデミー賞受賞 勝因は「コスパ」への称賛 製作費膨らむハリウッド式への冷ややかな視線が結果に”. デイリースポーツ (2024年3月12日). 2024年3月16日閲覧。
  10. ^ Kelly, Alan (2022年9月7日). “From 'The Matrix' to 'Ex Machina': Best Sci-Fi Movies About AI” (英語). Collider. 2022年12月20日閲覧。
  11. ^ Wellisz, Oleńka (2022年5月5日). “‘Ex Machina’ Ending Explained: What Was Happening With Ava?” (英語). Collider. 2022年12月20日閲覧。
  12. ^ Gothic film : an Edinburgh companion. Richard J. Hand, Jay McRoy. Edinburgh. (2020). ISBN 978-1-4744-4805-5. OCLC 1147874671. https://www.worldcat.org/oclc/1147874671 
  13. ^ 米タイム誌が選ぶ2015年の映画トップ10”. 映画.com (2016年1月2日). 2016年1月6日閲覧。
  14. ^ LA批評家協会賞は「マッドマックス」が最多3冠 作品賞は「スポットライト」”. 映画.com (2015年12月7日). 2015年12月8日閲覧。
  15. ^ 最多受賞は『エクス・マキナ』英国インディペンデント映画賞発表”. シネマトゥデイ (2015年12月10日). 2015年12月10日閲覧。
  16. ^ オンライン映画批評家協会賞は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が4冠”. 映画.com (2015年12月15日). 2015年12月16日閲覧。
  17. ^ The Toronto Film Critics Association names Todd Haynes’ Carol the Best Film of the Year”. TFCA (2015年12月14日). 2015年12月17日閲覧。
  18. ^ Awards for 2015 films by NSFC on January 3, 2016”. 全米映画批評家協会 (2016年1月3日). 2016年1月6日閲覧。
  19. ^ ゴールデングローブ賞「キャロル」が最多ノミネート、坂本龍一は作曲賞候補に”. 映画ナタリー (2015年12月11日). 2015年12月11日閲覧。
  20. ^ 米監督組合賞に「レヴェナント」イニャリトゥ監督 「バードマン」に続き2年連続”. 映画.com (2016年2月8日). 2016年2月8日閲覧。
  21. ^ 『エクス・マキナ』『オデッセイ』が受賞 優秀な脚本を称えるファイナル・ドラフト・アワード発表”. シネマトゥデイ (2016年2月16日). 2016年2月17日閲覧。
  22. ^ 米製作者組合賞ノミネート発表”. 映画.com (2016年1月6日). 2016年1月8日閲覧。
  23. ^ アカデミー賞ノミネーション発表、「レヴェナント」12部門、「マッドマックス」10部門”. 映画ナタリー (2016年1月15日). 2016年1月15日閲覧。
  24. ^ 88th ANNUAL ACADEMY AWARDS 第88回アカデミー賞特集 ノミネート&結果一覧”. シネマトゥデイ. 2016年2月29日閲覧。
  25. ^ スター・ウォーズ/フォースの覚醒』最多11部門!MTVムービーアワードノミネーション発表”. シネマトゥデイ (2016年3月14日). 2016年3月14日閲覧。
  26. ^ サターン賞最多ノミネートは「スター・ウォーズ フォースの覚醒」”. 映画.com (2016年2月26日). 2016年5月24日閲覧。

外部リンク

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