アセメタシン[1](Acemetacin)は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)で、変形性関節症関節リウマチ腰痛、術後の疼痛緩和などの治療に用いられる。

アセメタシン
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
販売名 Emflex, many others
Drugs.com 国別販売名(英語)
International Drug Names
法的規制
薬物動態データ
生物学的利用能~100%
血漿タンパク結合80–90%
代謝Hydrolysis, glucuronidation
半減期4.5±2.8 (up to 16) hrs
排泄40% renal, 50% biliary
データベースID
CAS番号
53164-05-9 ×
ATCコード M01AB11 (WHO)
PubChem CID: 1981
ChemSpider 1904 チェック
UNII 5V141XK28X チェック
KEGG D01582  チェック
ChEBI CHEBI:31162 ×
ChEMBL CHEMBL189171 チェック
化学的データ
化学式C21H18ClNO6
分子量415.83 g·mol−1
物理的データ
融点150 - 153 °C (302 - 307 °F)
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効能・効果

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  • 下記疾患並びに症状の消炎・鎮痛
肩関節周囲炎、腰痛症、頸肩腕症候群、変形性関節症、関節リウマチ
  • 手術後及び外傷後の消炎・鎮痛
  • 下記疾患の解熱・鎮痛
急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)

リウマチ性炎症のほか、手術後や外傷後の痛み、痛風の発作などにも効果があるとされている[2][3]。なお、術後の疼痛に対する単回投与については、十分な裏付けが得られていない[4]

禁忌

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下記の患者に禁忌である[5]

  • 消化性潰瘍のある患者[注 1]
  1. ^ NSAID長期投与による消化性潰瘍の場合で更なる投与が必要な場合は、慎重投与
  • 重篤な血液の異常のある患者
  • 重篤な肝障害のある患者
  • 重篤な腎障害のある患者
  • 重篤な心機能不全のある患者
  • 重篤な高血圧症の患者
  • 重篤な膵炎の患者
  • 製薬成分、インドメタシンまたはサリチル酸系化合物(アスピリンなど)に過敏症の患者
  • アスピリン喘息(NSAIDなどによる喘息発作の誘発)またはその既往歴のある患者
  • 妊婦または妊娠している可能性のある婦人
  • トリアムテレンを投与中の患者

禁忌は基本的に他のNSAIDsと同様で、過去のNSAIDに対する過敏反応(典型的には喘息や皮膚反応)、胃腸の出血、消化性潰瘍造血器系疾患(貧血白血球減少)、妊娠第3期などが挙げられる[2][6]

副作用

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重大な副作用は[5]

  • ショック(0.1%未満)、アナフィラキシー様症状
  • 消化管穿孔、消化管出血、消化管潰瘍、出血性大腸炎
  • 無顆粒球症
  • 急性腎不全

さらに活性代謝物(インドメタシン)の重大な副作用は、

  • 腸管の狭窄・閉塞、潰瘍性大腸炎
  • 再生不良性貧血、溶血性貧血、骨髄抑制
  • 皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症、剥脱性皮膚炎
  • 喘息発作(アスピリン喘息)
  • 間質性腎炎、ネフローゼ症候群
  • 痙攣、昏睡、錯乱
  • 性器出血
  • 鬱血性心不全、肺水腫
  • 血管浮腫
  • 肝機能障害、黄疸

である。

一般的な副作用(患者の約1-10%)としては、吐き気、下痢、胃痛、消化性潰瘍などのNSAIDに典型的な胃腸障害、頭痛や眩暈などの中枢神経障害、皮膚反応などがある。消化管の忍容性は、関連薬であるインドメタシンよりも優れている。また、重篤なアレルギー反応や造血器障害の発現率は0.01%未満である[2][3]

相互作用

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NSAIDの典型的な相互作用として以下のようなものが報告されている[2][3]

作用機序

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シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害薬として作用し、抗炎症作用鎮痛作用を発揮する。体内では一部がインドメタシンに代謝され、同じくCOX阻害薬として作用する。同じ機構によって解熱作用抗血小板作用も発揮されるが、これらは臨床的には使用されておらず、また典型的なNSAIDの副作用でもある[2][3]

インドメタシンと比較して胃障害が軽減されることが利点である。これはロイコトリエンB4の合成や腫瘍壊死因子(TNF)の発現を増加させる作用が弱く、その結果、白血球-内皮接着の誘導が少ないためと考えられる[7][8]

薬物動態

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アセメタシンの代謝:グリコール酸エステルの切断(緑)によりインドメタシンに活性化され、メチルエーテルや4-クロロ安息香酸の切断(オレンジ)で不活性化される。

腸から迅速かつほぼ完全に吸収される。最高血中濃度には2時間後に到達する。血漿タンパク質との結合率は80-90%である。滑液滑膜、筋肉、骨における濃度は血中より高くなる[2]

投与後には活性代謝物であるインドメタシンとは別に、インドメタシンとアセメタシンのO-デスメチル誘導体、デス-4-クロロ安息香酸誘導体、O-デスメチル-デス-4-クロロ安息香酸誘導体、およびこれらの物質のグルクロニド(酵素UGT2B7英語版が少なくとも部分的に関与している[9])など、多くの不活性代謝物が検出される。定常状態での排泄半減期は4.5±2.8時間(一部のヒトでは16時間)。40%が尿中に、50%が糞中に排出される[2][3]

化学的特徴

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インドメタシンのグリコール酸エステルである。僅かに黄色がかった微細な結晶性の粉末であり、150-153℃で融解する。多形であり、4種類の無水結晶形と2種類の一水和物結晶形が知られている[3]

参考資料

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  1. ^ KEGG DRUG: アセメタシン”. www.kegg.jp. 2021年9月12日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g (German) Austria-Codex. Vienna: Österreichischer Apothekerverlag. (2015) 
  3. ^ a b c d e f (German) Arzneistoff-Profile. 1 (18 ed.). Eschborn, Germany: Govi Pharmazeutischer Verlag. (2003). ISBN 978-3-7741-9846-3 
  4. ^ “Single dose oral acemetacin for acute postoperative pain in adults”. The Cochrane Database of Systematic Reviews (3): CD007589. (July 2009). doi:10.1002/14651858.CD007589.pub2. PMC 4170991. PMID 19588437. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4170991/. 
  5. ^ a b ランツジールコーワ錠30mg 添付文書”. www.info.pmda.go.jp. 2021年9月12日閲覧。
  6. ^ UK Drug Information on Emflex.
  7. ^ “Mechanisms underlying the anti-inflammatory activity and gastric safety of acemetacin”. British Journal of Pharmacology 152 (6): 930–8. (November 2007). doi:10.1038/sj.bjp.0707451. PMC 2078220. PMID 17876306. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2078220/. 
  8. ^ “Lack of effects of acemetacin on signalling pathways for leukocyte adherence may explain its gastrointestinal safety”. British Journal of Pharmacology 155 (6): 857–64. (November 2008). doi:10.1038/bjp.2008.316. PMC 2597236. PMID 18695646. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2597236/. 
  9. ^ Acemetacin”. MediQ.ch. 16 September 2016閲覧。