担保
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
担保(たんぽ)とは、借金や融資を受ける際に、その支払いを保証するための対象。またその仕組み。支払いを保証するための対象を何にするかで、人的担保と物的担保に分かれる。 債務の支払い(返済)が困難になった際は、担保を債権者に引き渡し、または強制執行手続により差押え・換価・競売を行うことによって債務の履行に代えるようになっている。この際、担保を受けた債権者は他の債権者に優先して弁済を受けられる(優先弁済という)。
不動産や株式(株券)を担保にした場合、これらの値段は変動しているため、値下がりが発生すると債務を完全に弁済できない場合がある。このように担保が十分に弁済能力を持たなくなっている状態を担保割れと呼ぶ。バブル経済崩壊による不動産価格の下落で担保割れとなった不動産担保が多くなり、貸し出した銀行など金融機関の不良債権増加の大きな原因になっている。
用字法
主に法令において、「公平性を担保する」などのように「担保」の語を動詞化して用いる事例がみられる(「保証する」「確保する」などの意味で用いていると推察される)。また「保証人」という意味で用いる事例もあるが、『大辞林』(三省堂)によると、これらは明治時代から用いられるようになった新しい用字法である。
人的担保と物的担保
誤解を承知で換言すると、「返せなければこれを売り払って良いです」と物を差し出すのが物的担保で、「返せなければこの人が代りに払います」と人を差し出すのが人的担保である。保証人などが債務者に代わって支払いを行う場合があるが、この場合は、保証人も担保の一種といえる。
- 物的担保 債権回収の確実化の為に、物または物権が担保として提供されているもの
- 人的担保 債権回収の確実化の為に「債務者以外の人が、支払う又は履行する」という契約が担保とされているもの
担保の性質
担保は、主債務の履行を確実化する為に存在するので附従性、随伴性、不可分性、物上代位性のような性質が挙げられる。 各性質の内容については担保物権の項目を参照。すべての担保にこれらのすべての性質があるわけではなく、いずれかの性質を持たないものや、緩和されているものもあるので注意が必要である。
- 物的担保の性質 附従性○ 随伴性○ 不可分性○ 物上代位性○
- 人的担保の性質 附従性○ 随伴性○ 不可分性△ 物上代位性×
附従性の緩和
特に附従性においては、厳格に適応すると、債権債務の関係が日々流転している企業間取引においても、債権の発生毎に担保権の設定を要する事になり、費用と時間の多大なる浪費となる。その為、取引迅速の観点から附従性が緩和され、債権額と債権の範囲を特定すれば、絶えず発生、変更、消滅を繰り返す債権群にも担保を立てられる事となった。この附従性が緩和された担保が根質、根抵当、根保証等である。しかし、附従性を緩和すると過大な権利を債権者に与える事になり濫用の危険がある。そのため、附従性が緩和されたこれらの担保は、その成立に厳格な要件が課せられている。
随伴性の緩和
また、随伴性も厳格適用をすると企業間の取引迅速に資さない結果となる為、担保を、債権と分かち担保のみを売買したり、他の債権や債務の担保に提供したりする事(転抵当、転質)も認められている。但し、保証債権(保証債務)を、本来の被担保債権と分かって譲渡したり、他債務の担保にしたりするいわゆる「転保証」は、物的担保の場合と異なり、特約ない限り許されない。担保として供されているものが、債権または人であり、尚且つ、主債務者と保証人の間の保証委託契約は双方の信頼関係を基礎として成立しているものである事が多いからである。
種類
担保の内容は多岐だが、よく知られているものを挙げると、以下のようになる。:以下は更に細分化された種類について記載したが、日本では法律上認められていないものもあるので留意が必要。また、債務引受は性質上は担保とは言えないが、実務的には担保として使われる事が多いのであえて列挙した。建物や土地の権利などの不動産担保や株式(株券)などの債権担保は物的担保の一例である。
人的担保と物的担保の関係
人的担保は物的担保に比べて、債権回収の確実化の度合いが低いが、物的担保に比べ成立が容易である為、比較的低額な市井での金融に多く用いられる手法である。それに対し、物的担保の中でも不動産や財団を対象にした担保物権は、債権回収を確実化する力が強いが、成立に費用と手間が掛かるので、不動産の購入や企業間の取引などの高額な契約に対して使われる事が多い。また、物的担保の中で財団でない動産を対象にした担保は、債権担保を除き今日ではあまり担保として機能していないのが実情のようである。
用語
- 担保責任