削除された内容 追加された内容
大野内 (会話 | 投稿記録)
大野内 (会話 | 投稿記録)
117行目:
蒸気機関車の出力を決める第一の要因は「火室でどれだけ大きな熱エネルギーを発生できるか」であり、その指標として火室の平面積を表す'''火格子面積'''が使われる。火格子面積は狭軌が一般的であった日本の場合、明治初期のころの機関車で1[[平方メートル|m<sup>2</sup>]]以下、それ以降順次増大し[[国鉄D51形蒸気機関車|D51形]]で3.27m<sup>2</sup>まで大きくなった<ref>D51形に先立ち1925年にアメリカから輸入された単式3シリンダー機の[[国鉄8200形蒸気機関車|8200形]](C52形)では手焚きのままで火格子面積を3.8m<sup>2</sup>としたが、これは当時の日本人の一般的な体格・体力では投炭を担当する機関助士に過大な負担を強いたため、後の改造で火格子面積を縮小している。</ref>が、火室への燃料供給は人力([[シャベル]])による投炭であった。さらに大型(日本最大)で戦時の貨物増大に対応して製作された[[国鉄D52形蒸気機関車|D52形]]では火格子面積は3.85m<sup>2</sup>となったが、これは1人で人力投炭を行うには限界に近い負担を強いたため、第二次世界大戦後、同形式のボイラーを流用して製作された[[国鉄C62形蒸気機関車|C62形]]などと共に、蒸気エンジンで駆動される自動給炭装置(ストーカー)が装備された。ちなみに[[標準軌]]を採用した[[南満州鉄道]]で[[特別急行列車|特急列車]][[あじあ号]]を牽引したパシナ型機関車の火格子面積は6.25m<sup>2</sup>で、ストーカーが標準搭載されていた。また、日本と同じく狭軌を標準としていた南アフリカでは当時黒人労働者を低賃金で利用できたことから、彼らを投炭手として複数乗務させ、同時投炭させることでストーカーを装備せずに火床面積を日本の機関車よりも大きくとるケースが存在した。
 
機関車の火室には、左右の台枠間に設置したいわゆる'''狭火室'''タイプと、より大型の機関車に設置される台枠の幅([[軌間]])より大きな'''広火室'''タイプのものがある。[[D52]]等、一部の形式では煙管の手前に燃焼室を備える。
 
石炭が燃える際の炎は、石炭の成分が分解・[[蒸発]]しながら空気中の[[酸素]]と反応しているため、燃焼ガスの温度は石炭自体から少し離れたところで最高となる。このため火室内には燃焼ガスの流れを迂回させて、距離を稼いで最高温度の燃焼ガスをボイラーに導くための邪魔板 (煉瓦アーチ)<!--(左の写真の赤く塗られた斜めに設置された板)-->がある。火室の前後左右と上部は水で囲まれており、ここもボイラーの一部となっている。また同様の目的で煙管の手前に燃焼室を設ける例もある。
 
なお、火床面積は燃料の品質さえ良質で少量でも十分な火力が得られるならば無理に拡大する必要はない。強力機ではそのボイラー容量に見合った火力を得るため巨大な火室を備えるケースが多いが、高カロリーの良質な燃料を常用できる環境にあった鉄道、例えばイギリスのグレート・ウェスタン鉄道(GWR)の機関車では、[[グレート・ウェスタン鉄道4073型蒸気機関車|4073型]](キャッスル型あるいはカースル型とも。軸配置2C、過熱式単式4気筒、狭火室。火格子面積2.73m<sup>2</sup>)のように、狭火室のままで他社が保有していた同クラスの機関車を上回る高性能を発揮する例<ref>1925年に[[ロンドン・アンド・ノース・イースタン鉄道]] (LNER) との間で同社最新の[[LNERクラスA1/A3蒸気機関車|クラスA1]](軸配置2C1、過熱式単式3気筒、広火室。火格子面積3.83m<sup>2</sup>)とを交換し、互いの鉄道線において同条件下で実施された比較試験では、キャッスル型の方がコンパクトでボイラーの火格子面積もクラスA1の約70パーセント強しかなかったにもかかわらず、使用炭の品質が本来想定されるより低下するLNER社線上においてさえ、出力・燃費の双方で勝利を収めている。これは弁装置設計などでGWR側に一日の長があったことによる部分が大きいが、この例が示すように狭火室と広火室の違いは必ずしも性能に決定的な差をもたらすとは限らない。</ref>が少なからず存在した<ref>例えば、ドイツでは良質な石炭の入手が容易であった[[プロイセン]]をはじめとする北部の各邦国が保有する鉄道は狭火室を常用し、良質炭の入手が難しかった南部の[[バーデン大公国]][[バイエルン王国]]などが保有した各鉄道は広火室を早い時期から導入していた。また、アメリカで広火室積極導入の端緒の一つとなったウーテン式火室を備える[[キャメルバック式蒸気機関車]]は廉価だが着火しにくい[[無煙炭]]を燃料とすることを前提に研究開発されており、通常の石炭以外の異種燃料を燃やす手段として通常より大きめの火室を備えた機関車を製作するケースはアメリカ製機関車を中心に各国で見られた。</ref>。広火室は、総じて低品質の燃料でより大きな出力を得る手段として利用されていたのである。<!--火室はたくさんのボルトで頑丈に車体に固定されている。--><!-- ← ボイラーは熱膨張の問題があるので、火室部で台枠と強固に結合するのは御法度のはずですが?-->
 
=== ボイラー ===