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'''ユーザビリティ'''({{lang-en|usability}})は、「使いやすさ」を示す言葉。[[国際規格]]の[[ISO 9241-11]]では、「ある製品を、特定の利用者が、特定の目的を達成しようとするにあたって、特定の状況で、いかに効果的に、効率的に、満足できるように使えるかの度合い」<ref>{{Cite web|和書|title=ユーザビリティ とは 意味/解説/説明 【usability】 {{!}} Web担当者Forum |url=https://webtan.impress.co.jp/g/%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%82%B6%E3%83%93%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3 |website=webtan.impress.co.jp |date=2009-05-13 |access-date=2023-01-25 |language=ja |first=安田英久(Web担 |last=編集統括)}}</ref>。
{{参照方法|date=2013年1月}}
'''ユーザビリティ''' ({{lang-en|''usability''}}) とは、使いやすさとか使い勝手といった意味合いで使われることが多い。しかし、その語義は多様であり、関連学会においても合意された定義はまだ確立されていない。
 
他にも「使い勝手が良い」「[[可用性]]」「[[有用性]]」などの意味がある<ref>{{Cite web|和書|title=ユーザビリティが重要な理由とは?主な定義とUI・UXとの違い |url=https://hnavi.co.jp/knowledge/blog/usability/ |website=システム開発のプロが発注成功を手助けする【発注ラウンジ】 |access-date=2023-01-25 |language=ja}}</ref>。
[[国際標準化機構]]によるISO 9241-11は、「特定の利用状況において、特定のユーザによって、ある製品が、指定された目標を達成するために用いられる際の、有効さ、効率、ユーザの満足度の度合い」と定義している。
 
ユーザが目標を達成するためにシステムを利用するとする。例えば紙を切るためにハサミを利用する。このハサミは切れ味が良く、気持ちよく短時間で紙が切れた。すなわち高い満足感で高いパフォーマンス<ref>"パフォーマンス,すなわち,効果及び効率" JIS Z 8521:2020</ref>を発揮し目標を達成できた。この「つかえる」「有用である」という特性をユーザビリティという。もしハサミの切れ味が悪く、時間をかけてなんとか切り終えたとすると、前者に比べてユーザビリティは低いといえる。
 
==定義==
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===ISO 9241-11===
[[ユーザビリティ#ISO 9241-11 2|ISO 9241-11]]:2018に基づくJIS Z 8521:2020では次のように定義される<ref>ISO 9241-11:2018の定義: "extent to which a system, product or service can be used by specified users to achieve specified goals with effectiveness, efficiency and satisfaction in a specified context of use"</ref>。
[[1998年]]の[[ISO]] 9241-11での定義。
 
* '''{{Quotation|ユーザビリティ''' ({{lang|en|usability}}): (usability)<br>特定のユーザが特定の利用状況において、特定のユ,システム,製品又はサビスを利用する際,効果,効率及び満足を伴って、ある製品が、指された目標を達成するために用度合られる際の、有効さ、効率、。|JIS|Z8521:2020}}ユーザビリティを定義づける要素は次満足度の度合いように定義される
* 目標 ({{Lang-en-short|goal}}): 意図した成果
** '''有効さ''' ({{lang|en|effectiveness}}): ユーザが指定された目標を達成する上での正確さ、完全性。
** '''率''' ({{lang|Lang-en-short|efficiencyeffectiveness}}): ユーザが特定の目標を達成する際に、正確さと性及び完全性に費やした資源。
* 効率 ({{Lang-en-short|efficiency}}): 達成された結果に関連して費やした資源
** '''満足度''' ({{lang|en|satisfaction}}): 製品を使用する際の、不快感のなさ、および肯定的な態度。
* 満足度 ({{Lang-en-short|satisfaction}}): システム,製品又はサービスの利用に起因するユーザのニーズ及び期待が満たされている程度に関するユーザの身体的,認知的及び感情的な受け止め方
** '''利用状況''' ({{lang|en|context of use}}): ユーザ、仕事、装置(ハードウェア、ソフトウェア及び資材)、並びに製品が使用される物理的及び社会的環境。
ユーザビリティは利用の成果({{Lang-en-short|outcome of use}})を構成する一要素である<ref>"この規格は,− ユーザビリティが利用の成果であることを説明し" [[ユーザビリティ#ISO 9241-11 2|ISO 9241-11]]:2018</ref>。すなわちシステムの[[品質]]ではなく、ある文脈の中であるユーザがシステムを利用する際に得られる成果が持つ特性の1つである。利用の成果に含まれる他の特性には[[アクセシビリティ]]・危害の回避などが挙げられる<ref>{{Cite journal|和書|author=小林大二 |date=2021-05 |url=https://doi.org/10.5100/jje.57.s10-1 |title=JIS Z 8521:2020 ユーザビリティの定義及び概念 : 改訂のポイント |journal=人間工学 |ISSN=0549-4974 |publisher=日本人間工学会 |volume=57 |issue=Supplement |pages=S10-1 |doi=10.5100/jje.57.s10-1 |id={{CRID|1390569612379092480}}
}}</ref>。
 
===ニールセン===
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ニールセンの定義するユーザビリティは、ISO 9241-11の定義よりも意味が若干限定的になっている。
 
ニールセンの定義では、ユーザが望む機能を[[システム]]が十分満たしているかどうか、といった事柄はユーティリティ(実用性)に含まれる内容である。それと区別してユーザビリティは、その機能をユーザがどれくらい便利に使えるかという意味であり、ユーティリティは区別してとらえされている。これに対して
一方、ISO 13407では、ニールセンがユーティリティと定義した内容も、ユーザビリティに含んでいる。つまりニールセンが定義するユーザビリティは、ISO 13407が定義するユーザビリティに内包される形となる。
 
ほかにISO 9126はソフトウェアの品質に関する規格で、理解性、修得性、操作性を挙げている。
 
==訳語==
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; 利用品質
: 利用品質は「{{lang|en|quality in use}}」または「{{lang|en|quality of use}}」の訳であり、英語においても「{{lang|en|usability}}」とほぼ等価な意味合いで用いられている。ただ、この用語が使われるのは、品質 ({{lang|en|quality}}) という観点で議論を行う文脈である場合が多く、品質保証や品質管理などに近い分野で使われることが多い。
; ユーザーテスト
: ユーザテストは、製品テスト、設計テスト、ユーザビリティテスト、設計検証など多くの名前で知られている。実際のシナリオで実際のユーザーとデザインをテストする非常に重要なプロセスであり、ユーザーの懸念やユーザビリティの問題を深く理解すれば、その問題を解決することができるとされる<ref>[https://www.toptal.com/designers/ux-consultants/how-to-conduct-usability-testing-in-6-steps Toptal - How to Conduct Usability Testing in Six Steps]</ref>。
 
==背景==
 
=== テスラー ===
コンピュータ科学者[[ラリー・テスラー]]は、「カット」「コピー」「ペースト」のコマンドを発明、初のGUIワープロ[[Gypsy (ソフトウェア)|Gypsy]]を開発したことで知られている。1974年ころ[[パロアルト研究所|PARC]]で現代でいうユーザビリティに関する研究開発に携わっていた時、modeless, user-friendly, [[WYSIWYG]]という言葉を使っており<ref>{{Cite news |title=Larry Tesler, inventor of copy-and-paste computer functions, dies at 74 |url=https://www.washingtonpost.com/local/obituaries/larry-tesler-inventor-of-copy-and-paste-computer-functions-dies-at-74/2020/02/20/e5699f6e-541c-11ea-9e47-59804be1dcfb_story.html |work=Washington Post |date=2020-02-22 |access-date=2024-09-04 |issn=0190-8286 |language=en-US |first=Matt |last=Schudel}}</ref>、ユーザフレンドリーデザインの父と呼ばれている<ref>{{Cite web |url=https://www.fastcompany.com/90466328/a-tribute-to-larry-tesler-the-father-of-user-friendly-design |title=A tribute to Larry Tesler, the father of user-friendly design |access-date=2024-09-03}}</ref>。
 
===シャッケル===
人間工学の大家であったブライアン・シャッケル({{lang|en|Brian Shackel}})は、1991年の著作『{{lang|en|Human Factors for Informatics Usability}}』の中で、ユーティリティ(utility、必要な機能があるか)とユーザビリティ(usability、ユーザがうまく使えるか)とライカビリティ({{lang|en|likeability}} ユーザが適切だと感じられるか)という三つの側面の総和と、コスト(初期コストと運用コスト)とのバランスを考慮し、前者の比率が高いものほどアクセプタビリティ(バランスがとれており、購入するに最適である)が高いといえる、という構図を提案している。
 
この考え方は、以後のユーザビリティ概念(たとえばニールセン、ISO9241-11)に影響を及ぼしたと考えられる。
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ウェブ・ユーザビリティの権威であるニールセンは、ユーザビリティに関して最初に出版された概論書『ユーザビリティエンジニアリング原論』 (1994) において、ユーザビリティの概念を、彼の考えた階層的概念構造の中に位置づけて示した。
 
それによると、ユーザビリティは学習しやすさ ({{lang|en|learnability}})、効率 ({{lang|en|efficiency}})、記憶しやすさ ({{lang|en|memorability}})、エラー ({{lang|en|errors}})、満足 ({{lang|en|satisfaction}}) といった品質要素から構成される概念として示されている。この定義はいちおう人間工学、認知工学、感性工学的な側面を考慮したものになっているが、かならずしも網羅的、かつ相互排他的になっておらず、概念定義としては十分なものではない。また、それぞれの品質要素は、学習のしやすさや効率などの諸側面において問題がないようにと考えられており、いわばマイナスでない特性の集合となっている。
 
いいかえれば、ニールセンにおけるユーザビリティは、そのような問題点のないことを意味しており、マイナスの側面を0レベルまで向上させるという意味合いを持っている。彼がヒューリスティック評価という手法を提唱したのは、ユーザビリティテスト ({{lang|en|usability test}}、{{lang|en|usability testing}}) による評価が全盛の時代であり、それはいいかえれば評価がユーザビリティ活動の中心となっていた時代でもあった。
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ニールセンは、ユーザビリティと対比させてユーティリティ ({{lang|en|utility}}) という概念を位置づけている。これは機能や性能のように製品やシステムのポジティブな側面である。いいかえれば、0レベルからプラスの方向に製品の魅力を増してゆくものである。このように、彼の定義ではユーザビリティにはプラスの方向性は含まれておらず、その意味で、小さなユーザビリティ ({{lang|en|small usability}}) と呼ばれることもある。
 
ニールセンは、ユーザビリティとユーティリティを合わせた概念としてニールセンはユースフルネス ({{lang|en|usefulness}}) という上位概念を位置づけているが、これは後述するISO9241-11のユーザビリティ定義に近いものであり、大きなユーザビリティ ({{lang|en|big usability}}) と呼ばれる概念に近い。
 
===ISO===
こうした状況の中、ユーザビリティという概念にきちんとした定義を与えたのがISO規格であり、現在はこの定義が一般的に用いられている。ISOの規格におけるユーザビリティの定義にはISO 9126系のものとISO 9241-11系のものがある。
 
====ISO 9126====
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====ISO 9241-11====
'''ISO 9241-11'''は[[国際標準化機構]]が制定するユーザビリティ定義に関する規格である。
1998年に成立したISO 9241-11は、JIS Z8521として1999年にJIS化されているが、ここではユーザビリティに関するかなり厳密な定義が行われている。すなわち、ユーザビリティとは「ある製品が、指定された利用者によって、指定された利用の状況下で、指定された目標を達成するために用いられる際の有効さ、効率及び満足度の度合い」として定義されている。さらに有効さ ({{lang|en|effectiveness}}) については「ユーザが、指定された目標を達成する上での正確さと完全さ」、効率 ({{lang|en|efficiency}}) については「ユーザが、目標を達成する際に正確さと完全さに費やした資源」、満足度 ({{lang|en|satisfaction}}) については「不快さのないこと、及び製品使用に対しての肯定的な態度」という定義が与えられている。有効さと効率という二つの概念は、相互排他性が明確であり、またこの規格以前にも、品質を表現する際にしばしば用いられているため了解性が高いといえる。なお、満足度については、部分的に有効さと効率に従属する側面を持っている。つまり、有効であり効率的であれば、それによって満足感がもたらされるからである。ただし、より感性的な、たとえば審美的な側面などは満足度固有の側面であり、その点では他の二つの概念から独立したものといえる。
 
規格番号は'''9241-11'''、名称は「'''Ergonomics of human-system interaction — Part 11: Usability: Definitions and concepts'''」である。ISO 9241シリーズ "Ergonomics of human-system interaction" の1つ。対応する[[日本産業規格]]は「[https://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISNumberNameSearchList?show&jisStdNo=Z8521 JIS Z 8521 人間工学-人とシステムとのインタラクション-ユーザビリティの定義及び概念]」である。
 
{| class="wikitable"
|+表. ISO 9241-11改訂歴
!名称
!発行年
!対応JIS
|-
|[https://www.iso.org/standard/63500.html ISO 9241-11:2018]
[https://www.iso.org/standard/63500.html Ergonomics of human-system interaction — Part 11: Usability: Definitions and concepts]
|2018-03
|JIS Z 8521:2020
|-
|[https://www.iso.org/standard/16883.html ISO 9241-11:1998]
[https://www.iso.org/standard/16883.html Ergonomic requirements for office work with visual display terminals (VDTs) — Part 11: Guidance on usability]
|1998-03
|JIS Z 8521:1999
|}
 
この規格が定義する「効果」と「効率」は相互排他的である一方、満足は部分的に効果と効率に従属する(効果的で効率的だと満足度が高い)。同時に感性的な側面(例: 審美性)は満足固有であり、効果・効率から独立している。
 
ISO 9241-11のユーザビリティ規格による定義はNielsenの定義と比較してポジティブな側面を含んだ幅広いものになっており、その意味で大きなユーザビリティ ({{lang|en|big usability}}) と呼ばれることもある。このISO9241-11のユーザビリティの定義は、その後、ISO 13407やISO 20282、CIF (ISO 25062)などの各種の規格においても用いられることになり、ユーザビリティに関する現在の標準的定義であるといえる。ただ、有効さと効率が相互排他的な概念であるのに対し、満足度はそれらに従属する側面もあり、また価格やデザインなどユーザビリティ以外の要因によっても影響されるため、[[黒須正明]]は、ユーザビリティの下位概念を有効さと効率の二つに限定している。
 
満足は効果・効率に部分的に従属し、また価格やデザインなどユーザビリティ以外の要因によっても影響されるため、ユーザビリティの下位概念に満足を含めない立場もある<ref>[[黒須正明]]</ref>。
 
== 測定・評価 ==
(ISO 9241-11の文脈では)ユーザビリティそのものには測定尺度が存在せず、測定できない。効果・効率・満足を測定して総合的に<ref>"効果,効率又は満足の構成要素の中の一つの測定尺度が,ユーザビリティの全容を十分に表すことはできない。" JIS Z 8521:2020</ref>ユーザビリティを評価する。ユーザビリティは文脈・ユーザ・タスクなどで大きく変化するため、3要素の寄与率も条件ごとに異なる。ゆえに3要素の測定値をユーザビリティへ変換する統一的な手法は存在せず<ref>"ユーザビリティの各構成要素の重要性は,利用状況及びユーザビリティを考慮する目的によって変わるため,測定尺度の選択及び組合せ方法に関する一般的な規則はない。" JIS Z 8521:2020</ref>、文脈・ユーザ・タスク等を考慮した上で都度総合的に評価される<ref>"各測定尺度の目標への相対的な重要性を考慮することが重要になる。" JIS Z 8521:2020</ref>。
 
測定尺度は客観的結果に基づくものと主観的結果に基づくものがある。タスク所要時間の実測値と体感値、タスク完了信号とユーザの「終わった」という認識/思い込み<ref>"客観的には,ユーザがタスクを完遂できていない状態でも,ユーザが正しく終了して次の行動の必要がないと思い込んでいる場合" JIS Z 8521:2020</ref>、が例として挙げられる。
 
測定対象は効果・効率・満足であり、さまざまな測定尺度がある。システムの実利用を伴う測定は、ユーザの実使用を観察・計測する[[ユーザビリティテスト|'''ユーザーテスト''']]、ユーザ行動・心理を深く理解した専門家による'''専門家評価'''(エキスパートレビュー)に大別される。例えば客観的満足を対象としたユーザーテストでは行動観察に基づくシステムの再利用頻度が測定尺度として有用である<ref>"満足の客観的測定は,行動観察に基づく(例えば,システムの再利用)" JIS Z 8521:2020</ref>。
 
=== 利用・目的 ===
ユーザビリティはユーザによるシステム利用へ影響を与え<ref>"システム,製品又はサービスを設計する場合,− ユーザビリティが予想より低い場合,対象ユーザはシステム,製品又はサービスを利用できない,若しくは利用したがらない可能性がある。" JIS Z 8521:2020</ref>、ユーザへの便益を左右し<ref>"システム,製品又はサービスを設計する場合,… − ユーザビリティが十分な場合には,システム,製品又はサービスは,私的,社会的及び経済的利益をユーザ,雇用者及び供給者に提供する。" JIS Z 8521:2020</ref>、提供者の優位性を与える<ref>"システム,製品又はサービスを設計する場合,… − ユーザビリティが期待より高い場合には,システム,製品又はサービスには競争的な優位性がある" JIS Z 8521:2020</ref>ため、ユーザビリティを測定・評価することには価値がある。そのため利用促進・価値向上・市場拡大等を目的としてユーサビリティ測定はおこなわれる。
 
同じ特性に対する客観的・主観的測定尺度は比較して利用される。例えば客観的に低く評価された効果/effectivenessを主観的に高く評価していた場合、2つの場合がある。1つは低い効果でも本人は充分だと感じている場合であり、もう1つは本人が完全だと誤解している場合である。前者であればシステムが過剰な効果を持つことを示唆しており、後者であればユーザが効果を誤認しやすい構造があることを示唆している。前者はコスト削減に、後者はユーザへの便益改善・誤認が判明した際の失望の防止に利用できる<ref>"客観的には,... 完遂できていない状態 ... 思い込んでいる場合にも,ユーザビリティ上の問題がある。" JIS Z 8521:2020</ref>。
 
== デザイン ==
ユーザビリティを設計するプロセスとして人間中心設計がある。これは[[ISO 9241-210]]にて規格化されている。
 
== 美的ユーザビリティ効果 ==
{{仮リンク|美的ユーザビリティ効果|en|Aesthetic–usability_effect}}({{lang-en-short|aesthetic–usability effect}})は[[美学|審美性]]がユーザビリティを向上させる現象である。
 
ユーザビリティはそれを感じるタイミングによって以下の2種類に分類される。
 
* '''見かけのユーザビリティ'''({{lang-en-short|apparent usability}}): システムを見て感じるユーザビリティ、「使いやすそうさ」<ref>"見かけのユーザビリティ(apparent usability) ... つまり使いやすそうに見えるインタフェース" [[黒須正明|黒須]]. (2022). ''[https://u-site.jp/lecture/apparent-usability 見かけのユーザビリティの研究について]''. U-site. 2022-11-10閲覧.</ref>
* '''実質的ユーザビリティ'''({{lang-en-short|inherent usability}}): システム利用を経て得るユーザビリティ、「使いやすいさ」<ref>"実質的ユーザビリティ(inherent usability) ... 実際に使ってみて使いやすいインタフェース" [[黒須正明|黒須]]. (2022). ''[https://u-site.jp/lecture/apparent-usability 見かけのユーザビリティの研究について]''. U-site. 2022-11-10閲覧.</ref>
 
美しさと使いやすさ([[美学|審美性]]とユーザビリティ)は一見すると独立した概念である。しかし心理実験の結果<ref name="Kurosu etal">{{Cite book |author1=[[黒須正明|Kurosu, Masaaki]] |author2=Kashimura, Kaori |year=1995 |title=Apparent Usability vs. Inherent Usability: Experimental Analysis on the Determinants of the Apparent Usability |isbn=0897917553 |publisher=Association for Computing Machinery |url=https://doi.org/10.1145/223355.223680 |doi=10.1145/223355.223680 |book=Conference Companion on Human Factors in Computing Systems |pages=292-293 |number=2 |location=Denver, Colorado, USA |series=CHI '95}}</ref>、美しいものは使いやすそうと感じられるうえに「使いやすそうさ」と「使いやすいさ」が無相関であることが明らかになった<ref name="Kurosu etal"/>。つまり実際の使いやすさに関わらず、人は美しいものを使いやすそうと感じる(思い込む)心理特性があることが明らかになった。これが美的ユーザビリティ効果である。バラバラのレイアウトよりグリット状に並んでいるほうが(実際にグリットが使いやすいとは限らないのに)「何となく使いやすそう」と感じられるのはこの効果による。
 
この効果は様々な事柄を示唆する。「たとえ使いやすくても、美しくないとそれが伝わらない」「使いやすそうでも、それは着飾っているだけで使いづらいかもしれない」「着飾れば、使いやすそうと誤認させて売り込めるかもしれない」「使いやすそうなだけのUIデザインは詐欺的である<ref>"使いやすそうに見えるインタフェースを設計するのはフェイクにも近いことですよ、ということだ。" [[黒須正明|黒須]]. (2022). ''[https://u-site.jp/lecture/apparent-usability 見かけのユーザビリティの研究について]''. U-site. 2022-11-10閲覧.</ref>」。
 
美的ユーザビリティ効果は[[ユーザーエクスペリエンス#%E4%BA%88%E6%9C%9F%E3%81%A8%E5%AE%9F%E4%BD%93%E9%A8%93|予期的UX]]や[[ユーザーエクスペリエンス#%E6%9C%9F%E9%96%93|一時的UX]]に似た、本格使用の前に発生するユーザビリティである。ゆえにWebページのような一回性のシステムでは美的ユーザビリティ効果が前面に出やすい<ref>"無償サイトの場合には ... 少しインタラクションをしただけで簡単に他のサイトに移動してしまう ... 積み重ねという形でのユーザーエクスペリエンスが成立しにくい ... 無償サイトのユーザーエクスペリエンスは期待感と印象によって構成される傾向がある ... 見かけのユーザビリティ(apparent usability)... という点で、ユーザーの選択に影響している" 黒須. [https://webtan.impress.co.jp/e/2010/10/01/8935 ''Webサイトのユーザビリティでは第一印象と長期的実利用のどちらが重要か/HCD-Net通信 #23'']. impress. 2022-11-10閲覧.</ref>。一方アプリのような継続利用前提のサービスでは、ユーザーは実際の利用を繰り返す中で実質的ユーザビリティに基づいて(総)ユーザビリティの評価を更新していくため、美的ユーザビリティ効果の影響は相対的に逓減すると考えられる。ぱっと見スタイリッシュで使いやすいそうな家計簿アプリが実際に使い込むと操作数が多くて使いづらい、といったケースはこの例である。
ISO 9241-11のユーザビリティの定義はNielsenの定義と比較してポジティブな側面を含んだ幅広いものになっており、その意味で大きなユーザビリティ ({{lang|en|big usability}}) と呼ばれることもある。このISO9241-11のユーザビリティの定義は、その後、ISO 13407やISO 20282、CIF (ISO 25062)などの各種の規格においても用いられることになり、ユーザビリティに関する現在の標準的定義であるといえる。ただ、有効さと効率が相互排他的な概念であるのに対し、満足度はそれらに従属する側面もあり、また価格やデザインなどユーザビリティ以外の要因によっても影響されるため、[[黒須正明]]は、ユーザビリティの下位概念を有効さと効率の二つに限定している。
 
==出典==
[[人間工学]]や[[ユーザーインターフェイス|ユーザ・インタフェイス]]の分野では、ユーザビリティの定義に様々な解釈がある。例えば、ユーザビリティに関するプロセスを定めた国際規格として、[[1999年]]6月に、[[国際標準化機構]]により制定された[[ISO 13407]]がある。ユーザにとっての利用品質の確保と向上を目指す設計プロセスを確立することを基本的な目的に、[[インタラクティブ・システム]]の[[人間中心設計]]プロセスを規格化したものであり、設計プロセスそのものを人間中心にすることで、ユーザビリティの向上を図るものである。また、ISO 13407に関連した規格として、[[ISO 9241-11]]がある。これは、ユーザビリティの定義と、ユーザビリティをユーザの行動と満足度を尺度に規定または評価する場合に考慮しなければならない情報の認識方法を説明した国際規格であり、ISO 13407はこの定義を用いて制定されている。なお、ISO 13407は2009年現在改訂中であり、番号がISO 9241-210と変更されることになっている。
{{Reflist}}
 
==参考文献==
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== 関連項目 ==
* [[ユーザーエクスペリエンス]](UX)
* [[アクセシビリティー]]
* [[インタラクションデザイン]]
* [[ユーザビリティテスト]]
* [[システムユーザビリティスケール]]
* [[ヒューリスティック評価]]
 
==外部リンク==
*[http://www.usability.gr.jp/index.html U-Site] {{ja icon}} ユーザビリティの第一人者ヤコブ・ニールセンによる記事、「ニールセン博士のAlertbox」の翻訳記事が掲載される。ほかユーザビリティに関する記事が掲載されている。
 
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:ゆさひりてい}}
[[Category:ユーザビリティ| *]]
[[Category:人間工学]]
[[Category:ユーザインタフェース]]