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Kyosu-tanni (会話 | 投稿記録)
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{{Expand English|date=2024年6月}}
'''無理数'''(むりすう、 {{lang-en-short|''irrational number''}})とは、[[有理数]]ではない[[実数]]、つまり分子・分母ともに[[整数]]である[[分数]]([[比]] = {{lang-en-short|''ratio''}})([[分数]]として表すことのできない実数を指すのことである。実数は[[可算集合|非可算個]]で有理数は[[可算集合|可算]]個であるから、無理数は非可算個あり、[[ほとんど (数学)#ほとんど全ての|ほとんど全ての]]実数は無理数である。
 
無理数という語は、何かが無理である数」という意味に誤解さ受け取やすいため、語義的に「無比数」と訳すべきだったという意見もある<ref>堀場芳数『無理数の不思議』[[講談社]]、1993年 ISBN 978-4061329782</ref><ref>吉田武『[[レオンハルト・オイラー|オイラー]]の贈物 人類の至宝[[オイラーの等式|e<{{sup>|i&pi#x3C0;</sup>}}=-1]]を学ぶ』[[学校法人東海大学出版会|東海大学出版会]]、2010年 ISBN 978-4486018636</ref><ref>吉田武『[[虚数]]の情緒 中学生からの全方位独学法』東海大学出版会、2000年 ISBN 978-4486014850</ref>([[有理数#用語法についての由来]]も参照)。
[[Image画像:Square root of 2 triangle.svg|right|thumb|{{overlinemath|{{sqrt|2}}}} は無理数である。]]
 
== 無理数の例 ==
以下の実数は無理数である。
*[[2の平方数]]を除く[[平方根]]<math>\sqrt{2}</math>、<math>\sqrt{3}</math>など)
*一般に、[[整数]] {{mvar|N}} の [[冪根|{{mvar|m}} 乗根]] <math>\sqrt[m]{N}</math>(ただし、{{mvar|m}} は {{math|1}} より大きい整数、{{mvar|N}} は {{mvar|m}} 乗数でない整数)
*一般に、[[対数]] {{math|log{{sub|''m''}} ''n''}}(ただし、{{mathmath2|''m'', ''n''}} は {{math|1}} より大きい整数で、{{math2|1=''m'' = ''N{{sup|a}}'', ''n'' = ''N{{sup|b}}''}} を満たす整数 {{math2|''N'', ''a'', ''b''}} が存在しないとき
*[[対数]]のうち、*{{math|log{{sub|2}} 3}}, 並びに {{math|log{{sub|2}} 5}}
*一般に、{{math|log{{sub|''m''}} ''n''}}(ただし、{{math|''m'', ''n''}} は {{math|1}} より大きい整数で、{{math2|1=''m'' = ''N{{sup|a}}'', ''n'' = ''N{{sup|b}}''}} を満たす整数 {{math2|''N'', ''a'', ''b''}} が存在しないとき)
*[[三角関数]]の零でない有理数 {{mvar|x}} における値{{sfn|Niven|2005|page={{google books quote|id=ov-IlIEo47cC|page=21|21}}}} {{math|cos ''x''}}, {{math|sin ''x''}}, {{math|tan ''x''}}, {{math|csc ''x''}}, {{math|sec ''x''}}, {{math|ctn ''x''}}
*[[円周率]] {{π}}
*[[ネイピア数]] {{mvar|e}}
*[[ゲルフォントの定数]] ''e''{{sup|{{π}}}}
*[[アペリーの定数]] {{math|''ζ''(3)}}
*小数部分が循環しない[[無限小数]]で表される数。例えば[[十進法]]における
{{main|[[#歴史]]}}
:**[[チャンパーノウン定数]] 0.123456789101112…([[小数]]部分に[[自然数]]を順に並べた小数)
 
:**[[コープランド-エルデシュ定数]] 0.2357111317192329…(小数部分に[[素数]]を順に並べた小数)
*小数部分が循環しない[[無限小数]]で表される数。
:例えば[[十進法]]における
:*[[チャンパーノウン定数]] 0.123456789101112…([[小数]]部分に[[自然数]]を順に並べた小数)
:*[[コープランド-エルデシュ定数]] 0.2357111317192329…(小数部分に[[素数]]を順に並べた小数)
 
== 無理数判定法 ==
任意の {{math|''ε'' > 0}} に対して不等式
:<math>0<\left| \alpha -\frac{p}{q} \right| <\frac{\varepsilon}{q}</math>
が有理数解 {{sfrac|''p''|''q''}} を持つとき、{{mvar|α}} は無理数である。多くの無理性の証明はこれを用いている。これは {{mvar|α}} が無理数であるための必要十分条件でもある。
 
== 性質 ==
無理数を十進[[小数]]で表記すると、繰り返しのない[[無限小数]]([[小数#非循環小数|非循環小数]])になる。これは[[位取り記数法|記数法の底]]によらず一般の ''N'' 進小数でも成り立つ。
 
''α'' を無理数とすると、
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を満たす無限に多くの有理数 {{sfrac|''p''|''q''}} が存在する([[ディリクレのディオファントス近似定理|ディリクレの定理]])。なお、このように無理数の有理数による近似を扱う理論は[[ディオファントス近似]]と呼ばれる[[数論]]の分野に属する。
 
無理数全体の空間を完備とするような距離が存在する。またA-演算が自然に応用できる例でもあり、の空間は点集合論的トポロジーでは重要な対象である。
 
== 代数的無理数と超越数 ==
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:<math>\left| \alpha -\frac{p}{q} \right| <\frac{1}{q^{\kappa}}</math>
を満たす有理数 {{sfrac|''p''|''q''}} は有限個しかない([[トゥエ・ジーゲル・ロスの定理|トゥエ-ジーゲル-ロスの定理]])<ref>{{Cite book|和書
|author = [[ピーター・フランクル]]
|year = 2001
|title = ピーターフランクルの中学生でも分かる大学生にも解けない数学問題集1
|publisher = 日本評論社
|pagespage = 10p10
|id = ISBN 4-535-78262-8}}</ref>。このことは[[不定方程式]]の解の有限性を示すときに使われる。
 
2の平方根は代数的無理数であり、log{{sub|2}} 3, ''e'', {{π}}, ''e''{{sup|{{π}}}} といった数は超越数である。''ζ''(3) が超越数であるか否かは未だに解決されていない。
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を満たす有理数 {{sfrac|''p''|''q''}} は有限個しかない、という性質を満たす ''κ'' の下限を ''α'' の'''無理数度''' ({{lang-en-short|''irrationality measure''}}) という。
 
有理数の無理数度は 1, ディリクレの定理およびロスの定理より代数的無理数の無理数度は 2, [[リウヴィル数]]の無理数度は ∞ である。ディリクレの定理より無理数の無理数度は全て 2 以上である。''e'' の無理数度は 2 であることが知られている。また、{{π}}の無理数度の上限は7.103程度であることがわかっている<ref>{{Citation |url= https://mathworld.wolfram.com/IrrationalityMeasure.html |title=Irrationality Measure }}</ref>
 
ルベーグ測度に関してほとんど全ての数の無理数度は 2 である。
 
== 歴史 ==
無理数の発見は[[古代ギリシア]]文明にまでさかのぼる。[[ピタゴラス教団]]一説で、無理を長さとして現れるもに限って議論し、すべて発見者は古代ギリシャは有理数で表されるとし学者これは教団の教義として信奉された。しかし[[ピタゴラスの定理]]からも示されるようにの弟子であった[[2の平方根ヒッパソス]]が無理数であるこも自明いう人物であったが、教義に反す。ヒッパソスは[[正方形]]の研究をしていため受け入れられずうち対角線の長さの比今日から見れば自ずから制約を課整数でも分数でも表られてたと見未知の数、すせる。わち無理数であることを発見を公言た[[ヒッパソス]]は、教団から追放され殺害されたとする伝説が残るいう
 
彼の師匠のピタゴラスは、宇宙の万物は数から成り立つこと、そして宇宙を構成する数は、調和した比を保っていると信じていた。ピタゴラスと教団は教義の反証である無理数が存在する事実に動揺し、不都合な事実を隠すため、発見者のヒッパソスを縛りあげ、船から海に突き落として殺害したという伝承が残っている。
しかし[[プラトン]]が現れると、彼の著書『テアイテトス』の中で平方数でない数の平方根が有理数でないことを論じ、さらに同じ論法が立方根にも適用できると述べている。これらの数学的な蓄積を受けて、[[エウクレイデス]]は『原論』の中で統一した形で実数論を展開している。
 
しかし[[プラトン]]が現れると、彼の著書『テアイテトス』の中で平方数でない数の平方根が有理数でないことを論じ、さらに同じ論法が立方根にも適用できると述べている。これらの数学的な蓄積を受けて、[[エウクレイデス]]は『原論』の中で統一した形で実数論を展開している。
 
円周が円の直径の3倍より少し大きいことは古来知られていた。古代インドやギリシアの数学者たちの間では半径 ''r'' の円の面積が[[円周率]] {{π}} を使って {{π}}''r''{{sup|2}} であることも知られ、[[アルキメデス]]は半径 ''r'' の球の体積が {{sfrac|4|3}}{{π}}''r''{{sup|3}} であることや、この球の表面積が 4{{π}}''r''{{sup|2}} (その球の大円の面積の4倍)であることを示していた。円周率 {{π}} が無理数であることはすでに[[アリストテレス]]によって予想されていたが、実際に証明されたのはそれよりはるかに後の時代のことである([[ヨハン・ハインリヒ・ランベルト]])。
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1872年に[[リヒャルト・デデキント]]は『連続性と無理数』を出版し、[[デデキント切断]]を用いて無理数を定義した。
 
[[リーマンゼータ関数]]の特殊値 ''ζ''(3) は、[[ロジェ・アペリー|アペリー]]によって1979年に無理数であることが証明された([[アペリーの定数]])。{{π}} + ''e''{{sup|{{π}}}} は、{{仮リンク|ユーリ・ヴァレンティノヴィチ・ネステレンコ ([[:|en:|Yuri Valentinovich Nesterenko]]) |label=ネステレンコ}}によって無理数であることが証明された。
 
== 未解決の問題 ==
[[オイラー定数]] (オイラー・マスケローニ定数){{mvar|1=''γ'', }}、{{π}} + math|1=''eπ'', +''e''}}、{{πmath|''eπ''}}, その他 {{math|1=''P'' (''e'', {{''π'')}}) の形であらわされる数ここで {{math|''P'' (''Xx'', ''Yy'')}} 、{{mvar|''Xx''}}, {{mvar|''Yy''}} 双方について次数が 1 以上である多項式を表す)はいずれも、有理数であるか無理数であるか知られていない。''e{{sup|e}}'', {{π}}{{sup|''e''}}, {{π}}{{sup|{{π}}}} といった数も同様である
 
また、{{math|1=''e''{{sup|''e''}}}}、{{math|1=''π''{{sup|''e''}}}}、{{math|1=''π''{{sup|''π''}}}}、といった数もやはり、有理数であるか無理数であるか知られていない。ただし、上記 [[#無理数の例]] に挙げたとおり、{{math|1=''e''{{sup|''π''}}}} は無理数であることが既に知られている。
 
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}
<references />
 
== 参考文献 ==
*塩川宇賢:『無理数と超越数』[[森北出版]]、ISBN 978-4627060913、(1999年)。
*[[リヒャルト・デデキント|デーデキント]]『数について 連続性と数の本質』河野伊三郎訳、[[岩波書店]]、 ISBN 4-00-339241-8、(1961年)。
*W. M. Schmidt, "Diophantine Approximations", Lecture Notes in Math. 785, Springer-Verlag, 1980.
*W. M. Schmidt, "Diophantine approximations and diophantine equations", Lecture Notes in Math. 1467. Springer-Verlag, 1991.
*R. Apéry, "Irrationalité de ζ(2) et ζ(3)", Astérisque 61(1979), 11-13.
*A. van der Poorten, "A Proof that Euler Missed... Apéry's Proof of the Irrationality of ζ(3)", Math. Intel. 1 (1979), 196-203.
*ジュリアン・ハヴィル, 松浦俊輔 ():):「無理数の話 √2の発見から超越数の謎まで」青土社、ISBN 978-4791766758、(2012年10月24日)。
*西岡久美子:「超越数とはなにか 代数方程式の解にならない数たちの話」講談社 (ブルーバックス)、ISBN)ISBN 978-4062579117、(20154062579117(2015年4月21日)。
*{{cite book|title=Irrational Numbers|author=I. Niven|author-link=イヴァン・ニーベン|year=2005|publisher=The Mathematical Association of America|isbn=0-88385-038-9|ref={{sfnref|Niven|2005}}}}
 
== 関連文献 ==
*高木貞治、1904「第九章  無理數」『新式算術講義』
 
== 関連項目 ==
101 ⟶ 105行目:
*[[アペリーの定理]]
*[[近似値]]
 
{{数の体系}}
 
== 外部リンク ==
110 ⟶ 112行目:
*{{MathWorld|title=Irrational Number|urlname=IrrationalNumber}}
 
{{数の体系}}
{{デフォルトソート:むりすう}}
{{Normdaten}}
{{デフォルトソートDEFAULTSORT:むりすう}}
[[Category:数]]
[[Category:実数]]