奇蹟を呼ぶのは、あなたのこころ。
山奥にある小さなココロ図書館で、司書として図書館をきりもりする三姉妹。ホンワカしている長女のいいな、行動的でしっかり者の次女のあると、そして司書になったばかりの三女のこころ。今は亡きお父さんが遺してくれた図書館を盛り立てていこうと張りきる中で、こころは色々な人と触れ合い、少しずつ成長していく。
仕事に疲れ、帰宅して観る深夜アニメには「癒し系」と分類できる一連の作品がある。その典型と言える本作は、『R.O.D.』『かみちゅ!』の升成孝二(ますなりこうじ)監督がそんな作風を究めた記念碑的作品だ。主人公こそメイド服の司書という萌え系のルックをしているものの、作風は叙情的で実にハートフル。事件未満の日常のささやかな出来事に揺れ動く主人公こころの行動と心理を、柔らかい音楽や美しい風景とともに追っていくうちに、画面から目がはなせなくなっていく。斎藤千和の鈴を転がしたような声質も優しいテイストと親和性が高い。これはどんな嫌なことがあっても、すべて洗い流してくれる心の栄養剤なのだ
【アニメ評論家 氷川竜介】
■キャスト
こころ:斎藤千和
あると:市原由美
いいな:沢城みゆき
上沢 純:三木眞一郎
岡嶋朱葉:金田朋子
原作:高木信孝
■スタッフ
脚本:黒田洋介(スタジオオルフェ)
キャラクターデザイン:橘 秀樹
プロップデザイン:常木志伸
美術監督:鹿野良行
音響監督:菊田浩巳
音楽ディレクター:井上裕香子
音楽:保刈久明
監督:舛成孝二
アニメーション制作:スタジオディーン
製作:フライングドッグ
こころの初仕事の日。姉たちに囲まれてやる気まんまんのこころだが、ココロ図書館にはいっこうに利用者がやってこない。がっかりするこころだが、スクーターでやって来たかえでと仲良くなり、かえでが読みたがっていた本を貸し出しできて大満足する。数日後、本の返却日にかえでがやってくるのを待つこころだが…。
ただでさえ来館者の少ないココロ図書館。その来館者がさらに減ってきていることに気づいたこころたちは、みんなで利用者を増やす方法を考えることにする。手作りのチラシを作って町で配ることにした三姉妹だったが、あるとの何気ない言葉を聞いたこころはショックを受けてしまい…。
こころのお気に入りは人気作家・ひめみやきりん先生の小説。長女のいいなと二人、きりん先生談義に盛り上がるこころを、なぜか一人冷静に見ている次女のあると。実は「ひめみやきりん」はあるとのペンネームだったのだ。ところが出版社の企画で、きりん先生と読者のこころが対談することに…。
夏休みということで海に旅行することになった三姉妹。しかし、いいなが借りた宿というのは「海の家図書館」。図書館をきりもりすることを条件に宿を借りたことをいいなから聞いたあるとはガッカリ。一方、こころは近くの別荘に来ている少女・みさとのところまで本を届けに行く。二人はすぐに友達になるが…。
ココロ図書館に怪盗ファニー・トータスの予告状が。いいなによれば、狙われているのは図書館の大切な蔵書「ジョルディの日記」だという。変装の名人・ファニー・トータスと怪盗逮捕に乗り出した梶原警部、そして警部率いる婦警軍団「カージーズ・エンジェル」の登場で、静かなココロ図書館は大騒動に…。
町で行われる「新人社員司書研修」に、一人で参加することになったこころ。ルームメイトになった珠音(じゅね)は、アンドロイドの司書だった。そのことにちょっとビックリしたこころだったが、すぐに二人は打ちとけあって仲良しになる。都会の図書館で、初めての実地試験を受けることになるこころたちだが…。
こころが研修に出かけてしまったココロ図書館。館長代理のいいなは愛する妹がいないため、すっかり魂の抜け殻状態で、遊びに来た朱葉にこころのコスプレをさせだす始末。途方にくれるあるとだが…。
ココロ図書館に実地研修として、井上ひかりという司書の女の子がやってきた。新しい仲間が加わり、先輩として張りきるこころだが、ひかりはココロ図書館のメンバーにちっとも心を開いてくれない。実は、ひかりのお母さんが病気で入院しているということがわかって…。
仲良しになったひかりとこころ。とはいえ、どこか冷めているひかりの態度は変わらず、ひめみやきりんの小説にシビアな批評をしてあるとを落胆させたり、集配に来た上沢に「あなたの恋は実らない」などと言い出す始末。途方にくれるいいなたちだが、そんな中ひかりのお母さんが手術を受けることになり…。
新しい女性市長さんは、美人でとても素敵な人。その市長さんが、ココロ図書館を訪問することになり、こころたちは歓迎の看板を作ったりお洒落をしたり大忙し。だが、現れた市長さんは、ココロ図書館への援助を打ちきると通告する…。
時は今から二十数年前。この国は戦火に覆われており、悲惨な戦闘が各地で繰り広げられていた。山あいの小さな街でも、人々は瓦礫の中で希望を失って毎日を過ごしていた。ある日、街に配備された小部隊にジョルディという新兵が着任する。街の人々の様子に失望するジョルディだが、一人の看護婦と知り合い…。
父ジョルディの日記を読んで、決心を固めたこころ。街に行って、市長と直談判しようというのだ。いいなの運転する車で、意気揚揚と出発する三姉妹だったが、肝心な時に車が故障してしまう。途方にくれる三人の前に颯爽と現れたのは上沢だったが…。
大雪に閉じ込められてしまったココロ図書館。三姉妹と遊びに来ていた朱葉は、助けを呼ぶこともできず時計部屋にありったけのストーブを集めて寒さをしのぐが…。