中国、景気テコ入れへ国債発行「大幅増」 国有銀の資本強化
10月12日、中国政府は国債発行を「大幅に増やす」と発表した。北京の建設現場で7月撮影(2024年 ロイター/Tingshu Wang)
Kevin Yao Joe Cash
[北京 12日 ロイター」 - 中国の藍仏安財政相は12日の記者会見で、国債発行を「大幅に増やす」と発表した。低所得者への補助金支給や不動産市場支援、国有銀行の資本補充に充て、低迷する経済成長の回復を後押しする。
新たな経済てこ入れ策の規模には言及しなかった。藍氏は、「中国にはまだ債務を発行する余地が十分ある」と述べた上で、景気の変動を抑制するカウンターシクリカル対策を今年さらに講じる予定だと述べた
藍氏は、政府が地方政府の債務問題の解決を支援すると述べた。地方政府には、特別債発行枠や未使用資金など、第4・四半期に2兆3000億元(3255億ドル)の支出余地があるとし、地方政府が不動産開発業者から未使用の土地を買い戻すことが可能になると説明した。
<矢継ぎ早の施策発表>
中国は、不動産市場の急速な冷え込みと消費者信頼感の低迷により強いデフレ圧力に直面、世界の貿易環境が緊迫する中で、輸出への過度の依存によるきしみもでている。
ここ数カ月は各種経済指標が予想を下回り、エコノミストや投資家の間では、今年の政府の約5%の成長目標が達成されない可能性や、長期的な構造的減速が起こる恐れへの懸念が高まっていた。
そんな中、中国人民銀行が9月下旬、預金準備率や住宅ローン金利の引き下げなど、不動産部門支援に向けた一連の措置を公表した。
数日後、中国共産党の意思決定機関、中央政治局が月例会合で経済の逆風に対する危機感を示し、経済運営上、新たな問題が生じていると認めた。ロイターは、中国が新たな経済刺激策の一環として今年約2兆元(2844億3000万ドル)相当の特別国債を発行する計画だと報道。ブルームバーグは、経済を下支えするため、中国が主に新たな国債の発行を通じて大手国有銀行に最大1兆元の資本注入を検討していると報じた。
中国が打ち出す景気刺激策に世界の金融市場が注目し、中国株式市場も上昇した。
<なお見えない具体像>
しかし藍財政相の会見では、特別国債の発行規模など具体的な内容は示されなかった。国債の追加発行は全国人民代表大会(全人代)の承認を必要とする。全人代常務委員会は数週間内に開催される可能性がある。
OCBC(シンガポール)の投資戦略マネジングディレクター、バス・メノン氏は、会見について「強い決意が示されたが、数字的な具体性に欠ける」と指摘。株式市場の上昇維持に向けた超大型財政刺激措置への期待は空振りとなった格好で市場の一部で失望が広がる可能性があると述べた。
多くのアナリストは、脆弱な消費、債務によるインフラ投資への過度の依存など、根深い構造的問題に政府がしっかりと取り組む必要があると指摘している。
中国の景気対策としての財政支出の大半は依然として投資に回されているが、収益は減少しており、地方政府は13兆ドルの負債を抱えている。
藍財政相は会見で、さらなる改革が「段階を踏んで」発表されると述べた。
上海安放私募基金管理のクレジットリサーチディレクターのHuang Xuefeng氏は、需要喚起や投資拡大につながる施策を取らなければデフレ圧力を緩和するのは困難だと述べた。